2026年4月1日から、日本の税制が複数の点で変わった。「自動車と燃料まわりの負担が下がる」という話と、「防衛費の財源確保のために増税が始まる」という話が同時に進んでいる。どちらも生活や経営に関係するが、「4月から何がどう変わるのか」が非常に分かりにくい。この記事では、変わったこと・変わらないこと・これから変わることを整理する。
「軽油が安くなる」という話の実態
今回の税制改正で廃止されたものの一つが、軽油引取税の暫定税率だ。
軽油引取税とは、軽油にかかる地方税だ。この税には本来の税率に加え、長年「当分の間」として上乗せされてきた部分があり、1リットルあたり17.1円が該当する。この上乗せ分が今回廃止された。
「17円以上が廃止されるなら、軽油の小売価格も大きく下がるはず」と思うかもしれないが、話はそう単純ではない。
政府は2025年後半からガソリン・軽油の補助金を段階的に拡大し、税率廃止の影響が店頭価格に一気に出ないよう、あらかじめ価格を引き下げてきた。資源エネルギー庁は「補助金による事前調整で価格は大きく変わらない見込み」と説明しており、廃止当日に急激な値下がりが起きる仕組みにはなっていない。
制度の上では「減税」だが、日々のガソリンスタンドの表示価格には反映されにくい——という点は理解しておいた方がよい。
車を買うときの税が廃止に
自動車を購入したときにかかっていた「環境性能割」という税制も、2026年3月31日をもって廃止された。
環境性能割とは、車の燃費性能に応じて購入時にかかる税だ。エコカーほど税率が低く、燃費の悪い車ほど高くなる仕組みで、一種の購入コストとして認識されてきた。廃止により、自動車購入時の負担が軽減されることが見込まれる。
国土交通省は廃止の背景として、自動車産業への影響緩和と国内市場の活性化、手続きの簡素化を挙げている。車の購入を検討している人には、税制上の追い風になる変化だ。
同時に始まる「防衛増税」——ただし段階的に
軽減策と同時に、防衛費増額の財源を確保するための増税も始まっている。こちらは企業・たばこ・所得税という複数の経路を通じて、段階的に実施される。
法人税に4%の付加税(2026年4月〜)
2026年4月から始まるのが「防衛特別法人税」だ。法人税そのものの税率を上げるのではなく、一定の税額控除を適用しないで計算した法人税額から年500万円を差し引いた額に4%を乗じる付加税として設計されている。この控除があることで、中小企業には一定の配慮がある形になっている。
適用対象は2026年4月1日以後に開始する事業年度からであるため、企業によって実際に影響が出る時期には差がある。3月決算法人であれば新年度(2026年4月〜)から対象になりやすいが、決算期が異なる企業は時期がずれる。
たばこ税——2026年は加熱式の見直し、2027年以降に本格値上げ
たばこ税の改正はやや分かりにくいが、二段構えだ。
まず2026年4月と10月の2回、加熱式たばこの課税方式が見直される。加熱式たばこは紙巻きより税負担が低かったが、その差を段階的に縮める措置だ。
次に2027年4月・2028年4月・2029年4月の3年間にわたり、国のたばこ税率が1本あたり0.5円ずつ3回引き上げられる。3年合計で1本あたり1.5円上がる計算だ。
つまり2026年は「加熱式優遇の修正」が先行し、全体の値上げは2027年以降になる。
所得税——実際にかかるのは2027年から
「防衛特別所得税」として、所得税額に1%の付加税が乗ることになっているが、これが始まるのは2027年1月以後だ。4月1日時点ではまだかかっていない。
また、現在課されている「復興特別所得税」(税率2.1%)は同時に1.1%へ引き下げられる。1%を新たに加え、1%を引く形になるため、政府は「当面の所得税の負担額は変わらない」と説明している。ただし、復興特別所得税の課税期間は延長される。
何が「今日から」で、何が「これから」か
今回の税制改正を理解するうえで、最も重要なのが時間軸の整理だ。
| 変更内容 | いつから |
|---|---|
| 軽油引取税の暫定税率廃止 | 2026年4月1日〜 |
| 環境性能割の廃止 | 2026年3月31日で廃止済み |
| 防衛特別法人税(4%付加税) | 2026年4月1日以後開始の事業年度〜 |
| 加熱式たばこ課税方式見直し | 2026年4月・10月の2段階 |
| たばこ税率引き上げ(1本0.5円×3回) | 2027年・2028年・2029年各4月 |
| 防衛特別所得税(1%付加税) | 2027年1月〜 |
報道の見出しだけ読むと「4月からすべてが一斉に変わる」ように見えるが、実際は時期がバラバラだ。特に所得税への影響は来年以降の話であり、今すぐ手取りが変わるわけではない。
この税制改正が意味すること
今回の一連の改正を大きく見ると、「車と燃料の負担を下げて国内消費と産業を支える」動きと、「防衛費増額の財源を企業・たばこ・所得税から段階的に調達する」動きが、同じパッケージに収まっている。
Reuters(ロイター通信)はこの増税を、日本が防衛費をGDP比2%へ拡大する方針に伴う財源確保策として位置づけており、防衛政策と税制の連動を国際的な注目点として報じている。
家計の観点では、今すぐ財布への影響が大きく出るわけではない。軽油価格も手取りも、当面は補助金調整や相殺措置によって見かけ上の変化を抑える設計になっている。ただし、法人税の負担増は今年度から企業に実際にかかってくる。企業の負担増を通じて、収益や価格設定に影響する可能性がある。
(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

