生命保険の増額・減額とは? 必要保障額に合わせて見直す考え方

若いころに入った生命保険が、今の家計にも合っているとは限らない。加入した当時は十分だった保障が、子どもの誕生や住宅ローンで足りなくなることもあれば、子どもの独立後には大きすぎる保障になっていることもある。

生命保険は、一度契約したら一生そのまま続けるものと思われがちだ。しかし実際には、家族構成、収入、住まい、教育費、老後資金の見通しによって、必要な保障額は変わっていく。そこで見直し方法の一つになるのが、保険金額を増やす「増額」と、保険金額を減らす「減額」である。

この記事では、生命保険の増額・減額とは何か、どのような場面で考えるのか、保険料や特約との関係を整理する。保険会社や商品、契約内容によって扱いは異なるため、個別の判断では契約内容の確認が欠かせない。

目次

増額と減額では何を変えるのか

生命保険の増額とは、現在契約している保険の保障額を増やすことだ。たとえば死亡保険金が1,000万円の契約を、必要に応じて1,500万円や2,000万円に増やすような見直しがこれにあたる。

一方、減額とは、現在契約している保険の保障額を減らすことだ。死亡保険金が3,000万円の契約を2,000万円や1,000万円に減らすようなイメージである。

増額は、家族を守るための保障を厚くしたいときに検討される。減額は、必要な保障が小さくなったときや、保険料負担を下げたいときに検討される。どちらも、保険を単に大きくしたり小さくしたりする作業ではない。今の生活に対して、保障と保険料のバランスが合っているかを見直すための方法である。

生命保険の目的は「大きな保険に入ること」ではなく、「必要な保障を、無理のない保険料で持つこと」にある。保障が少なすぎれば、万一のときに家族の生活を支えきれない可能性がある。反対に、保障が大きすぎれば、毎月の保険料が家計を圧迫し、貯蓄や資産形成に回すお金が減ることもある。

必要な保障額はなぜ変わるのか

生命保険を見直すときに中心になるのが、必要保障額という考え方だ。これは、万一のことがあった場合に、残された家族が生活していくために必要となる金額の目安である。

必要保障額は、単純に「多ければ多いほど安心」と考えるものではない。家族構成、収入、貯蓄、住宅ローン、教育費、公的年金などを合わせて考える必要がある。独身の時期と、配偶者や子どもがいる時期では、必要な保障額は大きく異なる。子どもが小さい時期と、すでに独立した後でも、必要な保障額は変わる。

生命保険は長期契約になりやすい。そのため、加入した時点では合っていた保障額でも、10年後、20年後には過大になったり、不足したりする場合がある。生命保険は「加入したら終わり」ではなく、ライフプランの変化に合わせて確認するものだと考えたい。

保障を増やした方がよい場面はいつか

生命保険の増額を考える代表的な場面は、家族に対する経済的責任が大きくなるときである。わかりやすい例は、子どもが生まれたときだ。

子どもが小さいうちは、日々の生活費だけでなく、将来の教育費も考える必要がある。万一のことがあった場合に、配偶者や子どもが生活を続けられるか、進学に必要なお金を確保できるかを考えると、保障を増やす必要が出てくる場合がある。

住宅ローンを組んだときも、保障を見直すタイミングになりやすい。住宅ローンには、契約者に万一のことがあった場合にローン残高が返済される団体信用生命保険が付いていることが多い。ただし、ローンの種類や契約条件によって扱いは異なる。住まいに関する負担がすべてなくなるとは限らず、生活費、教育費、固定資産税、住宅の維持費などは残るため、生命保険全体でどの程度の保障が必要かを確認する必要がある。

教育費が増える時期も重要だ。子どもの進学に伴い、学費、仕送り、塾代などの負担が大きくなることがある。この時期に家計を支える人に万一のことがあると、家族の生活設計に影響が出る可能性がある。家族を支える責任が重くなる時期には、保障を増やすことが選択肢になる。

増額や特約追加では何に注意するのか

保障を増やす場合、一般的には保険料も上がる。保険金額を増やすということは、保険会社が将来支払う可能性のある金額が大きくなるということだ。そのため、契約者が支払う保険料も高くなるのが基本である。

既存の契約に特約を追加する場合も、追加分の保険料が必要になることがある。死亡保障に医療特約や入院特約を加える、三大疾病に備える特約を付けるといった場合がある。

ここで注意したいのは、増額や特約追加が、現在の年齢や健康状態をもとに判断される場合があることだ。若いころに加入した保険に後から保障を追加する場合、その追加部分については、追加時点の年齢で保険料が計算されることがある。年齢が上がってから同じような保障を追加すれば、若いころに持つ場合よりも保険料が高くなる可能性がある。

また、健康状態によっては、増額や特約追加が認められない場合もある。契約内容や保険会社によって扱いは異なるため、保障を増やす場合は、必要性だけでなく、保険料負担や手続き上の条件も含めて考える必要がある。

