なぜ6時間も──スカイツリーエレベーター閉じ込め事故を読み解く

深夜、地上30メートル付近で静止したエレベーターの中に、子ども2人を含む20人が閉じ込められている。隣のエレベーターを横付けにして、扉を開け、二つのかごの間に板を渡す。その”橋”を、ひとりひとりが渡って脱出する──。

2月22日夜から翌23日未明にかけて、東京スカイツリーで起きた出来事だ。全員が無事に救出されたものの、閉じ込めから救出完了までにかかった時間は約5時間半から6時間近く。その長さに「なぜそんなに?」と感じた人は多いだろう。

この問いに答えるには、スカイツリーのエレベーターがいかに特殊な設備か、そして「閉じ込められた人とつながる手段」がいかに重要かを知る必要がある。


目次

何が起きたか

東京スカイツリーの展望台(天望デッキ)と4階を結ぶエレベーター2基が、2月22日夜、運行中に停止した。うち1基に20人が残されたまま、扉が開かない状態が続いた。

運営会社の東武タワースカイツリーの発表によると、全員が救出されたのは翌23日午前2時02分。停止からおよそ5時間半から6時間近くが経っていた。子どもを含む乗客にけが人・体調不良者は報じられていない。

展望フロア側でも、エレベーターが使えなくなった影響で、約1200人規模の来場者が一時的に足止めされたと報じられている。運営側は安全確認と調査のため臨時休業を実施し、少なくとも23日から25日まで臨時休業として点検を行い、安全が確認できてから営業を再開するとしている。

原因については「調査中」とされており、現時点で確定的な情報は公表されていない。


「スカイツリーのエレベーター」はなぜ特殊なのか

一般的なオフィスビルやマンションのエレベーターをイメージすると、スカイツリーのものとの違いが見えにくい。しかし、この設備は根本的に異なる。

スカイツリーには、地上から第1展望台(高さ約350メートル)まで直通で上る超高速エレベーターが導入されている。速度は分速600メートル、定員は40人。地上から展望台まで50秒弱で結ぶという設計だ。

一般的なマンションのエレベーターが分速60〜120メートル程度であることを考えると、その速さは桁違いだ。また、「直通」という設計上、途中で止まれる場所が少ない。

これが「なぜ6時間も?」という問いの、一つ目の答えに関わってくる。途中で停止した場合に取れる手段が、通常のエレベーターより限られるのだ。今回の「隣のエレベーターを横付けして板を渡す」という救出方法は、こうした構造的な制約のもとで安全を確保するための手順であり、その分、時間がかかったとみられている。展望フロアに取り残されていた多数の来場者への対応と並行せざるを得なかった可能性も指摘されている。


「インターホンが通じなかった」という問題

もう一つの焦点が、閉じ込め中の連絡手段だ。

複数の報道によると、閉じ込め中、エレベーター内のインターホンが使えず、乗客は携帯電話で外部と連絡を取っていたとされる。

インターホン(外部連絡装置)は、閉じ込め時の「命綱」とも言える設備だ。エレベーターメンテナンスの専門家は取材に対し、「インターホンは停電時でもバッテリーで外部に連絡できることが基準で、つながらないのは保全上の問題の可能性がある」とコメントしたと報じられている。

国土交通省の整理でも、エレベーターの外部連絡装置は非常時に外部と連絡できることを前提とした設計・検査が求められている。インターホンが機能しなければ、救助側も現場の状況をリアルタイムで把握しにくくなる。状況確認と意思決定が遅れれば、それがそのまま救出の遅れにつながる可能性がある。

今回の「不通」が整備上の問題なのか、別の要因によるものなのかは、現時点では不明だ。


「原因究明に至らなかった」過去もある

今回の事故をめぐって、毎日新聞は過去にも閉じ込めが起きていたことを報じ、特に2017年の同系統トラブルに触れた。当時も原因の特定には至らなかったとされる。

一方、FNN(フジテレビ系)は専門家のコメントとして、今回の停止の原因候補に「強風による揺れ→速度基準の超過→安全装置の作動」という可能性を紹介している。ただしこれは専門家の見解であり、原因として確定されたものではない。

「なぜ止まったか」の解明は、今後の調査に委ねられている。


エレベーターの「点検」には二種類ある

こうした事故が起きると、「点検はしていなかったのか」という疑問が出やすい。ここで知っておくと便利なのが、エレベーターの保守・点検には性質の異なる二種類があるという点だ。

一つは、保守会社が日常的に行う定期的な保守点検。もう一つは、建築基準法に基づく定期検査・報告で、資格を持つ専門家が検査を行い、結果を行政機関に報告する義務がある。

日常の保守と法定の定期検査は、頻度も内容も異なる。今回の事故の原因が何であれ、調査では「どの点検で、何が見落とされた可能性があるか」という観点も問われることになるだろう。


残された問い

現時点でわかっていないことが、いくつかある。

  • なぜエレベーターが停止したか(原因は調査中)
  • インターホンが通じなかった理由(整備の問題か、別の要因かは不明)
  • 今後の運営再開時期と、再発防止策の具体的内容

運営側は「包括的な点検と保全・安全管理体制の強化」を表明しているが、詳細は明らかになっていない。


「大丈夫だろう」と思っていた設備が止まる

東京スカイツリーの運営会社によれば、展望台に通じる4基のエレベーターを利用した人は昨年度、467万人にのぼった。多くの観光客が利用する象徴的な設備であるエレベーターが「止まりうる」ことを、多くの人は意識していなかっただろう。

安全装置が作動してエレベーターが止まること自体は、設計上の「想定内」でもある。問題は止まった後に何が起きるか──つながるはずのインターホンがつながらず、救出に6時間近くかかった。その事実が、今問われている。

原因の解明と、再発防止策の中身が、今後の焦点だ。


本記事は2026年2月24日時点の情報に基づいています。事故原因は調査中であり、今後の発表によって状況が変わる可能性があります。

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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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