生命保険料控除とは? 対象となる保険と控除額をやさしく解説

生命保険に加入している人にとって、生命保険料控除は身近な制度です。

年末調整や確定申告の時期になると、保険会社から届いた「生命保険料控除証明書」を勤務先に提出したり、確定申告書に記入したりすることがあります。

ただ、実際には「生命保険料控除とは何か」「どの保険料が対象になるのか」「所得税と住民税で何が違うのか」までは、意外と分かりにくいものです。

生命保険料控除は、生命保険料を支払ったときに関係する税金の制度です。死亡保険金や満期保険金を受け取ったときの税金とは、考える場面が違います。

この記事では、生命保険料控除の基本を、保険料を支払ったときの控除に絞って整理します。


目次

生命保険料控除とは何か

生命保険料控除とは、1年間に支払った生命保険料などのうち、一定額を所得から差し引くことができる制度です。

所得から差し引けるということは、税金を計算するもとになる金額を小さくできるということです。その結果、所得税や住民税の負担を軽くする効果があります。

ここで注意したいのは、支払った保険料がそのまま税金から差し引かれるわけではないという点です。

たとえば、生命保険料を10万円支払ったからといって、税金が10万円安くなるわけではありません。支払った保険料のうち、制度で決められた計算により求めた金額を、所得から控除する仕組みです。

生命保険料控除は、あくまで「所得控除」です。


控除の対象になるのは、1年間に支払った保険料

生命保険料控除の対象になるのは、その年の1月1日から12月31日までに実際に支払った保険料です。

ここで大切なのは、「何月分の保険料か」ではなく、「いつ支払ったか」で判断することです。

たとえば、2025年12月分の保険料であっても、実際の支払いが2026年1月であれば、その保険料は2026年分の生命保険料控除の対象になります。

反対に、2026年1月分の保険料でも、2025年12月中に支払っていれば、2025年分の控除対象として扱われることになります。

生命保険料控除は、保険料の対象月ではなく、実際に支払った年で考えます。この点は、年末調整や確定申告で確認しておきたいポイントです。


生命保険料控除には3つの区分がある

生命保険料控除には、大きく分けて3つの区分があります。

控除の区分主な対象
一般の生命保険料控除死亡保障や生存保障などに関する保険
個人年金保険料控除一定の要件を満たす個人年金保険
介護医療保険料控除医療保険、がん保険、介護保険など

生命保険料控除という名前だけを見ると、すべてが同じ枠に入るように感じるかもしれません。

しかし実際には、保険の内容によって控除区分が分かれます。

死亡保障を目的とした生命保険なのか、老後の年金準備を目的とした個人年金保険なのか、入院や手術に備える医療保険なのかによって、控除の区分が変わります。


一般の生命保険料控除とは

一般の生命保険料控除は、死亡保障や生存保障などに関する生命保険の保険料が主な対象です。

イメージしやすいものとしては、次のような保険があります。

  • 終身保険
  • 定期保険
  • 養老保険
  • 収入保障保険

これらは、被保険者が死亡したときに死亡保険金が支払われたり、一定期間生存していた場合に満期保険金が支払われたりする保険です。

ただし、生命保険に付いているすべての特約が控除対象になるわけではありません。

たとえば、新契約では、身体の傷害のみに基因して保険金が支払われる特約などは、生命保険料控除の対象外になる場合があります。

実際には、保険会社から届く控除証明書で、どの区分にいくら該当するのかを確認するのが基本です。


個人年金保険料控除とは

個人年金保険料控除は、一定の要件を満たす個人年金保険の保険料が対象になる控除です。

個人年金保険は、将来、年金形式でお金を受け取ることを目的とした保険です。老後資金の準備として利用されることがあります。

ただし、個人年金保険であれば、すべて個人年金保険料控除の対象になるわけではありません。

個人年金保険料控除を受けるためには、一定の要件があります。代表的なものとしては、次のような要件があります。

  • 個人年金保険料税制適格特約が付いていること
  • 年金受取人が契約者または配偶者であること
  • 年金受取人が被保険者であること
  • 保険料の払込期間が10年以上あること
  • 確定年金や有期年金の場合、年金の受取開始が原則として60歳以降で、受取期間が10年以上であること

