4月2日の東京外国為替市場で、円はじりじりと売られた。午後5時時点の円相場は前日比77銭の円安ドル高となり、1ドル=159円56銭〜58銭をつけた。きっかけになったのは、同日にトランプ米大統領がイランへの攻撃を今後2〜3週間続ける方針を示したことだ。中東情勢の早期収束期待が後退し、為替市場ではあらためてドル買いが強まった。
ロイターが3月31日に伝えたところでは、中東での戦闘激化と原油高を背景に、ドルは「最も強い安全資産」として選好されていた。4月2日の値動きも、その流れを引き継いだとみられる。今回の円安は、単なる有事の反応ではない。安全資産としてのドル買いと、資源輸入国である日本への警戒が重なった相場だった。

今回は「有事の円買い」ではなかった
地政学リスクが高まると円が買われる。かつてはそんな場面が少なくなかった。だが今回は逆だった。ロイターの報道では、ドルは円やスイスフランなど他の安全通貨に対しても上昇しており、投資家の逃避先は円ではなくドルになっていた。
背景には、米国の金利水準の高さに加え、世界景気の先行き不安が強まるなかで、流動性の高いドルに資金が向かいやすい市場環境がある。そこへ中東情勢の悪化が重なり、ドル高が一段と進みやすくなった。
原油高が日本の弱さを映した
為替市場で円が特に売られやすかったのは、日本がエネルギー資源の多くを輸入に頼る国だからだ。ロイター系の4月2日報道では、WTI原油は一時111ドル台、ブレント原油も109ドル前後まで上昇した。軍事的緊張の長期化が意識され、原油の供給不安が一気に織り込まれた形だ。
そこで改めて注目されるのがホルムズ海峡である。米エネルギー情報局(EIA)によると、2024年に同海峡を通過した石油は日量2,000万バレルで、世界の石油系液体燃料消費の約20%に相当した。ホルムズ海峡はイランとオマーンの間にある要衝で、ここをめぐる緊張が高まれば、原油価格が跳ねやすい構造になっている。
原油価格が上がれば、日本が支払う輸入代金は増える。貿易収支が悪化しやすいとの見方が強まると、円を売ってドルを確保する動きが出やすくなる。今回は、世界的な安全資産としてのドル買いに加え、日本の輸入負担増への警戒が円売りを後押しした。
160円は相場の節目として意識される
足元のドル円相場では、160円近辺が市場の強い関心を集めている。2024年の為替介入局面でも、ロイターは三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作氏の見方として、160円が当局の「防衛線」と意識されていると伝えていた。今回も、市場では円安進行と介入警戒が同時に意識される展開になっている。
重要なのは、今回の円安を「トランプ氏の演説だけ」で説明しないことだ。実際には、中東情勢の悪化で原油高が進み、日本の輸入負担懸念が強まり、同時にドルが安全資産として買われた。この二つの力が同じ方向に働いたからこそ、円は下がりやすかった。
問われているのは日本の耐久力だ
今後の焦点は、中東の供給不安がどこまで長引くかにある。原油高が続けば、輸入物価の上昇を通じて企業コストや家計負担にも波及しやすくなる。為替市場でも、円安圧力が残りやすい。
今回の値動きは、円が安全資産として自動的に買われるとは限らない相場環境を改めて示した。市場は、日本が資源価格ショックにどこまで耐えられるかを、為替を通じて測ろうとしているようにも映る。
(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

