生命保険で受け取るお金は、死亡保険金だけではない。養老保険が満期を迎えたときや、貯蓄性のある保険を途中で解約したときにも、まとまったお金を受け取ることがある。
ここで迷いやすいのは、「払ってきた保険料が戻るだけなら税金は関係ないのではないか」という点だ。実際には、受け取る人や保険料を負担した人、保険の種類によって、所得税や贈与税が関係する場合がある。
特に満期保険金や解約返戻金は、死亡保険金とは税金の考え方が異なる。死亡をきっかけに支払われるお金ではないため、相続税を中心に考えるのではなく、所得税、贈与税、場合によっては源泉分離課税の対象になるかを確認する必要がある。
この記事では、満期保険金・解約返戻金にかかる税金を、一般読者向けに整理する。
まず何を確認すればよいのか
満期保険金や解約返戻金を受け取るとき、最初に見るべきなのは金額だけではない。大切なのは、誰が保険料を払って、誰がお金を受け取るのかである。
同じ満期保険金でも、自分で保険料を払って自分で受け取る場合と、夫が保険料を払って妻が受け取る場合では、税金の考え方が変わる。
さらに、一時払いの養老保険などでは、通常の一時所得ではなく、金融商品に近い扱いで課税される場合もある。つまり、確認すべき点は「いくら受け取るか」だけではなく、「誰が払ったか」「誰が受け取るか」「どの種類の保険か」なのだ。
満期保険金とはどんなお金なのか
満期保険金とは、保険期間が満了したときに、契約で定められた条件にしたがって受け取る保険金である。
代表的な例は養老保険だ。養老保険は、一定期間の保障と貯蓄性を兼ねた保険で、保険期間中に被保険者が亡くなった場合には死亡保険金が支払われる。一方、満期まで生存していた場合には、満期保険金が支払われる。
たとえば、30年満期の養老保険に加入していて、満期時に契約で定められた金額を受け取る場合、そのお金が満期保険金にあたる。
満期保険金は、保険期間が終わったことによって受け取るお金である。人が亡くなったことを理由に支払われる死亡保険金とは、税金の出発点が違う。
解約返戻金はなぜ税金と関係するのか
解約返戻金とは、生命保険を途中で解約したときに、契約内容や経過期間に応じて戻ってくるお金である。
終身保険、養老保険、個人年金保険など、貯蓄性のある保険では、一定期間契約を続けた後に解約すると、解約返戻金が発生することがある。一方、掛け捨て型の定期保険などでは、解約返戻金がない、またはあっても少額である場合がある。
解約返戻金は、それまでに支払った保険料の一部が戻ってくるように見えるため、税金とは無関係に感じられるかもしれない。
しかし、受け取った解約返戻金が、これまでに払い込んだ保険料を上回る場合には、その利益部分に税金が関係することがある。保険を解約しただけで終わりではなく、税金上は「利益が出ているか」を見る場面がある。
死亡保険金とはどこが違うのか
満期保険金や解約返戻金を考えるときは、死亡保険金と分けて整理すると分かりやすい。
死亡保険金は、被保険者が亡くなったことをきっかけに支払われる。そのため、契約者、被保険者、受取人の関係によって、相続税、所得税、贈与税のいずれかに分かれる。
一方、満期保険金や解約返戻金は、死亡をきっかけに支払われるものではない。満期保険金は保険期間の満了、解約返戻金は保険契約の解約によって支払われる。
| 受け取るお金 | きっかけ | 主な税金の考え方 |
|---|---|---|
| 死亡保険金 | 被保険者の死亡 | 相続税・所得税・贈与税 |
| 満期保険金 | 保険期間の満了 | 所得税または贈与税 |
| 解約返戻金 | 保険契約の解約 | 所得税または贈与税 |
この記事では、死亡保険金には深入りせず、満期保険金と解約返戻金に絞って見ていく。
自分で払って自分で受け取るならどうなるのか
保険料を負担していた人と、満期保険金や解約返戻金を受け取る人が同じ場合には、所得税の対象になりやすい。
たとえば、夫が自分で保険料を払い、満期になって夫自身が満期保険金を受け取るケースである。
| 契約の例 | 内容 |
|---|---|
| 保険料を払った人 | 夫 |
| 受取人 | 夫 |
| 税金 | 所得税 |
