大和証券グループ本社(東証プライム・8601)が、オリックス(東証プライム・8591)傘下のオリックス銀行を買収する。買収額は約3700億円。子会社の大和ネクスト銀行を通じてオリックス銀行の全株式を取得し、完全子会社化する取引だ。
発表日は2026年4月27日。株式取得は2026年10月までを予定している。金利のある世界が戻るなか、証券会社が預金、融資、資産運用をどう組み合わせるかが問われている。
買収の概要
大和証券グループは、子会社の大和ネクスト銀行を通じて、オリックス銀行の全株式を取得する。買収額は約3700億円。将来的には大和ネクスト銀行とオリックス銀行を統合する方針も示している。
統合が実現すれば、総資産は約9兆円、自己資本は約4000億円規模となる見通しだ。大和証券グループは今後5年間で預金残高を2兆円超拡大する目標も示している。
今回の取引は、単に銀行子会社を増やす動きではない。大和証券グループが持つ証券顧客基盤に、オリックス銀行の融資・信託機能を組み合わせる狙いがある。
金利ある世界で銀行機能の価値が上がる
長く続いた超低金利時代には、銀行が預金を集めても、貸し出しや運用で十分な収益を得にくい環境が続いていた。しかし、日銀の金融政策正常化が進み、金利が上がる局面では、預金を集め、融資や運用に回す力の重要性が高まる。
銀行の収益は、預金金利と貸出金利の差だけで単純に決まるわけではない。貸出競争、信用コスト、運用環境にも左右される。それでも、金利のある環境では、預金と融資を持つ金融機関に収益機会が広がりやすい。
大和証券グループにとって、課題の一つは銀行機能の厚みだった。大和ネクスト銀行は預金獲得力を持つ一方、融資機能は限定的だった。オリックス銀行を取り込むことで、預金、融資、信託を組み合わせた提案がしやすくなる。
証券会社が銀行を持つ意味
証券会社の強みは、株式、投資信託、債券などの運用商品を扱う点にある。一方、銀行の強みは、預金の受け入れ、ローン、信託、資金管理にある。
この二つを組み合わせると、顧客に対して「資産を運用する」だけでなく、「資産を担保に資金を調達する」「相続や資産承継に備える」「不動産を活用する」といった提案が可能になる。
オリックス銀行は、店舗網を持たないインターネット型の銀行で、不動産投資ローン、不動産担保ローン、信託商品などに特徴がある。大和証券グループにとっては、融資・信託機能をゼロから作るより、既に実績を持つ銀行を取得するほうが早い。今回の3700億円の買収には、時間を買う投資という側面もある。
大和証券グループのCFOである吉田光太郎氏は、互いの強みを統合することで収益を持続的に拡大し、企業価値を高められるとの考えを示している。証券と銀行の組み合わせは、同社のウェルスマネジメント戦略にも関わる論点だ。
オリックス側は資本配分を見直す
売り手となるオリックスにとって、今回の取引は銀行子会社の売却となる。オリックスは、リース、不動産、保険、インフラなど幅広い事業を持つ金融サービス企業だ。
同社の発表によれば、譲渡価額は3700億円で、2027年3月期の連結決算において約1242億円の売却益を計上する見込みだ。銀行事業を手放すことで、グループ全体の資本配分を見直し、より重点を置く分野へ経営資源を振り向ける狙いがあるとみられる。
買い手の大和証券グループは銀行機能を厚くし、売り手のオリックスは資産ポートフォリオを組み替える。今回の取引は、双方の戦略が一致した案件といえる。
金融業界の再編圧力は続く
今回の買収は、大和証券グループだけの話ではない。金利が上がる局面では、金融機関にとって、預金をどう集め、集めた資金をどう融資や運用につなげるかが収益力に直結しやすくなる。
そのため、証券会社と銀行、ネット銀行と異業種、地方銀行同士など、従来は別々に見られていた領域の連携や再編が進みやすい。特に個人向け金融では、預金、融資、資産運用、相続を一体で提案できる体制が競争力になりやすい。
大和証券グループによるオリックス銀行買収は、金利ある世界で進む金融再編の象徴的な動きだ。統合後の運営や収益化が計画通りに進むかは今後の焦点となるが、証券と銀行の境界が薄れる流れは続きそうだ。
(本稿は各種公開情報をもとに作成した。一部数値は記事掲載時点の情報である)

