5月7日発表の日本企業決算を読む|住友林業は米住宅で減益、味の素・ノジマ・長瀬産業は増益
2026年5月7日は、住友林業、味の素、MonotaRO、協和キリン、横河電機、ノジマ、長瀬産業の決算が発表された。対象企業は、住宅、食品・電子材料、BtoB EC、医薬品、制御機器、家電小売、化学品商社と幅広く、同じ日本企業決算でありながら、業績の強弱を分けた要因は大きく異なっている。
全体としては、増収増益の企業が多い一方で、米国住宅ローン金利、北米冷凍食品、研究開発費、半導体・電子材料、国内家電需要、株主還元といったテーマが並んだ。単純な売上高や純利益の増減だけではなく、どの利益段階で伸びたのか、一時的な利益要因が含まれるのか、次期見通しにどの程度織り込まれているのかが重要になる。
今回の決算では、MonotaROやノジマ、長瀬産業のように本業の伸びや収益性改善が確認された企業がある一方、住友林業のように売上高は増えながらも米国住宅事業の影響で利益が落ち込んだ企業もある。味の素は食品事業に加えて電子材料の成長が目立つ一方、純利益の増減には本社ビル売却益という一時要因も含まれる。ロイターも、味の素の2027年3月期純利益見通しについて、前期に計上した本社ビル売却益の剥落が減益要因になると報じている。
参考報道:ロイター|味の素の業績見通しに関する報道
主要企業の決算概要
住友林業(東証プライム:1911)
味の素(東証プライム:2802)
MonotaRO(東証プライム:3064)
協和キリン(東証プライム:4151)
横河電機(東証プライム:6841)
ノジマ(東証プライム:7419)
長瀬産業(東証プライム:8012)
企業別に見る注目点
住友林業|米国住宅市場の金利影響が利益を圧迫
住友林業(東証プライム:1911)は、木材建材、国内住宅、海外住宅、不動産、資源環境などを展開する住宅・木材関連企業である。今回の決算では、売上高は増加したものの、営業利益、経常利益、純利益はいずれも減少した。
最も大きな焦点は、米国住宅事業である。海外住宅事業の売上高は2,809億73百万円と前年同期比3.7%増だったが、経常利益は198億89百万円と39.1%減少した。米国では住宅ローン金利の高止まりが住宅購入者の行動に影響しやすく、販売戸数や販売単価に圧力がかかりやすい。
市場評価:市場ニュースでは、米国住宅事業の販売戸数減少や競争環境の厳しさが減益要因として取り上げられた。決算発表後の株価反応についても、米国住宅事業の苦戦が材料視されたと報じられている。
通期予想は、売上高2兆5,900億円、営業利益1,570億円、純利益950億円である。売上高は前期比14.2%増を見込む一方、営業利益は6.9%減、純利益は10.9%減を見込んでおり、拡大投資と利益率のバランスが焦点となる。
注目点:米国Tri Pointe Homes株式取得資金などを目的に8,351億円の借入を決議しており、米国住宅関連投資の効果と財務負担の両面が今後の注目点となる。
味の素|食品と電子材料は堅調、一時利益の剥落には注意
味の素(東証プライム:2802)は、調味料・食品、冷凍食品、ヘルスケア等を展開する食品・アミノサイエンス企業である。2026年3月期は、売上高、事業利益、純利益のいずれも増加した。特に、ヘルスケア等では電子材料の販売好調が利益を押し上げた。
特殊要因:純利益が91.6%増となった背景には、本社ビル土地・建物の譲渡による固定資産売却益がある。このため、2027年3月期は売上高1兆7,230億円、事業利益1,970億円を見込む一方、純利益は1,200億円と10.9%減を見込む。
メディア評価:ロイターは、前期に計上した本社ビル売却益406億円の剥落が減益要因になる一方、電子材料、調味料・食品などの成長により売上高と事業利益は過去最高を見込むと報じている。
事業別では、調味料・食品が売上高9,369億円、事業利益1,430億円と堅調だった一方、冷凍食品は北米の減益により事業利益が35.0%減少した。さらに、中東情勢に伴う包装資材や原料価格の上昇リスクについて、300億円規模の事業利益影響に言及した報道もあり、コスト上昇への対応も重要な論点となる。
MonotaRO|BtoB ECの成長が続き、収益性も小幅改善
MonotaRO(東証プライム:3064)は、工場用間接資材を中心に法人向けECを展開する企業である。2026年12月期第1四半期は、売上高、営業利益、経常利益、純利益がいずれも2桁増となった。
