自賠責保険料が13年ぶり値上げへ 事故は減っているのになぜ上がるのか

交通事故は長い目で見れば減ってきた。それでも、自動車やバイクを持つ人に義務づけられている自賠責保険の保険料は、2026年11月1日以降に保険期間が始まる契約から平均6.2%引き上げられる。

値上げは2013年度以来13年ぶりとなる。事故が減っているなら保険料も下がりそうに見えるが、今回の改定はその直感とは違う動きだ。背景には、事故1件あたりの支払額や制度を支えるコストの上昇に加え、過去の引き下げに使われた滞留資金の減少がある。

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何が変わるのか

自賠責保険は、自動車やバイクを持つ人が加入しなければならない強制保険だ。正式には「自動車損害賠償責任保険」と呼ばれ、交通事故の被害者救済を目的としている。

今回の改定では、保険料が全体平均で6.2%引き上げられる。沖縄県や離島を除く地域で2年契約の場合、主な変更は次のとおりだ。

車種現行改定後増加額
自家用普通乗用車1万7650円1万8560円910円
軽自動車1万7540円1万8660円1120円

金額だけを見れば、家計を一気に揺さぶるほどの大幅な負担増ではないかもしれない。ただ、自動車を持つ人にとっては、ガソリン代、車検費用、修理費、任意保険料などに続く保有コストの上昇として受け止める必要がある。

事故が減っているのになぜ値上げなのか

今回の値上げで最も引っかかりやすいのは、「事故が減っているのになぜ保険料が上がるのか」という点だ。

これまでは、交通事故の減少や自動ブレーキなど安全技術の普及を背景に、自賠責保険料は引き下げ傾向にあった。事故が減れば、保険金の支払いも減り、保険料も下がりやすい。ここまでは自然に理解できる。

しかし、保険料は事故の件数だけで決まるわけではない。医療費や介護費、人件費、システム費、事務費などが上がれば、事故1件あたりに必要な支払いは大きくなる。事故の数が減っても、1件あたりの費用が増えれば、制度全体の支出は下がりにくくなる。

公表資料では、純保険料率の引き上げに加え、社費や代理店手数料の上昇も反映されている。さらに、過去の保険料引き下げに使われた滞留資金が減ったことも、収支を均衡させるための見直しにつながった。単純な「事故増による値上げ」ではなく、保険制度を維持するための費用構造が変わっていると見る方が近い。

自賠責は任意保険と何が違うのか

自賠責保険は、交通事故で他人を死傷させた場合の被害者救済を目的とする保険である。相手のケガや死亡に対する最低限の補償を担う制度であり、車両の修理代や自分自身のケガ、物損事故などを幅広くカバーするものではない。

その不足を補うのが任意保険だ。対物賠償、車両保険、自分や同乗者の補償などは、任意保険で備えるのが一般的である。

今回のニュースで注意したいのは、自賠責だけが特別に上がっているわけではないことだ。自動車保険をめぐっては、修理費の高騰などを背景に、任意保険でも保険料の引き上げが相次いでいる。車を持つことの負担は、保険料だけでなく、維持費全体として見た方が実感に近い。

平均6.2%と個別の負担額は分けて見る必要がある

「平均6.2%引き上げ」と聞くと、自分の契約もそのまま6.2%上がるように感じるかもしれない。しかし、実際の保険料は車種、地域、契約期間などによって異なる。

たとえば、沖縄県や離島を除く地域で2年契約の場合、自家用普通乗用車は910円、軽自動車は1120円の増加となる。平均改定率は全体をならした数字であり、個別の契約条件によって上がり方は変わる。

この点を分けて見ないと、数字の印象だけが先に立ってしまう。家計への影響を考えるなら、「平均で何%上がるか」と同時に、「自分の車種と契約期間ではいくら変わるのか」を確認することが重要になる。

家計にとっては小さな値上げでも、意味は小さくない

自賠責保険料の値上げだけを切り出せば、増加額は数百円から千円台の範囲に見える。しかし、家計にとって問題なのは、ひとつひとつの値上げが重なっていくことだ。

車を持つ人は、自賠責保険料のほかに、任意保険料、燃料代、車検費用、修理費、税金などを負担している。物価上昇が続くなかで、それぞれの費用が少しずつ上がれば、年間の維持費の負担感につながりやすい。

特に地方では、通勤、買い物、通院、子どもの送迎などで車を手放しにくい家庭もある。自賠責保険料の改定は単体では小さく見えても、車を持ち続けるための費用全体を考えるきっかけになる。

今回の値上げから見えること

今回の自賠責保険料の引き上げは、事故件数だけを見ていては理解しにくい。むしろ重要なのは、事故が減っても、医療費や人件費、制度運営のコストが上がれば、保険料は下がり続けるとは限らないという点だ。

これは自動車保険に限った話ではない。社会のさまざまな制度やサービスは、利用件数だけでなく、それを支える人件費、システム費、医療費、管理費によって成り立っている。表面上の件数が減っていても、支えるコストが上がれば、利用者の負担に跳ね返ることがある。

自賠責保険料の値上げは、一見すると地味なニュースだ。しかしその裏には、車を持つコストがどのように決まり、なぜ生活費の中で見えにくく増えていくのかという論点がある。事故が減れば負担も減る、という単純な見方だけでは、いまの保険料の動きは見えにくくなっている。

(本稿は各種公開情報をもとに作成した。一部数値は記事掲載時点の情報である)

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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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