2026年4月21日、米上院軍事委員会は2027会計年度の国防予算関連公聴会を開き、米インド太平洋軍司令官のサミュエル・J・パパロ・ジュニア海軍大将が証言した。パパロ司令官は、中国海軍の拡大を念頭に、揚陸艦、駆逐艦、攻撃型潜水艦が不足していると訴えた。単なる艦隊論ではない。米国が西太平洋でどこまで即応戦力を維持できるのか、同盟国とどう穴を埋めるのかという論点が、議会の場で改めて可視化された。
公聴会で何が示されたのか
パパロ司令官が口頭で強調したのは海上戦力の不足だ。揚陸艦は海兵隊の展開、駆逐艦は防空や対艦、攻撃型潜水艦は秘匿性の高い打撃という役割を担う。これらが足りないという訴えは、台湾海峡や南シナ海を含む広い作戦空間で、米軍の運用余力に懸念があることを示している。あわせて同氏は、中型・大型無人艇、長射程ミサイル、低コスト無人機、機雷の増強も必要だと述べ、従来型艦艇だけでは埋まらないギャップを補う発想もにじませた。
一方、提出した書面証言では、中国の台湾周辺での行動について、単なる演習ではなく「武力による統一を想定したリハーサルでもある」と位置づけた。口頭発言と書面証言を分けてみると、米軍の懸念は「足りない艦隊」と「高まる台湾周辺リスク」の二つに整理できる。
数の差は広がるが単純比較では足りない
米議会調査局(CRS)が引用する数字では、中国海軍の battle force ship ベースの規模は2025年に395隻、2030年に435隻へ増える見通しとされる。これに対し米海軍は2025年初時点で296隻、2030会計年度末でも294隻程度との想定が示されている。数の上では中国側が上回る構図だ。
ただし、この比較だけで優劣を決めるのは早い。艦の大型化、練度、補給、同盟国基地網、潜水艦や航空戦力との組み合わせまで見なければ実力は測れない。それでも米軍トップが議会の場で不足を訴えたこと自体が、数量面の圧力を軽視できなくなっていることを物語る。
問われているのは米軍単独の力だけではない
パパロ司令官は同じ公聴会で、台湾が防衛予算を通して自助努力を示す重要性にも言及したとロイター通信が報じた。米国が中国抑止を担うとしても、台湾自身の備えや同盟国との役割分担が前提になりつつある。
その文脈で見ると、日米比の連携強化も重要だ。4月20日に始まった比米合同演習バリカタンには日本とカナダが新たにフル参加し、対艦ミサイルや統合防空を含む訓練が拡大した。米軍は艦艇数の不足を、同盟網の相互運用性や分散運用で補おうとしていると読める。
艦艇不足の背景にある産業基盤の問題
今回の論点は、単に「何隻足りないか」では終わらない。艦艇を増やすには造船能力、修理能力、弾薬やミサイルの生産能力がいる。米国はウクライナ支援や中東対応も抱えており、インド太平洋に十分な戦力を張り付け続けるには産業基盤の強化が欠かせない。
だからこそ、今回の証言は中国海軍への警戒だけでなく、米国自身の供給力と同盟運用をどう立て直すかという宿題を突きつけたといえる。中国の艦艇数が増える中で問われているのは、米軍が何を持っているかだけではない。それをいつ、どこに、どれだけ継続して出せるのかという持久力だ。
(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

