なぜ5月最終月曜日は休場に?米国Memorial Dayと英国Bank Holidayを解説

1. はじめに

昨日(2025年5月26日)は、両市場とも「最終月曜日」に当たる法定祝日のため休場でした。

  • 米国市場はMemorial Day(メモリアル・デー)により休場。Memorial Dayは「5月の最終月曜日」に固定されており、2025年は5月26日が該当します。ウィキペディア
  • 英国市場(ロンドン証券取引所など)はSpring Bank Holiday(春のバンクホリデー)により休場。こちらも「5月の最終月曜日」が祝日となっており、2025年は5月26日です。timeanddate.com

この記事では、米国のMemorial Day(メモリアル・デー)と英国のSpring Bank Holiday(春のバンクホリデー)を紹介します。

2. Memorial Day(メモリアル・デー)とは

2.1 起源と歴史

メモリアル・デーの起源は、南北戦争(1861~1865年)後のアメリカ各地で行われた戦没者追悼行事にさかのぼります。当時、まだ国としての一体感が薄かった時代に、それぞれの地域が戦死者の墓地を飾り、祈りを捧げる「Decoration Day(飾り付けの日)」を独自に設けていました。

  • 初期のDecoration Day
    1870年代には北部・南部を問わず各地の共同墓地で花や星条旗を捧げ、遺族や地元住民が集まるようになります。特に1868年5月30日、北軍将校ジョン・ローガン将軍が「統一された追悼日」としてDecoration Dayを宣言したことが、大きな転機となりました。
  • 全戦没者への拡大
    やがて第一次世界大戦や第二次世界大戦での死者を追悼する動きが広まり、Decoration Dayの趣旨は「アメリカ合衆国のすべての戦没者をたたえる日」へと拡大していきました。
  • 連邦祝日化への道程
    1968年の「Uniform Monday Holiday Act(祝日の月曜日移動法)」制定により、もともと5月30日だったDecoration Dayは「5月の最終月曜日」に固定されることに。1971年からは正式に“Memorial Day”として連邦の祝日に定められ、今日に至ります。
2.2 意義と国民の過ごし方

Memorial Dayは、単なる休日以上の重みを持つ日です。戦没者への感謝と慰霊を根幹に、以下のような伝統的な過ごし方が定着しています。

  • 国旗の掲揚と半旗
    追悼の象徴として、午前中に星条旗が“半旗”に掲げられます。多くの自治体や公共施設、家庭でも正午まで半旗とし、その後に平常の位置へ戻す儀式を行います。
  • 墓地参拝と追悼式典
    アーリントン墓地など大規模な国立墓地で行われる追悼式典には、大統領や退役軍人団体が参列。地元の小さな墓地でも、花やリースを手向けて故人をしのぶ習慣が今なお息づいています。
  • 国内最大級のパレード
    ニューヨークのベテランズ・デー・パレードをはじめ、全米各地で軍人や退役軍人、学校・市民団体が行進し、戦没者に敬意を表します。沿道には地域住民が集い、ペンキで彩られたフロートやバンド演奏で祝祭的な雰囲気も漂います。
  • 行楽シーズンの幕開け
    公式の追悼行事と並行して、家族や友人とバーベキューやピクニックを楽しむ文化も根づいています。海水浴場や州立公園がオープンし、いわゆる「夏の始まり」を告げる週末として、レジャー需要も高まります。
  • 慣習となった「三連休」
    5月最終月曜日がMemorial Dayであるため、多くの企業や学校が前後を合わせて三連休とし、旅行や帰省を計画。自動車交通や航空便が混雑する一方、市場の休場による金融面の静寂も特徴です。

これらの伝統と現代的な行楽ニーズが融合し、Memorial Dayは「追悼」と「祝祭」が同居する独特の祝日としてアメリカ文化の一端を担っています。

3. Spring Bank Holiday(スプリング・バンクホリデー)とは

3.1 起源と歴史

Spring Bank Holidayの起源は、産業革命期の19世紀にさかのぼります。当時、銀行は取引や決済を一時停止し、スタッフが休暇を取る「銀行休業日(Bank Holiday)」を設けていました。これがやがて法的に定められるようになり、1871年のBank Holidays Act(銀行休業日法)により最初の公的祝日として認められました。

  • 初期の銀行休業日
    当初の銀行休業日は4月から8月にかけて数日設定され、その中に春の訪れを祝う日として“春の銀行休日”が含まれていました。
  • 1971年の移動
    20世紀半ばまでに祝日としての運用が定着し、1971年にBanking and Financial Dealings Actが制定されると、「5月の最終月曜日」に固定されるよう法改正されました。これにより、Spring Bank Holidayは毎年同じ曜日に行われる安定的な祝日となりました。
  • 地域差
    イングランドおよびウェールズではこの「5月最終月曜日」がSpring Bank Holidayですが、スコットランドでは「6月最初の月曜日」が同じ名称で設定されることもあります。また北アイルランドでは別のバンクホリデーが重なる場合もあり、地域によって多少の違いがあります。
3.2 意義と国民の過ごし方

Spring Bank Holidayは、暦の上で春が終わり夏へと移行する節目を示す祝日として、英国の人々に根強い人気があります。以下のような過ごし方が一般的です。

