【4月28日発表】主要企業決算まとめ|信越化学・日本取引所G・JR東海の2025年度本決算

2026年4月28日、信越化学工業・日本取引所グループ・東海旅客鉄道(JR東海)が2026年3月期(2025年度)の通期決算を発表しました。半導体市場の二極化、株式市場の活況、リニア中央新幹線への巨額投資と来期減益予想——各社の決算から産業構造の変化を読み解きます。

目次

決算ポイント(一覧表)

企業名証券コード会計基準売上高(収益)営業利益純利益前期比(営業利益)
信越化学工業6857日本基準2兆5,739億円6,352億円4,744億円△14.4%
日本取引所グループ8697IFRS1,987億円1,162億円791億円+29.0%
東海旅客鉄道(JR東海)9022日本基準2兆62億円8,301億円5,528億円+18.1%

信越化学工業(証券コード:4063)

業績サマリー

2026年3月期の連結業績は、売上高2兆5,739億円(前期比+0.5%)。電子材料事業がAI・データセンター需要を背景に増収増益となった一方、塩化ビニル(PVC)を含む生活環境基盤材料事業が市況悪化で大幅減益となり、営業利益は6,352億円(同△14.4%)と減益に転じました。経常利益は7,082億円(同△13.7%)、親会社株主帰属純利益は4,744億円(同△11.2%)。

項目2026年3月期前期比
売上高2兆5,739億円+0.5%
営業利益6,352億円△14.4%
経常利益7,082億円△13.7%
純利益(親会社帰属)4,744億円△11.2%
営業利益率24.7%△約4pt

セグメント別業績

セグメント売上高前期比営業利益前期比
電子材料1兆157億円+9.0%3,445億円+6.0%
生活環境基盤材料9,813億円△6.0%1,648億円△43.0%
機能材料4,408億円△2.0%1,009億円+1.0%
加工・商事1,359億円△1.0%273億円△5.0%

電子材料セグメントは半導体関連需要(フォトレジスト、CMP材料、高機能フィルム等)が好調で2桁近い増収を達成。生活環境基盤材料(塩ビ・苛性ソーダ等)は世界的な過剰供給と価格低迷により大幅な減益となりました。

財務指標

項目金額
設備投資3,397億円
減価償却費2,429億円
研究開発費778億円

キャッシュフロー

項目金額
営業キャッシュフロー+7,126億円
投資キャッシュフロー△5,448億円
財務キャッシュフロー△5,048億円
期末現預金残高5,620億円

株主還元

1株当たり配当金は年間106円(中間53円+期末53円)で前期と同額を維持。当期は2,500億円の自己株式を取得しました。さらに、今後5年で5,000億円規模の自己株式取得を実施する方針を表明しています。

来期予想

2027年3月期の業績予想は「未定」としています。中東情勢など経営環境の先行き不透明感を理由として、一旦数値予想の開示を見送りました。設備投資は約3,500億円を計画しています。


日本取引所グループ(証券コード:8697)

業績サマリー

2026年3月期は、日米の株式市場活況を背景に全収益区分が増収となり、営業収益1,987億円(前期比+22.5%)、営業利益1,162億円(同+29.0%)と大幅な増収増益を達成しました。親会社帰属純利益は791億円(同+29.5%)。IFRS基準、高い営業利益率(58.5%)が特徴です。

項目2026年3月期前期比
営業収益1,987億円+22.5%
営業利益1,162億円+29.0%
税引前利益1,169億円+29.5%
純利益(親会社帰属)791億円+29.5%
営業利益率58.5%

セグメント別業績

日本取引所グループは金融商品取引所事業の単一セグメント。収益の内訳は以下の通りです。

収益区分金額前期比
取引関連収益773億円+20.0%
清算関連収益542億円+57.5%
上場関連収益186億円+7.9%
情報関連収益336億円+5.5%
システム関連収益138億円+4.3%

清算関連収益が前期比+57.5%と最大の伸びを示しました。取引量・証拠金水準の拡大が主因です。

財務指標

当社はインフラ型ビジネスのため設備投資・研究開発費は開示形式が異なります。システム投資を中心に安定的な設備更新を継続しています。

キャッシュフロー

項目金額
営業キャッシュフロー+1,077億円
投資キャッシュフロー△152億円
財務キャッシュフロー△804億円
期末現預金残高1,104億円

株主還元

1株当たり配当金は年間61円(中間25円+期末36円)。配当性向は79.4%と高水準。後発事象として、2026年6月〜10月に上限4,000万株・200億円の自己株式取得を実施予定です。

