ナフサ不足で何が値上がりする 包装材と食品容器に広がる供給不安

食品容器や包装材の調達をめぐり、企業の間で不安が広がっている。背景にあるのは、プラスチックや包装材の原料となる石油製品「ナフサ」の供給不安だ。

食品・飲料、外食、小売りなどの企業や団体が加盟する生団連(国民生活産業・消費者団体連合会)は、ナフサ供給不安に関する緊急アンケート結果を公表した。会員企業658社を対象に実施し、102社から回答を得た調査で、44.1%が「すでに事業への何かしらの影響が発生している」と答えた。

さらに31.4%が「今後3か月以内」に影響が出ると回答し、14.7%が「今後3か月以内から1年以内」と答えた。包装材や容器の問題は、一部企業だけでなく、生活に近い商品価格にも波及する可能性がある。

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ナフサとは何か

ナフサとは、原油を精製する過程で得られる石油製品の一つだ。ガソリンや軽油のように直接燃料として使うというより、化学品の原料として使われる。

流れを簡単にすると、次のようになる。

原油 → ナフサ → エチレン・プロピレンなどの基礎化学品 → プラスチック・包装材・日用品

ペットボトル、弁当容器、食品トレイ、ラップフィルム、レジ袋、歯ブラシなど、身近なプラスチック製品の多くは、ナフサ由来の素材とつながっている。ナフサや関連する基礎化学品の供給が不安定になれば、こうした製品にコスト上昇圧力がかかりやすい。

政府資料では、ナフサの調達先は中東4割、国産4割、その他地域2割と整理されている。輸入ナフサだけを見ると中東依存度がさらに高くなるとの分析もあり、中東情勢や輸送の混乱は、国内の石油化学製品の調達不安につながりやすい。

なぜ「量はある」のに影響が出るのか

政府は、ナフサ供給について日本全体として必要な量は確保できているとの説明をしている。輸入済みのナフサ、国内精製、エチレンなどの川中製品在庫を組み合わせることで、一定期間の需要に対応できるとの見通しも示されている。

それでも企業の現場で不安が出るのは、「総量があること」と「必要な素材が必要な時に届くこと」が同じではないからだ。

企業が安定して生産するには、量だけでなく、必要な種類の素材が、許容できる価格で、決められた納期に届く必要がある。全体として在庫があっても、特定の製品、特定の業種、特定の納期で供給が詰まれば、現場では調達難や価格上昇として表れる。

帝国データバンクも、ナフサ関連製品の供給不安は食品、日用品、建材、塗料、溶剤など幅広い分野に関わると分析している。ナフサ問題は、原料メーカーだけでなく、川下の製造業や小売りにも時間差で影響しやすい。

企業が想定する対応は値上げが最多

生団連の調査では、現在の状況が続いた場合の対応として、72.5%の企業が「値上げ」を挙げた。次いで「一部製品の供給制限」が47.1%、「内容量・仕様の見直し」が42.2%だった。いずれも複数回答だ。

企業側が取り得る対応は、大きく3つに分かれる。

対応策消費者への影響
値上げ(72.5%)弁当、総菜、飲料、日用品などの価格上昇
一部製品の供給制限(47.1%)欠品、納期遅れ、販売数量の制限
内容量・仕様の見直し(42.2%)同じ価格でも内容量が減る実質値上げ

食品の価格が上がる理由は、食材だけではない。弁当を包むフィルム、総菜が入るトレイ、飲料のボトルやキャップなどのコストが上がれば、最終的に商品価格に転嫁される可能性がある。

外食や食品製造の現場でも、容器や包装資材の調達コストは無視できない。ナフサ供給不安は、家計から見えにくいところで食品や日用品の価格に入り込む問題だ。

生団連が求めたのは正確な情報発信

生団連は2026年4月24日、経済産業省に要望書を手交した。求めたのは、ナフサの安定供給に加え、需給見通しなどの正確な情報発信だ。

背景には、不安が先行すると、企業や個人が必要以上に在庫を抱え、実態以上の品薄感を生む懸念がある。供給不安があると、企業は念のため多めに調達しようとする。これが重なると、実際の総量に余裕があっても、流通の途中で目詰まりが起きやすくなる。

今回の問題は、単純な「足りるか、足りないか」ではない。政府は全体の供給量を見ており、企業は自社に必要な素材、価格、納期を見ている。両者の見ている階層が違うため、総量の説明と現場の不安が同時に存在している。

生活者にはどう影響するか

ナフサ供給不安の影響は、ガソリン代や電気料金のようにすぐ目に見えるとは限らない。包装材、容器、フィルム、日用品、建材などを通じて、少しずつ価格や供給に表れる可能性がある。

特に食品や日用品では、容器や包装のコストが商品価格に組み込まれている。原材料そのものが変わらなくても、包むもの、運ぶもの、保管するもののコストが上がれば、価格転嫁や仕様変更につながりやすい。

現時点では、政府が一定の供給量を確保している一方で、企業側は今後の調達や価格に不安を抱えている。ナフサ問題は、国際情勢が生活コストへ波及する経路の一つとして見ておく必要がある。

(本稿は各種公開情報をもとに作成した。一部数値は記事掲載時点の情報である)

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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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