取扱商品は約2,888万点、当日出荷可能な在庫商品は約68.4万点に拡大し、新規顧客は274千口座、登録会員数は11,536千口座となった。法人向けの間接資材調達では、品ぞろえ、在庫、配送、検索性が競争力に直結しやすく、同社の成長は日本企業の業務効率化やBtoB取引のデジタル化とも重なる。
市場評価:市場ニュースでは、1〜3月期の経常利益が前年同期比21.6%増となり、上期計画に対する進捗率は50.8%と、5年平均の50.6%とほぼ同水準だったと整理されている。また、売上営業利益率は前年同期の13.6%から13.8%へ小幅に上昇した。
通期予想は、売上高3,813億79百万円、営業利益530億69百万円、純利益361億80百万円で、いずれも増加を見込む。成長率の持続と、物流・在庫拡充に伴うコストを吸収しながら利益率を維持できるかが今後の焦点となる。
協和キリン|グローバル戦略品が伸びる一方、開発中止の影響も織り込む
協和キリン(東証プライム:4151)は、腎、免疫・アレルギー、中枢神経、がんなどを重点領域とする医薬品企業である。2026年12月期第1四半期は、北米とEMEAを中心にグローバル戦略品が伸び、売上収益、コア営業利益、純利益が大きく増加した。
製品別では、Crysvitaが457億円、Poteligeoが121億円、フォゼベルが19億円、ダーブロックが36億円だった。地域別ではEMEAが231億円、その他が329億円となり、海外事業の伸びが業績を支えた。
特殊要因:ロカチンリマブの臨床試験プログラム中止は、研究開発ポートフォリオに関わる重要な材料である。同社は2026年3月に、ロカチンリマブに関するすべての臨床試験を中止すると発表している。
会社資料の説明:決算説明資料では、臨床試験中止により研究開発費が減少するためコア営業利益は上方修正する一方、クロージングコストなどにより当期利益は変更しないと説明している。
医薬品企業の場合、短期的な利益改善が研究開発費の減少によって生じることがある。そのため、今回の利益増加は評価材料である一方、中長期では次の成長薬候補やグローバル戦略品の伸びがより重要になる。
横河電機|増収ながら小幅減益、株主還元を強化
横河電機(東証プライム:6841)は、制御システムや計測機器を中心に、エネルギー、化学、素材、製造業向けの自動化・計測ソリューションを展開する企業である。2026年3月期は売上高が7.5%増となった一方、営業利益は1.2%減、経常利益は1.3%減となった。
主力の制御事業は売上高5,655億23百万円、営業利益751億55百万円となり、引き続き業績の中心を担っている。測定器事業は売上高340億6百万円、営業利益77億92百万円だった。売上高の増加に対して営業利益が伸びなかった点は、採算性や案件構成を見るうえでの焦点となる。
一方で、2027年3月期は売上高6,150億円、営業利益850億円、純利益585億円を見込む。さらに、2026年5月7日に900万株・300億円を上限とする自己株式取得を決議した。会社側は、株主還元の充実、資本効率の向上、機動的な資本政策を目的として掲げている。
ノジマ|過去最高業績と日立家電事業取得が焦点
ノジマ(東証プライム:7419)は、家電量販、キャリアショップ、インターネット、海外、メディアなどを展開する小売・通信関連企業である。2026年3月期は、売上高、営業利益、経常利益、純利益がいずれも増加し、売上高と営業利益は過去最高となった。
セグメント別では、キャリアショップ運営事業が売上高3,970億31百万円、経常利益269億12百万円と大きく伸びた。デジタル家電専門店運営事業も売上高3,398億63百万円、経常利益205億13百万円と増収増益だった。プロダクト事業は売上高669億88百万円、経常利益49億44百万円と大幅に伸びた一方、インターネット事業、メディア事業、金融事業では利益が減少している。
通期予想では、2027年3月期に売上高1兆円、営業利益590億円、純利益480億円を見込む。さらに、日立グローバルライフソリューションズの家電事業を承継する新会社株式80.1%を取得する方針を示している。
会社発表の要点:日立側の発表では、ノジマが販売・サービスの現場で顧客の声をくみ取り、日立が培ってきた製造技術と組み合わせる狙いが説明されている。
この案件は、ノジマにとって単なる販売網拡大ではなく、メーカー機能を含む家電事業への関与を強める動きといえる。今後は、買収後の収益貢献、在庫・物流・商品開発との連携、海外家電事業との関係が注目される。