来期予想

項目2027年3月期予想前期比
営業収益2,050億円+3.2%
営業利益1,150億円△1.0%
純利益(親会社帰属)775億円△2.0%
1株当たり配当61円同額

来期は増収ながら費用増により営業利益が微減を見込んでいます。


東海旅客鉄道(JR東海)(証券コード:9022)

業績サマリー

2026年3月期の連結業績は、東海道新幹線の旅客需要が引き続き回復・拡大し、売上高2兆62億円(前期比+9.5%)、営業利益8,301億円(同+18.1%)、純利益5,528億円(同+20.6%)と大幅な増収増益を達成しました。営業利益率は41.4%(前期比+約3pt)。

項目2026年3月期前期比
売上高2兆62億円+9.5%
営業利益8,301億円+18.1%
経常利益7,809億円+20.3%
純利益(親会社帰属)5,528億円+20.6%
営業利益率41.4%+約3pt

セグメント別業績

セグメント売上高前期比営業利益前期比
運輸業1兆6,539億円+10.1%7,674億円+18.1%
流通業1,830億円+6.8%158億円+1.3%
不動産業957億円+10.4%252億円+10.5%
その他2,919億円244億円+57.0%

東海道新幹線を中心とする運輸業が収益の大半を占め、旅客数・単価ともに改善が続きました。

財務指標

項目金額
有形固定資産取得額(設備投資)4,933億円
減価償却費2,059億円
長期債務(リニア関連含む)4兆7,684億円

中央新幹線(リニア)の総工事費は当初7.04兆円から11.0兆円に増加。財源をJR東海が自己負担する構造は変わらず、長期債務は引き続き高水準で推移しています。

キャッシュフロー

項目金額
営業キャッシュフロー+7,481億円
投資キャッシュフロー△6,214億円
財務キャッシュフロー△1,508億円
期末現預金残高3,705億円

株主還元

1株当たり配当金は年間32円(前期31円から増配)。当期に1,100億円の自己株式を取得済み。後発事象として、2026年5〜7月に上限650万株・200億円の追加自己株式取得を行い、8月に消却する予定です。

来期予想

項目2027年3月期予想前期比
売上高1兆9,930億円△0.7%
営業利益7,020億円△15.4%
純利益(親会社帰属)4,470億円△19.1%

来期は売上横ばいながら費用増加(特にリニア関連工事費)により営業利益・純利益ともに大幅減益を見込みます。1株当たり配当は32円(現期と同額)を予定。


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AI需要と半導体の二極化

信越化学の決算は、半導体需要の「二極化」を鮮明に示しています。AIサーバー向けの高機能半導体(ロジック・HBM)に使われる電子材料は好調な一方、汎用品向けの塩化ビニルや塩素系中間体は世界的な過剰供給で大幅減益となりました。半導体市場全体を一括りにできない構造が、24.7%という高い営業利益率の中に潜む課題として浮かび上がっています。

株式市場の活況が映る取引所収益

日本取引所グループの+29%増益は、2025年度を通じた日本株市場の高水準な売買代金を直接反映しています。特に清算関連収益の+57.5%増は、デリバティブ取引の活発化と証拠金水準の上昇を示しています。市場インフラ事業の収益構造は、株式相場の動向と強く連動しています。

東海道新幹線の底力とリニアのリスク

JR東海の41.4%という営業利益率は、東海道新幹線の圧倒的な収益力を示しています。一方で総工事費が11.0兆円に膨らんだリニア中央新幹線は、長期債務4兆7,684億円として貸借対照表に重くのしかかります。来期の大幅減益予想(営業利益△15.4%)は、この投資フェーズのコスト増が一因です。


まとめ

2026年4月28日発表の3社決算は、それぞれ異なるセクターの「今」を映し出しています。信越化学は電子材料の好調と塩ビ市況悪化が相殺し減益(営業利益6,352億円・△14.4%)、日本取引所グループは株式市場の活況を受け大幅増益(営業利益1,162億円・+29.0%)、JR東海は新幹線需要の拡大で18%増益(営業利益8,301億円)も来期はリニア関連費用増で15%超の減益を見込みます。3社合計の営業利益は1兆5,815億円に上ります。


※本記事の数値は各社決算短信原文に基づきます。投資判断は各自の責任で行ってください。

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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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