  • ガーデンパーティーやピクニック
    庭先にテーブルを並べ、紅茶や軽食を楽しむ「ガーデンパーティー」が伝統的。公園や郊外の緑地には家族連れや友人グループがシートを広げ、手作りのサンドイッチやプラッターを囲みます。
  • 地域のフェスティバル・レイヴェスト祭
    地域によっては「May Festival(メイ・フェスティバル)」や「Reavest Festival」と呼ばれる春祭りが開催され、民謡やマーチングバンド、職人市、フードトラックなど多彩な催し物が楽しめます。
  • ビーチや湖畔へのお出かけ
    気候が安定すると同時にリゾート地が賑わい始め、南部の海岸線やレイク・ディストリクトへの日帰り旅行が盛んになります。交通機関が混雑する一方、観光業やホスピタリティ産業には大きな恩恵をもたらします。
  • 金融市場・官公庁の休業
    この祝日にはロンドン証券取引所をはじめとする主要市場が休場となり、銀行や官公庁も業務を停止します。そのため、企業の国際決済や金融商品の取引は一時停止し、市場における流動性やボラティリティに影響を与える要因となります。
  • 家族行事とリフレッシュ
    学校は夏休み前の最後の長期休暇として位置づけられ、家族旅行の出発日にも最適です。普段は仕事や学業で忙しい人々が、春の陽気の中でリフレッシュする機会として重宝しています。

Spring Bank Holidayは、英国の日常から一歩離れて“春を満喫する”時間として定着し、社会的にも経済的にも大きな意味を持つ祝日です。

4. 市場への影響

4.1 休場日における取引停止の仕組み
  • 取引所の完全休業
    メモリアル・デーやスプリング・バンクホリデーには、ニューヨーク証券取引所(NYSE)やナスダック、ロンドン証券取引所(LSE)といった主要市場が終日取引を停止します。発注や約定は一切行われず、売買システムはメンテナンスモードに入るため、通常の注文受付や取引成立のプロセスが停止します。
  • 電子プラットフォームの制限
    一部の電子取引プラットフォーム(ECN)やダークプールでは限定的に注文を受け付ける場合がありますが、流動性が著しく低下するため、大口取引や裁定取引には適しません。多くの機関投資家がシステムをシャットダウンし、翌営業日の朝まで待機態勢を取ることが一般的です。
  • 清算機関の停止
    取引所休場日はクリアリングハウスも稼働を停止するため、決済・受渡しスケジュールも前倒し・後倒しされます。特にオプションや先物などのデリバティブ取引では、清算カレンダーを事前に確認しておかないと、権利行使や納会スケジュールにずれが生じるリスクがあります。
4.2 前後の流動性・ボラティリティへの影響
  • 休場前の買い・売り急ぎ
    祝日前はポジション調整のための買い・売りが集中しやすく、取引時間中の出来高が通常より増加するケースが多く見られます。特に金利指標発表や経済統計が祝日翌日に控える場合、市場参加者が予測ポジションを取る動きが活発になります。
  • 休場後の薄商いと急変動
    休場明けの始値は、休場期間中に蓄積されたニュースや海外市場の動きを一気に織り込む形で決まるため、窓開け(ギャップ)や高めのボラティリティを伴うことが多いです。出来高は朝方に集中し、その後は通常より低調に推移する傾向があります。
  • クロスカレンシー・影響
    特に為替市場との連動性が高い場合、休場期間中に発表された要人発言や海外経済指標が休場明けの外為相場に影響を与え、それが株式市場にも波及します。日本時間でも欧米市場再開直後の動きには注意が必要です。
4.3 投資家が留意すべきポイント
  • 休場スケジュールの把握
    祝日カレンダーを常に最新の状態で管理し、主要市場の休場日を前もって確認しておくことが不可欠です。特に複数市場をまたぐポートフォリオ運用では、各市場の祝日が異なるため、想定外の取引停止リスクを防止できます。
  • ポジション管理とリスクコントロール
    連休前にはポジションを縮小するか、ヘッジ手段(オプションや先物)を活用してリスクを抑える戦略が有効です。また、休場明けの急変動に備え、ストップロス設定やトレーリングストップの活用を検討しましょう。
  • 情報収集とマーケット・センチメント
    休場日に発表される海外ニュースや企業決算、地政学リスクに注意し、休場前後の市場織り込みの傾向を把握しておくことが重要です。専門ニュースサイトやSNS、リアルタイムチャットなどを活用して、休場期間中の変化をフォローすると良いでしょう。

これらのポイントを押さえることで、祝日前後のタイトな取引環境でも安定的に対応できるようになります。

5. おわりに

米国のMemorial Dayと英国のSpring Bank Holidayはいずれも「戦没者追悼」と「春から夏への節目」を兼ね備えた祝日であり、市場運営においては休場による流動性低下とその前後のボラティリティ高まりを念頭に置く必要があります。特に複数市場をまたぐ取引では、各国の祝日スケジュールを把握し、ポジション管理やヘッジ戦略を適切に組み立てることが重要です。

次回の主要市場休場日はカレンダーにて随時確認し、取引計画や資金管理に反映させましょう。損失回避と機会活用の両面から、祝日前後の市場動向をしっかりとウォッチしていくことをおすすめします。

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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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