保障を減らすことを考える場面はいつか

生命保険は、必要に応じて保障を減らすこともできる。減額は、必要保障額が小さくなったときや、保険料負担を下げたいときに検討される見直し方法である。

代表的な場面は、子どもが独立したときだ。子どもが社会人になり、自分で生活できるようになると、親が生命保険で大きな教育費や生活費を準備する必要性は小さくなる。

住宅ローン返済が進んだときも、必要保障額が下がる場合がある。ローン残高が減っていれば、万一のときに家族が抱える住居関連のリスクも小さくなることがある。

老後に近づいた時期も、生命保険を見直すタイミングである。現役時代と比べて、家族を経済的に支える責任が小さくなっている場合には、大きな死亡保障を持ち続ける必要があるかを確認する意味がある。もちろん、葬儀費用、配偶者の生活費、相続対策などの目的で一定の保障を残すことはある。ただし、若いころと同じ大きな保障を続ける必要があるかは、別に考える必要がある。

減額は保険料負担を下げる手段になる

減額の大きなメリットは、保険料負担を下げられる可能性があることだ。保険金額を減らすと、保険会社が負う保障額も小さくなるため、保険料が下がる場合がある。

毎月の保険料負担が重くなっているとき、保障をすべて解約するのではなく、必要な範囲に減らして続けるという選択肢がある。生命保険を解約すると、保障そのものがなくなる。一方で、減額であれば、保障を一部残しながら保険料を軽くできる場合がある。

たとえば死亡保険金3,000万円の契約をそのまま続けるのが負担になっている場合、1,500万円に減額することで、保障を残しつつ保険料を下げるという考え方がある。

ただし、減額すると、万一のときに受け取れる保険金額は少なくなる。商品や契約内容によっては、減額後の保障内容や解約返戻金の扱いにも影響する場合がある。単に保険料を下げる目的だけで判断するのではなく、今の必要保障額に合っているかを確認しながら決めることが大切だ。

若いころの保険をそのまま続ければ安心なのか

若いころに加入した生命保険を、そのまま長く続けている人は少なくない。加入当時は、その保障が生活に合っていたかもしれない。しかし、時間が経つと、家族構成、収入、住宅ローン、貯蓄、子どもの教育状況、老後資金の見通しは変わる。

子どもが小さい時期には大きな死亡保障が必要だったとしても、子どもが独立した後には、その保障額が過大になっている場合がある。反対に、独身時代に入った小さな保険のまま、結婚や出産後も見直していなければ、保障が不足している可能性もある。

生命保険は、「昔入ったから安心」でも「ずっと同じでよい」でもない。生活の変化に合わせて、必要な保障を確認し直すことが大切である。

見直すときは何を確認すればよいのか

生命保険の増額・減額を考えるときは、保険金額だけを見るのではなく、家計全体で確認したい。主な確認ポイントは次のとおりだ。

  • 現在の家族構成
  • 配偶者や子どもの生活費
  • 子どもの教育費の見通し
  • 住宅ローンの有無と残高
  • 団体信用生命保険の有無
  • 現在の貯蓄額
  • 公的年金や遺族年金の見込み
  • 毎月の保険料負担
  • 老後資金への影響
  • 今の保険が何を目的にしているか

生命保険を考えるときは、公的保障も含めて見ることが大切だ。会社員や公務員などの場合、遺族基礎年金や遺族厚生年金が関係することがある。ただし、受給できる制度や金額は家族構成、職業、加入状況によって異なる。これらをまったく考慮せずに民間保険だけで備えようとすると、保障が過大になる場合もある。

一方で、自営業者や扶養家族が多い世帯では、公的保障だけでは不足する場合もある。増額・減額は、保険だけで完結する判断ではない。家計とライフプラン全体の中で考える必要がある。

保険料と保障のどちらを優先すべきか

生命保険を見直すとき、保障を厚くすることだけが正解ではない。保険料を安くすることだけが正解でもない。大切なのは、保険料と保障のバランスである。

保険料を抑えすぎると、万一のときに必要な保障が不足する可能性がある。一方で、保障を大きくしすぎると、毎月の保険料が家計を圧迫し、貯蓄や資産形成に回すお金が減ってしまう場合がある。

長期的な家計を考えると、生命保険だけにお金をかけすぎるのも注意が必要だ。教育費、住宅費、老後資金、緊急予備資金など、家計にはほかにも準備すべきものがある。増額・減額は、保険だけの問題ではなく、家計全体の資金配分を考える見直しである。

生命保険は必要保障額に合わせて見直す

生命保険の増額とは、現在の保険金額を増やすことだ。子どもが生まれた、住宅ローンを組んだ、教育費の負担が増えたなど、家族を守る責任が大きくなる時期には、保障を増やすことを検討する場合がある。

減額とは、現在の保険金額を減らすことだ。子どもが独立した、住宅ローン返済が進んだ、老後に近づいたなど、必要保障額が小さくなった時期には、保険料負担を下げる手段として検討できる。

ただし、増額や特約追加では保険料が上がるのが一般的であり、追加部分は追加時の年齢で保険料が計算されることがある。減額では保険料負担を下げられる場合がある一方、受け取れる保険金額は少なくなる。

生命保険は、若いころに入った契約をそのまま続ければよいとは限らない。増やすべき保障は増やし、減らせる保障は減らす。そうした見直しは、保険料を安くするためだけの作業ではなく、必要な保障を無理なく持ち続けるための確認である。

(本稿は各種公開情報をもとに作成した。一部数値は記事掲載時点の情報である)

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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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