FRB、政策金利を4.25~4.50%で据え置き──パウエル議長が語る不確実性の正体

記事概要

連邦準備制度理事会(FRB)は本日、政策金利を1月以来の4.25~4.50%で据え置く決定を発表した。議長のジェローム・パウエル氏は記者会見で、トランプ政権による大規模関税の影響や、イスラエル・イラン紛争によるエネルギー価格上昇など、不確実性が依然として高いと強調。今後の利下げタイミングには慎重な姿勢を崩さない構えを示した。

政策金利据え置きの決定ポイント

資料:CME-FedWatchツール


FRBは今回で4会合連続となる政策金利据え置きを選択。インフレ率は目標の2%前後で推移し、失業率も低水準を維持しているが、足元の消費減速や貿易摩擦の影響が景気にじわりと足かせをかけ始めているとの判断が背景にある。新たに公表されたドットチャートでは、FRB担当者の中央値予測として今年2回の利下げが依然見込まれる一方、利下げなしを予想するメンバーも増加し、内部に意見の分かれも見受けられた。

据え置き判断に至った背景要因

  • 物価動向:財・サービスを総合したコア・インフレ率は鈍化傾向。
  • 雇用情勢:失業率は3月予測よりやや上振れする見通しだが、依然として歴史的な低水準を保つ。
  • 景気減速の兆し:小売売上高は自動車需要の落ち込みを受け先月大幅減少。消費支出が米GDPの約3分の2を占めることから、今後の動向が注目される。

パウエル議長の発言に見る不確実性

会見でパウエル議長は「関税の影響をもっと学ぶ必要がある」と発言。

  • 一時的か恒常的か:関税によるコスト上昇が一時的なショックに留まるのか、それとも消費者物価全体に持続的に波及するのかは依然として不透明。
  • 利下げ判断の条件:「価格への影響が明確にならない限り、利下げに踏み切るのは難しい」との見解を示し、今後のデータ次第でスタンスを調整する姿勢を鮮明にした。

副次的リスク①──トランプ関税の波及

資料:日経モーニングプラスFT(モープラFT)

トランプ大統領は春先に「200年で最大」の関税引き上げを断行。7月8日までに二国間協定をまとめ上げる期限を設定するなど強硬だが、

  • 企業の対応:関税負担をサプライチェーン全体に転嫁する動きが広がり、最終的には消費者価格の上昇要因に。
  • 消費者支出への影響:自動車販売の急減が象徴するように、小売売上高の落ち込みが顕著となっており、景気減速懸念を高めている。

副次的リスク②──中東情勢のエネルギー不安

先週勃発したイスラエル・イラン紛争は原油価格を一時的に押し上げたものの、

  • 米国のエネルギー自給率向上:1970年代のような深刻なショックには至らない見通し。
  • インフレへの影響度:「通常、エネルギーショックは永続的なインフレ加速要因とならない」とパウエル氏は指摘し、過剰反応を戒めた。

市場の反応と財政政策動向

  • 市場リアクション:発表直後に米株価は急落、円相場や長期金利も乱高下。
  • 「悪材料の利下げ」観測:景気後退懸念を受けた利下げ期待が強まる一方、FRBは慎重姿勢を崩さず。
  • 財政政策:上院審議中の大統領増税・歳出法案は、経済を最大0.8%押し上げる試算があるが、採決時期や内容の変化が今後の不確実性要因になる。

まとめと今後の注目点

FRBの据え置き決定は、現状の「待ち」の姿勢を示すものであり、次回以降は関税の実態把握や中東情勢、財政政策の動向を見極めたうえで、利下げ判断が下される見込みだ。
今後は:

  1. 5月・6月の消費者物価指数と小売売上高データ
  2. トランプ政権の対中・対英協定の進展状況
  3. イスラエル・イラン紛争の激化度と原油輸入コスト
    これらを注視することで、FRBの次の一手がより明確に見えてくるだろう。

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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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