老齢厚生年金とは?老齢基礎年金との違いと受給要件を解説

老後の年金というと、まず老齢基礎年金を思い浮かべる人が多い。しかし、会社員や公務員として厚生年金に加入してきた人は、老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金も受け取る。老齢厚生年金は、加入期間や現役時代の報酬に応じて金額が変わるため、老齢基礎年金より仕組みがやや複雑だ。65歳前後では「特別支給の老齢厚生年金」「報酬比例部分」「定額部分」「経過的加算」といった言葉が出てきて、分かりにくく感じる人も多い。この記事では、老齢厚生年金の基本を、老齢基礎年金との違いから順番に整理する。

目次

老齢厚生年金とは何か

厚生年金加入者が受け取る上乗せの年金

老齢厚生年金とは、厚生年金保険に加入していた人が、老齢基礎年金に上乗せして受け取る年金だ。主な対象は、会社員や公務員として働いてきた人になる。

日本の公的年金制度は「二階建て」と説明されることが多い。一階部分が老齢基礎年金で、国民年金の被保険者であれば原則として関係する。二階部分が老齢厚生年金で、厚生年金保険に加入していた人だけが受け取れる上乗せの給付になる。

会社員や公務員は老齢基礎年金とあわせて受け取る

自営業者や農業従事者など、国民年金のみに加入してきた人が老後に受け取るのは、基本的に老齢基礎年金だ。一方、会社員や公務員など厚生年金保険の加入歴がある人は、老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方を受け取る。

厚生年金保険に加入している間は、老齢基礎年金の土台になる国民年金にも同時に加入している扱いになる。このため、厚生年金加入者は一階と二階の両方に関わる。

老齢基礎年金との違い

違いは対象者と金額の決まり方にある

老齢基礎年金は、国民年金の加入形態を問わず関係する年金だ。会社員、自営業者、専業主婦(夫)なども対象になりうる。

一方、老齢厚生年金は、厚生年金保険の加入歴がある人だけに関係する。厚生年金保険に一度も加入していない場合、老齢厚生年金は受け取れない。

金額の決まり方にも違いがある。老齢基礎年金は、主に国民年金の加入期間や保険料納付済期間などをもとに決まる。これに対し、老齢厚生年金は、厚生年金保険の加入期間と、その間の報酬に応じて決まる。同じ加入期間でも、現役時代の報酬が高い人ほど年金額は大きくなりやすい。

老齢厚生年金は「上乗せ」と捉えると理解しやすい

老齢厚生年金を理解するときは、「厚生年金加入者が老齢基礎年金に上乗せして受け取る、報酬比例の年金」と押さえると分かりやすい。この骨格を先に押さえておくと、あとから出てくる専門用語も整理しやすくなる。

65歳以降の老齢厚生年金の基本

65歳以降は老齢基礎年金とあわせて受け取る

厚生年金加入歴のある人は、受給要件を満たせば65歳から老齢基礎年金と老齢厚生年金をあわせて受け取る。この65歳からの給付が、制度上の「本来の老齢厚生年金」だ。

65歳以降に受け取る年金は、おおむね次のように整理できる。

  • 一階部分:老齢基礎年金
  • 二階部分:老齢厚生年金

この二つが合算されて支給されるため、厚生年金加入歴がある人は、老齢基礎年金のみの人より年金総額が大きくなることが一般的だ。

金額は加入期間と報酬に応じて決まる

老齢厚生年金の中心になるのは「報酬比例部分」だ。これは、現役時代の報酬と厚生年金の加入期間に基づいて計算される部分で、名前の通り報酬に比例して金額が変わる。

そのため、厚生年金への加入期間が長い人や、現役時代の報酬が高かった人ほど、老齢厚生年金の金額も高くなる傾向がある。一般読者にとっては、細かな計算式を覚えるよりも「加入期間と報酬で決まる年金」と理解しておけば十分だ。

特別支給の老齢厚生年金とは何か

制度移行期に設けられた経過措置

老齢厚生年金の受給開始年齢は、昭和60年の法律改正を起点に、その後の制度改正を経ながら段階的に65歳へ引き上げられてきた。その移行期間に生まれた人が、60歳台前半でも一定の給付を受けられるように設けられたのが「特別支給の老齢厚生年金」だ。

これはあくまで経過措置であり、すべての人に関係する制度ではない。老齢厚生年金の本来の姿は、65歳から受け取る形だ。

対象になるのは限られた生年月日の人

特別支給の老齢厚生年金を受け取れるのは、一定の生年月日の範囲に当てはまる人に限られる。2026年4月13日時点では、日本年金機構の整理上、対象は男性が昭和36年4月1日以前生まれ、女性が昭和41年4月1日以前生まれだ。

