国土交通省は2026年4月14日、全日本空輸(ANA)に対して業務改善勧告を出した。2025年11月に発生した2件の不適切な整備対応を受けた措置で、国交省はANAの安全管理システムが再発防止の面で機能していないと判断した。今回問われているのは、単発の整備ミスそのものよりも、社内規程違反や記録の不備を組織として止められなかった管理体制である。
何が起きたのか――2025年11月の2件
1件目は2025年11月27日、大阪国際空港(伊丹)で起きた。整備士がパーキングブレーキバルブ交換後の作動油補給で、社内規程で使用を禁止していたオイルを使った事案である。国交省によると、この事案は直ちに耐空性に問題が生じるものではなかったが、整備士は事実と異なる整備記録を作成し、さらに後日の作業も記録に残さなかった。
2件目は2025年11月13日、成田国際空港での貨物機の事案である。貨物室内の積荷を固定するレールの損傷について報告を受けた整備士が、整備規程を確認しないまま軽微な不具合と判断し、必要な修理をしないまま運航させた。
国交省はこれらを、航空法に基づいて認可された業務規程・整備規程への違反と位置づけた。とくに大阪の事案では、虚偽記録と未記録が重なった点を重く見ている。
なぜ虚偽記録が重く問われるのか
航空機の整備は、部品の状態だけではなく、何を、いつ、誰が、どの手順で実施したかを正確に追えることを前提に成り立つ。記録が正確でなければ、後から不具合が見つかった際に原因の追跡も再点検も難しくなる。
今回の伊丹の事案では、国交省は直ちに耐空性に問題が生じる事案ではないとしている。一方で、ANAが整備品質向上の観点から社内規程で使用を禁止していたオイルを使い、その後に虚偽記録や未記録があったことを問題視した。結果的に重大事故に至らなかったとしても、手順違反と記録の不備が重なれば、安全管理の前提そのものが揺らぐ。国交省が安全管理システムの不全に踏み込んだのはこのためと読める。
2024年の厳重注意から何が変わらなかったのか
今回の勧告の重みを考えるうえで見逃せないのが、ANAがすでに2024年10月25日にも国交省航空局から厳重注意を受けていた点である。ANAの安全情報ページによると、福島空港で右主脚タイヤ圧の低下が確認されながら必要な整備措置を行わずに出発させ、その後の社内報告も遅れたとして、安全管理システムが十分に機能していないと指摘された。
それでも2025年11月に再び整備規程不遵守が起き、今回は業務改善勧告に加えて安全統括管理者への警告も出された。ここで問われているのは、現場個人の判断ミスだけではなく、安全管理体制を経営レベルで立て直せるかどうかである。
焦点は5月15日までの再発防止策
国交省はANAに対し、2026年5月15日までに再発防止策を報告するよう求めた。今後の焦点は、その内容が注意喚起や研修強化にとどまらず、組織の仕組みをどこまで変えられるかにある。
具体的には、現場からの報告ルートを実効的に見直せるか、整備記録の確認体制を強化できるか、管理職の監督責任を明確にできるか、安全統括管理者が現場の問題を早期に把握して是正につなげられるかが問われる。再発防止策が表面的な対応にとどまれば、監督強化や追加措置につながる可能性もある。
航空安全を支える見えない基盤
航空安全は、機体そのものの健全性だけで支えられているわけではない。異常や逸脱を記録し、組織に報告し、是正につなげる仕組みがあってこそ、大きな事故を未然に防げる。
今回の業務改善勧告は、整備現場の一件一件よりも、その背後にある報告の文化と安全管理システムの実効性を問うものだ。ANAが5月15日までに示す再発防止策は、同社がこの問題を本当に構造問題として受け止めているかを測る試金石になる。
(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