この場合、夫は自分で保険料を支払い、自分で満期保険金を受け取っている。そのため、受け取ったお金のうち利益にあたる部分は、夫自身の所得として考える。
解約返戻金についても同じだ。自分で保険料を支払っていた保険を解約し、自分で解約返戻金を受け取る場合には、所得税の対象として整理する。
払った人と受け取る人が違うと何が起きるのか
保険料を負担していた人と、満期保険金や解約返戻金を受け取る人が違う場合には、贈与税の対象になる場合がある。
たとえば、夫が保険料を支払っていた養老保険について、満期保険金の受取人が妻になっているケースである。
| 契約の例 | 内容 |
|---|---|
| 保険料を払った人 | 夫 |
| 受取人 | 妻 |
| 税金 | 贈与税 |
この場合、夫が負担した保険料によって、妻が満期保険金を受け取る形になる。税金上は、夫から妻へ財産が移ったものと考えられる場合がある。
解約返戻金でも、保険料を負担していた人とは別の人が受け取る場合には、贈与税が関係することがある。
ここで大切なのは、名義だけで判断しないことだ。生命保険の税金では、実際に誰が保険料を負担していたかが重要になる。
所得税になる場合はいくらが課税対象になるのか
保険料を負担していた人と受取人が同じで、所得税の対象になる場合、満期保険金や解約返戻金は、多くの場合、一時所得として扱われる。
一時所得とは、給与のように継続的に得る所得ではなく、一時的に発生する所得のことだ。満期保険金や解約返戻金では、受け取った金額そのものではなく、これまでに払い込んだ保険料を差し引いた後の利益部分を中心に考える。
一時所得の基本的な計算式は次のとおりである。
一時所得 = 受け取った保険金・解約返戻金 − 払込保険料 − 50万円
ここでいう50万円は、一時所得の特別控除額である。
さらに、課税対象として他の所得と合算されるのは、原則として一時所得の2分の1である。
課税対象になる金額 = 一時所得 × 1/2
たとえば、満期保険金として300万円を受け取り、これまでに払い込んだ保険料が240万円だった場合を考える。
300万円 − 240万円 − 50万円 = 10万円
この場合、一時所得は10万円である。さらに、課税対象として他の所得と合算されるのは、その2分の1となる。
10万円 × 1/2 = 5万円
つまり、この例では5万円が、ほかの所得と合算される金額になる。
ただし、実際の税額は、給与所得など他の所得や所得控除の状況によって変わる。ここでは、受け取った金額全体にそのまま税金がかかるのではなく、払込保険料や特別控除を踏まえて考える、という基本を押さえておきたい。
一時所得ではなく源泉分離課税になることもあるのか
満期保険金や解約返戻金は、多くの場合、一時所得として扱われる。しかし、一定の一時払養老保険などについては、金融類似商品として扱われる場合がある。
金融類似商品とは、保険という形をとっていても、税務上は預貯金や金融商品に近い性格を持つものとして扱われる商品である。
この場合、通常の一時所得として総合課税されるのではなく、利子所得と同じように源泉分離課税の対象になる。
源泉分離課税とは、支払いを受ける時点で税金が差し引かれ、その課税関係が原則としてそこで完結する仕組みである。確定申告で他の所得と合算して計算する一時所得とは、扱いが違う。
5年以内の満期や解約では何に注意するのか
金融類似商品として源泉分離課税の対象になる代表的なケースは、一定の要件を満たす一時払養老保険等である。
たとえば、保険期間が5年以下の一時払養老保険や、保険期間が5年を超えていても5年以内に解約した一時払養老保険などが該当する場合がある。
主な要件を整理すると、次のようになる。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 保険期間 | 5年以下。または、保険期間が5年超でも5年以内に解約 |
| 払込方法 | 一時払い、またはそれに準じる方法 |
| 普通死亡保険金 | 満期保険金と同額以下 |
| 災害死亡保険金等 | 満期保険金の5倍未満 |
このような要件を満たす場合、満期保険金や解約返戻金は、一時所得ではなく、金融類似商品として源泉分離課税の対象になることがある。