支給開始年齢は生年月日ごとに細かく決まっており、60歳から64歳のどこで受け取り始めるかは人によって異なる。男性分はすでに対象が出尽くしており、女性も昭和41年4月1日以前生まれが最後の世代になる。

在職中は支給停止される場合がある

特別支給の老齢厚生年金は、対象者であっても在職中の賃金や賞与の状況によっては支給停止される場合がある。自分が対象かどうか、実際にいくら受け取れるかは、年金事務所やねんきん定期便、日本年金機構の案内で確認するのが確実だ。

老齢厚生年金の受給要件

65歳からの老齢厚生年金の受給要件

65歳から老齢厚生年金を受け取るには、主に二つの条件が必要だ。

一つ目は、老齢基礎年金の受給資格期間を満たしていることだ。現在は、保険料納付済期間や免除期間などを合算して原則10年以上あることが受給資格になる。

二つ目は、厚生年金の加入期間があることだ。老齢厚生年金は、老齢基礎年金の受給資格を土台に、その上に厚生年金加入歴が乗る形で成り立っている。

特別支給の老齢厚生年金は見方が少し異なる

特別支給の老齢厚生年金では、上記に加えて、一定の厚生年金保険の加入期間が必要になる。一般に、1年以上の被保険者期間が要件として出てくるほか、支給開始年齢に達していることも条件になる。

ただし、細かな扱いは生年月日や加入歴によって変わるため、個別確認が欠かせない。

報酬比例部分・定額部分・経過的加算の考え方

老齢厚生年金を調べると、「報酬比例部分」「定額部分」「経過的加算」という三つの言葉が出てくる。難しそうに見えるが、意味を順番に整理すれば理解しやすい。

報酬比例部分

報酬比例部分は、現役時代の報酬と厚生年金保険の加入期間に基づいて計算される部分だ。65歳以降の老齢厚生年金は、基本的にこの報酬比例部分を中心に構成される。

定額部分

定額部分は、主に特別支給の老齢厚生年金の文脈で出てくる言葉だ。かつては報酬比例部分に加えて、加入期間に応じた定額部分も含む形で支給されていたが、制度改正で支給開始年齢が段階的に引き上げられてきた。現在では、60歳台前半に定額部分を受け取れる人は限られている。

経過的加算

経過的加算は、65歳以降の年金額が、過去の制度とのつながりの中で不利になりすぎないよう調整する仕組みだ。定額部分と老齢基礎年金の差を補うための調整項目と理解しておくと分かりやすい。

加給年金とは何か

老齢厚生年金に関連する上乗せ給付

加給年金は、老齢厚生年金に関連して加算されることがある給付だ。家族手当に似た性格で語られることもあるが、実際には厚生年金の加入期間や家族の年齢など、いくつもの条件がある。

配偶者や子がいる場合に加算されることがある

加給年金は、本人に原則20年以上の厚生年金加入期間があり、65歳で老齢厚生年金を受け取り始める時点で、生計を維持している配偶者や子がいる場合に加算されることがある。

対象になる家族にも条件がある。配偶者は原則65歳未満、子は18歳到達年度の末日まで、または1級・2級の障害がある20歳未満であることが目安になる。

配偶者に受給権があると支給停止される場合がある

加給年金で特に注意したいのは、配偶者側の年金との関係だ。配偶者が一定の老齢厚生年金や退職共済年金の受給権を持つとき、または障害年金を受けられる間は、配偶者加給年金額が支給停止される場合がある。2022年4月以降は、実際に受け取っていなくても、受給権があることで支給停止になるケースがあるため注意が必要だ。

老齢厚生年金を理解するときに押さえたいポイント

老齢基礎年金の上に乗る二階部分と考える

老齢厚生年金は、老齢基礎年金に上乗せされる二階部分の年金だ。まずこの位置づけを押さえると、制度全体が見えやすくなる。

65歳前後は経過措置の有無で見え方が変わる

60歳台前半の特別支給の老齢厚生年金と、65歳以降の本来の老齢厚生年金は、名前は似ていても位置づけが異なる。前者は経過措置、後者が基本形だ。

詳細は個別テーマで確認すると理解しやすい

老齢厚生年金には、加給年金、在職老齢年金、繰上げ、繰下げなど関連する仕組みが多い。全体像を押さえたうえで、必要なテーマを個別に確認する読み方が理解しやすい。

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(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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