このように、個人年金保険料控除は、一般の生命保険料控除とは別枠で使える一方、要件が細かく決められています。

一時払いの個人年金保険など、個人年金保険料控除の要件を満たさない契約もあります。どの控除区分に該当するかは、契約内容や控除証明書の記載を確認することが大切です。


介護医療保険料控除とは

介護医療保険料控除は、医療保険や介護保険などの保険料が対象となる控除です。

主な対象としては、次のような保険が考えられます。

  • 医療保険
  • がん保険
  • 介護保険
  • 入院や手術に備える保険
  • 通院や介護に備える保険

介護医療保険料控除は、2012年以降の新制度で設けられた区分です。

旧契約では、医療保険や介護保険に関する保険料も、一般の生命保険料控除に含まれる形で扱われる場合があります。しかし、新契約では、介護医療保険料控除として独立した区分になっています。

そのため、同じ医療保険でも、契約した時期によって控除区分の扱いが変わる場合があります。


新契約と旧契約の違い

生命保険料控除では、契約時期によって「新契約」と「旧契約」に分かれます。

区分契約時期
旧契約2011年12月31日以前に締結した契約
新契約2012年1月1日以降に締結した契約

旧契約では、控除区分は主に次の2つです。

旧契約の控除区分
一般の生命保険料控除
個人年金保険料控除

一方、新契約では、次の3つに分かれます。

新契約の控除区分
一般の生命保険料控除
個人年金保険料控除
介護医療保険料控除

つまり、新契約では、医療保険や介護保険に関する控除区分が独立している点が大きな違いです。

また、2011年以前に契約した生命保険であっても、2012年以降に更新、転換、特約の付加などを行うと、新契約として扱われる場合があります。

古くから加入している保険がある人は、契約した日だけでなく、更新や転換の有無も確認しておくと整理しやすくなります。実務上は、控除証明書や保険会社の案内を確認するのが基本です。


所得税と住民税で控除額が違う

生命保険料控除では、所得税と住民税で控除できる金額が異なります。

まず、新契約の場合は次のようになります。

新契約の控除区分所得税の控除限度額住民税の控除限度額
一般の生命保険料控除最高40,000円最高28,000円
個人年金保険料控除最高40,000円最高28,000円
介護医療保険料控除最高40,000円最高28,000円
合計最高120,000円最高70,000円

住民税では、各区分の控除限度額は28,000円ですが、3区分を単純に合計した84,000円がそのまま上限になるわけではありません。住民税全体では、最高70,000円が上限です。

次に、旧契約の場合は次のようになります。

旧契約の控除区分所得税の控除限度額住民税の控除限度額
一般の生命保険料控除最高50,000円最高35,000円
個人年金保険料控除最高50,000円最高35,000円
合計最高100,000円最高70,000円

旧契約では、所得税の各区分の控除限度額が新契約よりも大きくなっています。

一方で、新契約では介護医療保険料控除が加わるため、所得税の合計上限は最高120,000円になります。

このように、生命保険料控除は、契約時期によって控除区分や限度額が変わります。

なお、2026年分については、23歳未満の扶養親族がいる場合、新制度の一般生命保険料控除について、所得税の適用限度額が4万円から6万円に引き上げられる時限措置があります。ただし、生命保険料控除全体の所得税の適用限度額12万円は変わらないとされています。公開時には、年末調整や確定申告に関する最新の案内も確認してください。


