首都圏新築マンション平均1億1025万円——「1億円時代」再来の実像

2026年2月、首都圏1都3県で販売された新築マンションの平均価格が1億1025万円となった。前年同月と比べると38.8%の上昇で、1都3県の平均が1億円を超えるのは2025年8月以来だ。不動産経済研究所の公表資料をもとにした各報道が伝えている。

「また1億円を超えた」という見出しは衝撃的に映る。ただしこの数字を正しく読むには、「平均値」という指標の性質を理解しておく必要がある。


目次

「平均1億円超」を押し上げたのは何か

2月の首都圏での新築マンション発売戸数は1,762戸だった。そのなかでも特に価格を引き上げる要因として大きかったのが、千葉県の動向だ。

千葉県では船橋市の駅に直結したタワーマンションの高価格帯の部屋が販売され、千葉県単体の平均は前年同月比で2倍以上となる1億3001万円に達した。この突出した数字が、首都圏全体の平均を押し上げた形だ。

地域別の平均価格を見ると、東京23区は前年同月比37.4%上昇して1億4280万円、千葉県は118.0%上昇して1億3001万円、神奈川県は41.1%上昇して9454万円、東京23区以外は33.6%上昇して7158万円だった。一方、埼玉県は40.7%下落して5901万円となっており、埼玉県は前年比で大きく下落した形だ。地域ごとの供給物件の構成差が平均価格に大きく影響していることがうかがえる。

出典:NHK記事

このように、平均価格は「どのような価格帯の物件が何戸売られたか」によって大きく変動する。特定の高額物件がまとまって供給されれば、それだけで首都圏全体の平均値は急上昇する。「市場全体が一律に価格を上げた」というより、「高額物件の供給タイミングが平均を動かした」という側面が今回は強い。


平均値と中央値——「1億円」が全員の現実ではない

「平均1億円」という数字は、多くの人の感覚とかけ離れていると感じるかもしれない。それには理由がある。

「平均値」は一部の超高額物件が含まれるだけでも大きく跳ね上がる。一方「中央値」は、価格を低い順に並べたときちょうど真ん中にくる値で、極端な数字に引っ張られにくい指標だ。

各種報道によれば、2025年通年の首都圏新築マンションの平均価格は9,182万円だったが、中央値は6,998万円にとどまっている。約2,000万円以上の乖離がある。つまり「平均が高い」のは、高額物件が多く含まれているからであり、首都圏の新築マンション購入者の多くにとっての体感価格は、平均値ほど高くない可能性がある。


なぜ価格は上がり続けるのか

今回だけの一時的な現象ではなく、価格上昇は数年来のトレンドが続いている。背景には主に3つの構造的な要因がある。

第一に、土地(地価)の上昇だ。 国土交通省の地価公示によれば、2026年1月1日時点の全国地価は全用途・住宅地・商業地いずれも5年連続の上昇を記録している。マンション用地を手当てするコストが上がれば、新築価格も連動して上がりやすい。

第二に、建築費と人件費の上昇だ。 資材価格や建設労働者の賃金は近年上昇傾向にあり、これも新築マンション価格に上乗せされる形になっている。

第三に、便利な立地への需要集中だ。 駅直結や大規模再開発エリアなど、希少性の高い立地は供給が増えても価格が下がりにくい。都心や主要駅前の物件ほどこの傾向が強く、実需(自分で住む目的)と投資需要が重なりやすい。

これらの要因が重なるかぎり、新築価格は高値圏が続きやすい状況にある。


「売れてはいる」が、慎重さも見え始めている

2月の初月契約率(売り出した月に何割が契約に至ったかを示す指標)は71.7%だった。業界で一般的に「70%以上なら堅調」とされる水準を上回っており、数字の上では市況は悪くない。

ただし、この数字をもって「市場全体が活況」と断言するのも難しい。不動産経済研究所も「価格の上昇が続くなかで、販売されてもすぐには購入せず慎重に見極める層も多い」としており、価格上昇が今後の契約率や在庫にどう反映されるかを注視している。

「売れる物件は売れる」が「すべての物件がすぐ売れる」わけではない——という二極化の兆しは、今後の市場を読むうえで見逃しにくいポイントだ。


今後どう見ればいいか

当面の注目点は、次の3点に整理できる。

1. 高額物件の供給が続くかどうか:平均価格は供給物件の構成に左右される。都心や大型再開発案件の供給動向によって、平均値は引き続き大きく振れやすい。

2. 慎重な購買層が増えるかどうか:価格上昇が続く中で、「いつか下がるかもしれない」と待ちに入る動きが広がれば、契約率や販売在庫の数字に変化が出てくる。

3. 地価・建築費のトレンドが変わるかどうか:価格上昇の根本にある地価と建築費が落ち着かない限り、新築マンション価格は高値圏が続きやすい。

「1億円超え」という数字は一部の高額物件が引き上げた平均値の動きであり、市場全体が一律に過熱しているとまでは言い切れない。それでも、平均価格の上振れと実需の体感価格のズレが広がるほど、市場の見え方と現実の購入負担の差は大きくなる。その意味で、今後の契約率や中央値の推移は、市場の実態を測るうえでより本質的な指標になるだろう。

(本稿は、NHK記事をはじめ各種報道を基に引用作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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