ルフトハンザ航空グループは2026年4月、ことし10月までに短距離便を中心に計2万便を減らすと発表した。イラン情勢を受けてジェット燃料価格が一部市場で大きく上昇し、燃料の調達や供給の見通しが立てにくくなっているためだ。
4月20日から5月末までは、フランクフルトを含む欧州域内の一部路線で1日あたり120便の運航を止める。会社側は、この減便で約4万トンのジェット燃料を節約できるとしている。北欧のスカンジナビア航空(SAS)も4月に少なくとも1000便を減らす見通しを示しており、欧州では燃料高を受けた運航見直しが広がり始めている。
何が起きているのか
今回のポイントは、航空会社が燃料価格の上昇だけでなく、先行きの不確実性にも対応し始めたことにある。AP通信などによると、ジェット燃料価格は2月下旬以降に一部市場で2倍超へ上昇した。ルフトハンザは「今後数週間の燃料供給は確保している」としつつ、中期的な運航計画の見直しも進めるとしている。
航空会社は数か月単位でダイヤを組むため、燃料価格が大きく振れたり、供給不安が続いたりすると、採算計画を組みにくくなる。今回の減便は、足元のコスト増への対応であると同時に、先行きの読みにくさに備える動きでもある。
なぜイラン情勢が欧州の航空便に響くのか
欧州の航空便が中東情勢の影響を受けるのは、航空機が使うジェット燃料が原油から精製され、その原油や石油製品の物流が中東の情勢に左右されやすいためだ。とくにホルムズ海峡はエネルギー輸送の要衝で、緊張が高まると原油価格だけでなく、輸送コストや保険料の上昇も意識されやすい。
その結果、航空会社にとっては「いまの価格が高い」という問題だけでは済まない。数週間後、数か月後に必要な燃料をどの水準で確保できるのかが見通しにくくなり、運航計画そのものを慎重に見直す圧力が強まる。
なぜ短距離便から減りやすいのか
減便が短距離便に集中しやすいのには、航空業界の収益構造がある。一般に短距離便は長距離便より1便あたりの収益余地が小さく、離着陸回数も多いため、燃料高の影響を受けやすい。欧州域内はLCCとの競争も激しく、運賃へそのまま転嫁しにくい。
もちろん、個別便を止める最終判断は各社のネットワーク戦略による。ただ、燃料高の局面で収益性の低い短距離便から見直しが入りやすい構図は理解しやすい。ルフトハンザの今回の発表も、そうした業界事情と重なる。
旅行者や企業への影響
利用者にとっての影響は、まず選べる便が減ることだ。直行便や乗り継ぎの選択肢が狭まり、繁忙期には予約の取りづらさや運賃上昇につながりやすい。外電では、減便と並行して運賃や付帯料金への転嫁が広がる可能性も報じられている。
IATAの2026年見通しでは、燃料費は航空会社の総営業費用の25.7%を占める見込みだ。もともと利益率が厚くない業界だけに、燃料高が長引けば、減便と価格転嫁の両方が続く可能性がある。旅行者だけでなく、出張費を抱える企業にとっても無視しにくい動きだ。
見るべき論点は「価格」だけではない
今回のニュースは、単に「燃料が高くなったから便が減った」と受け取るだけでは十分ではない。航空会社が警戒しているのは、価格の高さそのものに加えて、供給の安定性と見通しの立てにくさだ。
中東情勢が長引けば、欧州の航空会社は燃料コストだけでなく、運航計画や価格設定も何度も調整する必要が出てくる。今回のルフトハンザの減便は、その変化がすでに夏場のダイヤに及び始めたことを示している。
(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