長瀬産業|生活関連と電子・エネルギーが利益を押し上げる
長瀬産業(東証プライム:8012)は、化学品、電子材料、食品素材、モビリティ関連などを扱う専門商社である。2026年3月期は、売上高の伸びは2.9%増にとどまったが、営業利益は14.5%増、純利益は29.8%増となり、利益面の改善が目立った。
セグメント別では、電子・エネルギーが売上高1,728億91百万円、営業利益148億59百万円と伸びた。生活関連も売上高3,092億7百万円、営業利益98億32百万円と大幅増益となった。一方、モビリティは営業利益が10.7%減少しており、事業ごとの強弱は分かれている。
会社資料の説明:会社資料では、生活関連におけるPrinovaグループの製造業回復、ナガセヴィータの利益率改善、電子・エネルギーにおけるナガセケムテックスの変性エポキシ樹脂の販売増加などが売上総利益の増加要因として示されている。また、短信では、為替が円高に推移したものの、売上総利益の増加や一部製造子会社の収益性向上により、すべての段階利益で増益となったと説明されている。
2027年3月期は売上高1兆円、営業利益450億円、純利益345億円を見込む。2026年4月1日付で1株につき4株の株式分割を実施し、2027年3月期から報告セグメントを再編する点も、今後の業績比較では意識される。
経済テーマ別に読む今回の決算
今回の決算で最も分かりやすく表れた外部環境は、米国金利の影響である。住友林業は米国住宅ローン金利の高止まりによって海外住宅事業の利益が落ち込んだ。米国住宅市場は、住宅不足という構造的な需要がある一方、金利が高い局面では購入者の負担が増え、受注や販売戸数に影響しやすい。
一方、国内の法人需要や業務効率化需要は、MonotaROの成長に表れている。取扱商品数、在庫商品、新規顧客、登録会員数の拡大は、BtoB ECが企業の購買行動に浸透していることを示す。小売・通信では、ノジマが家電、通信、インターネット、海外を組み合わせて増収増益となったが、事業ごとの利益の強弱も明確だった。
半導体・電子材料関連では、味の素と長瀬産業が注目される。味の素はヘルスケア等の中で電子材料が好調だった。長瀬産業も電子・エネルギー分野で利益を伸ばし、半導体材料や電子部材の需要が化学品・素材企業の収益に影響していることがうかがえる。
医薬品では、協和キリンの決算が示すように、グローバル戦略品の伸びと研究開発費の変動が利益に大きく影響する。研究開発費の減少は短期利益を押し上げるが、臨床試験中止を伴う場合には、中長期の成長パイプラインをあわせて見る必要がある。
株主還元も今回の重要テーマである。味の素は2027年3月期の年間配当を50円とし、前期から増配を見込む。横河電機は年間配当予想を92円とし、300億円を上限とする自己株式取得を決議した。長瀬産業は株式分割後ベースで年間27円の配当を見込む。ノジマは株式分割の影響により配当比較には注意が必要だが、通期業績予想では増益を見込んでいる。
まとめ|増益の中身を見極める決算シーズンに
2026年5月7日発表分の日本企業決算では、増収増益の企業が多かった一方で、利益の中身は一様ではなかった。住友林業は米国住宅市場の金利影響を受け、売上増でも減益となった。味の素は食品と電子材料が伸びた一方、純利益の大幅増には固定資産売却益という一時要因が含まれる。MonotaROはBtoB EC需要を背景に安定した成長を示し、協和キリンはグローバル戦略品と研究開発費の変動が利益を押し上げた。
横河電機は増収ながら営業利益が小幅減となったが、自己株式取得と増配で株主還元を強めた。ノジマは過去最高業績に加え、日立家電事業取得という大型案件が今後の焦点となる。長瀬産業は生活関連と電子・エネルギーの改善により、売上高の伸び以上に利益が拡大した。
今回の決算からは、日本企業の業績が、国内需要だけでなく、米国金利、為替、半導体・電子材料、医薬品開発、家電再編、株主還元といった複数のテーマに左右されていることが見えてくる。日本株市場を見るうえでは、表面的な増収増益だけでなく、利益の質、一時要因、通期見通し、資本政策をあわせて確認することが重要になる。
本記事は、各社の決算短信・決算説明資料、会社発表資料、報道内容をもとに、日本企業の業績と市場テーマを整理したものです。個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