少額短期保険は生命保険料控除の対象外

生命保険料控除では、保険という名前が付いていれば何でも対象になるわけではありません。

特に注意したいのが、少額短期保険です。

少額短期保険業者と締結した保険契約の保険料は、生命保険料控除の対象にはなりません。

少額短期保険は、保険金額が少額で、保険期間が短期の保険です。家財保険、ペット保険、医療系の少額保険など、さまざまな商品があります。

ただし、これらの保険料は、一般の生命保険料控除、個人年金保険料控除、介護医療保険料控除の対象にはなりません。

年末調整や確定申告で生命保険料控除を考えるときには、保険会社から控除証明書が発行されているかどうかを確認することが大切です。


自動振替貸付で払い込まれた保険料も対象になる

生命保険には、自動振替貸付という仕組みがあります。

自動振替貸付とは、保険料の払い込みができなかった場合に、保険会社が解約返戻金の範囲内で自動的に保険料を立て替える制度です。

この自動振替貸付によって払い込まれた保険料も、生命保険料控除の対象になります。

ここで注意したいのは、控除の対象になる年です。

自動振替貸付によって保険料が払い込まれた場合、その保険料は、貸付が行われた年分の生命保険料控除の対象になります。

後で貸付金を返済した年の控除対象になるわけではありません。

たとえば、2026年に自動振替貸付によって保険料が払い込まれ、その後2027年に貸付金を返済した場合、その保険料は2026年分の生命保険料控除の対象として考えます。


配当金がある場合は差し引いて考える

生命保険には、配当金や割戻金が発生する商品があります。

この場合、生命保険料控除の対象となる金額は、単純に支払った保険料の総額ではありません。

その年に支払った保険料から、その年に受け取った配当金や割戻金を差し引いた金額が、生命保険料控除の対象になります。

たとえば、年間で10万円の保険料を支払い、同じ年に1万円の配当金を受け取った場合、控除の対象として考える金額は9万円です。

支払保険料 - 配当金・割戻金 = 控除対象として考える金額

生命保険料控除証明書には、控除の対象となる金額が記載されているため、実務上は証明書の金額を確認するのが基本です。

ただし、考え方としては、配当金や割戻金がある場合には、その分を差し引くという点を押さえておくと分かりやすくなります。


生命保険料控除で確認したいポイント

生命保険料控除を考えるときは、次の点を確認すると整理しやすくなります。

確認することポイント
いつ支払った保険料かその年の1月1日から12月31日までに支払った保険料が対象
どの控除区分か一般、個人年金、介護医療のいずれか
新契約か旧契約か2012年1月1日以降の契約かどうか
所得税か住民税か控除限度額が異なる
少額短期保険ではないか少額短期保険は控除対象外
配当金や割戻金があるか支払保険料から差し引いて考える
自動振替貸付があるか貸付で払い込まれた年の控除対象になる

生命保険料控除は、控除証明書を見れば金額自体は確認できます。

ただし、新契約と旧契約が混在している場合や、複数の保険に加入している場合は、区分ごとの扱いを確認することが大切です。背景にある仕組みを理解しておくと、年末調整や確定申告のときに迷いにくくなります。


まとめ

生命保険料控除は、生命保険料を支払ったときに関係する所得控除です。

生命保険に加入していれば必ずすべての保険料が控除されるわけではなく、保険の種類や契約時期によって扱いが変わります。

特に大切なのは、次の点です。

ポイント内容
対象になる保険料その年に実際に支払った保険料
控除区分一般、個人年金、介護医療の3区分
契約時期新契約と旧契約で控除額が異なる
税目所得税と住民税で控除限度額が異なる
対象外少額短期保険の保険料は対象外
自動振替貸付貸付で払い込まれた年の控除対象
配当金・割戻金支払保険料から差し引いて考える

生命保険料控除は、死亡保険金や満期保険金を受け取ったときの税金とは別の論点です。

この記事では、あくまで「保険料を支払ったときの控除」に絞って整理しました。

関連する論点として、個人年金保険料控除の詳しい要件や、死亡保険金・満期保険金を受け取ったときの税金も、別の記事で整理していくと理解しやすくなります。

本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事執筆時点の情報です。

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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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