
物価高が続くなかでも、ローソンでは130円台の低価格サワーと600円台の高価格ハイボールを同時に強化する動きが出ている。2026年4月21日から順次発売する計13品では、高付加価値の酒類売り場を従来の約2倍に広げた。一方、セブン&アイ・ホールディングス(3382)傘下のイトーヨーカ堂は、低価格PB「セブン・ザ・プライス」を2026年度中に2025年度比で約3割増の約400アイテム規模へ拡充する方針を打ち出している。
この組み合わせが映すのは、消費が一様に弱っている姿ではない。安さを重視する買い物と、理由のある高付加価値商品への支出が同時に強まる「消費の二極化」だ。物価高の長期化で、家計は支出を減らすというより、どこに使うかをより厳しく選ぶようになっている。
実質消費は弱いまま
総務省の家計調査では、2026年2月の二人以上世帯の消費支出は前年同月比で実質1.8%減となり、3か月連続の実質減少だった。家計全体の支出余力が強いとは言いにくい。
それでも、すべての支出が同じように削られているわけではない。日銀の「生活意識に関するアンケート調査」(2026年3月調査)では、1年後に物価が上がるとみる人が83.7%に上った。物価上昇が続くとの見方が広がるなかで、日々の買い物では「何を削り、何を残すか」の選別が強まりやすい。
小売各社は両端を取りにいく
ローソンの酒類戦略は、その変化を分かりやすく示している。4月21日から順次投入する低価格帯の「明日のサワー」シリーズは350ミリリットル缶で税込130円、500ミリリットル缶で同185円だ。これに加えて、4月28日以降は税込660円の「嘉之助 シングルモルトハイボール」など高付加価値商品も展開し、売り場自体を拡大する。
一方、イトーヨーカ堂が強化するのは低価格側だ。3月31日公表のリリースでは、低価格PB「セブン・ザ・プライス」を2026年度中に約400アイテム規模へ広げる方針を示した。物価高で節約需要が根強いなか、日常使いの商品では価格訴求がより重要になっていることが分かる。
中間価格帯が選ばれにくい
ニッセイ基礎研究所の久我尚子上席研究員は、物価高に対して賃金の伸びが追いつかず、消費者がお金の使い方に慎重になっていると指摘する。そのうえで、中間の価格帯の商品はプラスアルファの価値を感じにくい一方、非日常の付加価値がある高いものは手に取られやすいとしている。 出典:NHK記事
企業の動きとこの見立てを重ねると、いま相対的に選ばれにくくなっているのは中間価格帯だと読める。安さが明確な商品は節約需要に応えやすい。逆に、高くても品質や体験価値がはっきりしていれば、満足感の高い支出として選ばれやすい。そのどちらでもない商品は、家計の選別が厳しくなる局面で埋もれやすい。
物価高は「消費減」だけでは説明しきれない
「物価高で消費が落ちた」という見方は間違いではないが、それだけでは足りない。実質消費は弱い一方で、小売各社は高価格帯と低価格帯の両方を広げている。これは、家計が支出を全面的に絞っているのではなく、支出先の優先順位を組み替えていることを示す。
今後の消費を読むうえで重要なのは、家計がいくら使うかだけではなく、何に理由を見いだしてお金を使うかだ。物価高の時代に選ばれやすい商品は、「本当に安い」か「高くても買う理由が明確か」のどちらかになりやすい。今回の酒売り場の変化は、その現実を象徴している。
(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