源泉分離課税の税率は20.315%である。これは、満期保険金や解約返戻金の全額ではなく、原則として差益部分に対してかかる税率として考える。
| 税金 | 税率 |
|---|---|
| 所得税 | 15% |
| 復興特別所得税 | 0.315% |
| 住民税 | 5% |
| 合計 | 20.315% |
この場合、通常の一時所得のように、特別控除50万円や2分の1課税を使って計算するのではなく、金融商品に近い形で課税される点に注意したい。
一時払終身保険も同じ扱いになるのか
ここで誤解しやすいのが、一時払終身保険の扱いである。
一時払いの保険を5年以内に解約したからといって、すべてが金融類似商品として源泉分離課税になるわけではない。
たとえば、一時払終身保険を契約から5年以内に解約した場合でも、金融類似商品として扱われるとは限らず、原則として一時所得として総合課税の対象になる場合がある。
理由は、終身保険にはそもそも満期がないからだ。金融類似商品として扱われる一時払養老保険等では、満期保険金との関係や保険期間の長さなどが判断材料になる。一方、終身保険は一生涯の保障を目的とする保険であり、満期保険金がない。
| 保険の種類 | 5年以内の解約時の主な扱い |
|---|---|
| 一定の一時払養老保険等 | 金融類似商品として源泉分離課税になる場合がある |
| 一時払終身保険 | 一時所得として扱われる場合がある |
「一時払い」「5年以内」という条件だけで判断するのではなく、保険の種類が養老保険なのか、終身保険なのかを確認する必要がある。
受け取る前にどこを見ればよいのか
満期保険金や解約返戻金を受け取るときは、次の点を確認すると整理しやすい。
| 確認すること | ポイント |
|---|---|
| 受け取るお金の種類 | 満期保険金か、解約返戻金か |
| 誰が保険料を払ったか | 所得税・贈与税の判断に関係する |
| 誰が受け取るか | 保険料を負担した人と同じか、別人か |
| 保険料負担者=受取人か | 所得税になりやすい |
| 保険料負担者と受取人が違うか | 贈与税になりやすい |
| 一時払いかどうか | 金融類似商品の判定に関係する |
| 5年以内の満期・解約か | 源泉分離課税の対象になる場合がある |
| 終身保険か養老保険か | 税金の扱いが異なる場合がある |
特に大切なのは、誰が保険料を負担していたか、誰が受け取るのか、そして保険の種類が何かである。
同じように見える満期保険金や解約返戻金でも、契約の形や保険商品の種類によって税金の扱いは変わる。
実際に満期や解約を迎えるときは、保険会社から届く書類や支払通知を確認し、必要に応じて税務署や税理士などの専門家に相談すると安心だ。
まとめ
満期保険金や解約返戻金は、死亡保険金とは税金の考え方が異なる。
死亡をきっかけに支払われるものではないため、基本的には相続税ではなく、所得税または贈与税の問題として考える。
保険料を負担していた人と、満期保険金や解約返戻金を受け取る人が同じであれば、所得税の対象になりやすい。一方、保険料を負担していた人と受取人が違う場合には、贈与税の対象になる場合がある。
所得税の対象になる場合、多くは一時所得として扱われる。一時所得は、原則として次の式で考える。
一時所得 = 受け取った保険金・解約返戻金 − 払込保険料 − 50万円
そして、課税対象として他の所得と合算されるのは、原則として一時所得の2分の1である。
また、一定の一時払養老保険等では、金融類似商品として源泉分離課税の対象になる場合がある。特に、5年以内の満期や解約では注意が必要だ。この場合は通常の一時所得とは異なり、差益部分に対して源泉分離課税が行われる。
ただし、一時払終身保険は、5年以内に解約しても必ず金融類似商品として扱われるわけではない。終身保険には満期がないため、養老保険とは税金の扱いが異なる場合がある。
満期保険金や解約返戻金を見るときは、受け取る金額だけで判断しないことが大切だ。保険料の負担者、受取人、保険の種類、契約期間を確認すると、税金を考える入口が整理しやすくなる。
(本稿は各種公開情報をもとに作成した。一部数値は記事掲載時点の情報である)

