日産、営業黒字に上方修正 それでも5500億円赤字が残る理由

日産自動車(東証プライム:7201)が、2026年3月期の業績見通しを上方修正した。本業の損益を示す営業損益は、従来予想の600億円赤字から500億円黒字へ転じる見通しとなった。

数字だけを見ると大きな改善に映る。ただ、今回の上方修正は、想定より円安が進んだことや米国の環境規制関連費用の負担減など、外部要因や一過性要因の寄与が大きい。再建が完了したというより、なお課題を抱えたまま営業黒字を確保する形だ。

目次

何が変わったのか

日産が2026年4月27日に発表した修正内容は、営業損益と最終損益の両方で赤字幅を改善するものだった。

  • 営業損益は、600億円の赤字予想から500億円の黒字予想へ修正
  • 最終損益は、6500億円の赤字予想から5500億円の赤字予想へ修正

営業損益とは、自動車の製造・販売など本業でどれだけ利益が出たかを示す指標である。この数字が赤字から黒字へ1100億円改善したことが、今回の発表で最も目立つ点だ。

一方、最終損益は営業損益に加え、構造改革費用や資産関連の損益、税金などを反映した最終的な損益である。こちらも赤字幅は1000億円縮小する見通しだが、なお5500億円という巨額の赤字が残る。

営業黒字を支えた3つの要因

今回の改善を支えた要因は、主に3つある。

円安の寄与

まず大きいのは、想定より円安が進んだことだ。自動車メーカーは海外で得た売上や利益を円に換算して決算に反映するため、円安は円ベースの収益を押し上げやすい。

ただし、為替は企業努力だけでコントロールできるものではない。円安による押し上げは業績改善の材料ではあるが、販売力そのものの回復とは切り分けて見る必要がある。

米国環境規制関連費用の負担減

もう一つの要因は、米国の温室効果ガス排出規制に関連する費用負担が軽くなったことだ。環境規制に伴う費用の見積もりが改善方向に動けば、損益にもプラスに働く。

この種の改善は、毎期同じように発生するとは限らない。したがって、営業黒字化の中身を見るうえでは、一過性の要素が含まれている点を押さえる必要がある。

コスト削減の進展

経営再建の一環として進めてきたコスト削減も、一定の改善要因となった。固定費や販売費などを抑えられれば、販売が大きく伸びない局面でも損益は改善しやすくなる。

ただ、コスト削減だけで成長軌道を描くことは難しい。再建を持続的なものにするには、主要市場での販売台数と収益力をどう戻すかが次の焦点となる。

営業黒字でも再建完了とは言えない

今回の上方修正は前向きな材料である。ただし、「営業黒字化=日産の回復完了」と見るのは早い。

日産は、主要市場と位置づける日本、米国、中国で販売台数と収益力の回復を課題としてきた。今回の営業黒字は、販売台数の本格回復による改善とはまだ読み切れない。円安や費用負担減といった要因に支えられた面が大きいからだ。

また、最終損益が5500億円の赤字にとどまる背景には、経営再建に伴う構造改革費用の重さがある。営業段階で黒字を確保しても、再建に必要な費用が最終損益を大きく圧迫している。

5月13日の決算発表で何を見るべきか

日産は2026年5月13日に通期決算を正式に発表する予定だ。そこで注目すべきなのは、営業黒字という見出しだけではない。

見るべき点は、販売台数の推移、地域別の収益性、コスト削減の進捗、そして2027年3月期に向けた見通しである。特に日本、米国、中国で販売力を戻せるかどうかは、再建の持続性を判断するうえで重要になる。

今回の上方修正は、日産が最悪期を脱しつつある可能性を示す材料ではある。一方で、5500億円の最終赤字が残る以上、再建の本丸はまだ先にある。営業黒字の中身を見れば、問われているのは一時的な改善ではなく、販売力と収益力をどう立て直すかである。

(本稿は各種公開情報をもとに作成した。一部数値は記事掲載時点の情報である)

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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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