SUBARU大幅減益、北米依存とEV戦略見直しが映す課題

SUBARUの2026年3月期決算で、利益が大きく落ち込んだ。売上収益は前期比2.1%増の4兆7849億円だった一方、営業利益は90.1%減の401億円、最終利益は73.1%減の908億円となった。販売が全面的に崩れたというより、米国の関税措置やEV関連の損失などが利益を強く押し下げた決算である。

SUBARUは東京証券取引所プライム市場に上場する自動車メーカーで、証券コードは7270である。日本メーカーの中でも北米市場への依存度が高く、米国での販売環境や政策変更が業績に響きやすい。今回の決算は、その収益構造が関税、環境規制、EV需要の変化に同時にさらされた事例といえる。

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売上は増えたが利益は急減した

2026年3月期の数字でまず目立つのは、売上と利益の方向が分かれた点だ。売上収益は4兆7849億円と前期を上回った。一方で、本業のもうけを示す営業利益は401億円にとどまり、前期から9割減った。最終利益も908億円で、7割超の減益となった。

会社発表で主な要因として示されたのが、米国の関税措置とEV関連の費用である。米国の追加関税による影響だけで、営業利益は2269億円押し下げられた。さらに、米国でのEV需要の減速や環境規制の変化を受け、バッテリーEV関連の開発資産について減損損失など578億円を計上した。

このため、今回の決算を「車が売れなくなったための減益」とだけ見ると実態を見誤る。売上は増えている。利益を大きく削ったのは、関税、EV関連費用、原材料高などのコスト要因と一時的な費用計上である。

関税が浮き彫りにした北米依存

SUBARUにとって北米は収益の柱である。北米で販売が堅調なら業績を押し上げやすい一方、米国の通商政策や環境規制、為替、販売インセンティブの変化を受けやすい。

今回、米国の関税措置だけで営業利益が2269億円押し下げられたことは、その影響の大きさを示している。関税がかかると、車両や部品のコストが上がる。すべてを販売価格に転嫁できれば利益への影響は抑えられるが、競争の激しい市場では簡単ではない。価格に転嫁しきれない分はメーカーの利益を圧迫する。

北米を主力市場とすることは、SUBARUの成長を支えてきた一方で、米国政策の変化が業績に直接響きやすい構造でもある。今回の決算は、そのリスクを改めて見せた。

EV関連損失は撤退ではなく配分見直し

もう一つの焦点は、EV関連の損失である。SUBARUはバッテリーEV関連の開発資産について回収可能性を見直し、減損損失などを含めて578億円の費用を計上した。

減損損失とは、将来回収できると見込んでいた資産の価値を引き下げる会計処理である。自動車メーカーはEV開発のために多額の研究開発費や設備投資を行う。しかし、需要や規制環境が当初の想定から変わると、投資を計画どおりに回収できない可能性が出てくる。その場合、資産価値を見直す必要がある。

ただし、これを「SUBARUがEVから撤退する」と読むのは正確ではない。決算説明では、自社開発のバッテリーEVの導入時期を延期し、内燃機関系商品やハイブリッド車への開発リソース配分を厚くする考えが示された。EVそのものをやめるのではなく、市場環境に合わせて投資の優先順位を組み替える動きである。

米国ではEV需要の伸びが一時期の想定より鈍くなり、ハイブリッド車への需要も根強い。SUBARUの戦略修正は、販売環境や規制変化に応じた商品・開発配分の見直しとして捉えるのが自然だ。

2027年3月期は増益予想だが前提は軽くない

SUBARUは2027年3月期について、増益を見込んでいる。売上収益は前期比8.7%増の5兆2000億円、営業利益は3.7倍の1500億円、最終利益は43.1%増の1300億円を予想している。

2026年3月期にEV関連費用を計上した反動や、販売台数の増加が利益を押し上げる見通しである。フォレスターやクロストレックのハイブリッドモデルなど、新商品の展開も収益改善の材料になる。

ただし、前提は軽くない。原材料価格の高騰や中東情勢を背景にした物流・コスト上昇により、営業利益はおよそ200億円押し下げられる見込みとされる。米国市場の販売が堅調に続くか、関税や規制環境の変化にどこまで対応できるかも、引き続き業績の焦点となる。

大崎篤社長は、環境変化が激しいなかで柔軟に適応し、先手で対応していく考えを示した。今回の決算は、その対応力が2027年3月期の回復見通しを支えられるかを問う内容でもある。

電動化の難しさを示す決算

今回のSUBARUの大幅減益は、単にEV需要が鈍ったという話ではない。米国市場に強く依存する収益構造、通商政策の変化、環境規制の緩和、原材料高、物流コスト、そして電動化投資の回収見通しが重なった結果である。

EVは将来の重要な選択肢であり続ける一方、すべての市場で同じ速度で普及するわけではない。需要の伸び方が変われば、メーカーは投資計画を見直さざるを得ない。SUBARUの判断は、電動化を進める自動車メーカーが直面する難しさを示す事例といえる。

売上が伸びても、関税や一時費用によって利益が残りにくい局面は起こりうる。SUBARUにとって2027年3月期は、北米での販売力を維持しながら、コスト増を吸収し、EVとハイブリッドの開発配分をどう整えるかが問われる1年になる。

(本稿は各種公開情報をもとに作成した。一部数値は記事掲載時点の情報である)

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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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