NTTがAI需要で国内データセンターを3倍超へ 電力と冷却が競争力の焦点に

生成AIの普及が、見えにくいインフラの大変化を促している。NTT(東証プライム・9432)は2026年4月27日、国内データセンターのIT電力容量を2033年度までに現在の3倍超へ拡大する計画を発表した。

発表主体は、NTT、NTTデータグループ(東証プライム・9613)、NTTドコモビジネスの3社だ。AIの学習や推論に必要な計算資源を国内で増やし、企業システムや社会インフラ向けのAI利用に対応する狙いがある。

目次

データセンターとは何か

データセンターとは、膨大なサーバーを一つの施設に集め、24時間365日稼働させるITインフラだ。クラウドサービス、動画配信、ネット通販、金融取引、生成AIサービスなどは、各地のデータセンターで動くサーバーに支えられている。

生成AIの広がりで、このデータセンター需要が世界的に増えている。AIはソフトウェアのように見えるが、実際には大量の計算処理が必要になる。その計算を担うのが、データセンターに並ぶGPUなどの高性能半導体だ。

NTTグループは国内47都道府県に160拠点以上のデータセンターを展開している。今回の計画は、その国内基盤をAI時代に合わせて拡張する動きといえる。

NTTの計画は300MWから1GWへ

NTTが示した目標は、国内データセンターのIT電力容量を、現状の約300MWから2033年度に約1GWへ引き上げるというものだ。1GWは1,000MWにあたるため、約3倍超の拡張となる。

ここでいうIT電力容量は、データセンター内のサーバーやネットワーク機器など、IT機器に供給できる電力規模を示す。建物の広さだけでなく、どれだけ多くの計算資源を動かせるかを見るうえで重要な指標だ。

具体的には、東京都心部で液冷標準のAI対応型データセンターを整備し、2029年度下半期のサービス提供開始を予定している。栃木インター産業団地では、栃木TCG11データセンターを2029年に竣工する計画で、最終的にIT電力容量約100MWへの拡張を予定する。

千葉県の印西・白井エリアでは、NTTデータグループが国内最大級のデータセンターキャンパスを段階的に整備する。最終的には同エリア全体でIT電力容量約250MWへの拡張を見込む。

最大の課題は電力と冷却

AI向けの高性能サーバーは、GPUを大量に搭載するため、従来型のサーバーよりも多くの電力を消費し、強い熱を発する。熱を適切に処理できなければ、サーバーは安定して動かない。

従来のデータセンターでは、空気を使ってサーバーを冷やす空冷方式が広く使われてきた。しかし、AI向けの高密度サーバーでは、空冷だけでは効率が落ちやすい。そこで重要になるのが、冷却水などを使って熱を逃がす液冷方式だ。

NTTは、液冷方式により空冷方式と比べて冷却用の消費電力を最大60%削減できるとしている。これはデータセンター全体の消費電力を60%減らすという意味ではなく、冷却に使う電力を抑える効果を指す。

AIデータセンターの競争力は、サーバーを並べるだけでは決まらない。電力を確保し、発熱を処理し、安定して運用できる設計が問われる。

国内市場は2030年に5.6兆円超へ

データセンター市場の拡大は、NTTだけの話ではない。電子情報技術産業協会(JEITA)は、国内のデータセンターサービス市場が2025年の4兆3,453億円から、2030年には5兆6,540億円へ成長すると見通している。

背景には、生成AI、クラウドサービス、動画配信、ゲーム、GPUサーバー、高速ネットワーク需要などがある。JEITAは、こうした要因が複合的にデータセンター投資を押し上げると説明している。

世界的にも電力需要の拡大が課題になっている。国際エネルギー機関(IEA)は、世界のデータセンターの電力消費が2024年の約415TWhから、2030年には約945TWhへ増えると見通す。AIはその主な押し上げ要因の一つだ。

データ主権という視点

NTTの発表では、AIネイティブインフラに求められる要件として、セキュリティやデータ主権への配慮にも触れている。

データ主権とは、データをどの国や地域のルールのもとで保管・処理するかという考え方だ。金融、医療、製造業などの機微なデータを扱う企業にとって、国内でAI処理を行える選択肢は重要になりやすい。

ただし、国内データセンターを増やせばすべての課題が解決するわけではない。電力、冷却、ネットワーク、セキュリティ、人材、コストを合わせて整える必要がある。

AI活用を支える基盤整備の一つ

生成AIの競争力は、モデルの性能だけで決まらない。GPUを動かすデータセンター、低遅延の通信網、安定した電力供給、冷却技術、データを安全に扱える環境が必要になる。

NTTの大型投資は、日本企業がAIを本格活用するための基盤整備の一つといえる。今後は、データセンターをどこに置くか、電力をどう確保するか、発熱をどう抑えるかが、AI時代の産業競争力を左右する論点になりそうだ。

(本稿は各種公開情報をもとに作成した。一部数値は記事掲載時点の情報である)

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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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