財務省が公表した2026年3月の貿易統計では、輸出額は前年同月比11.7%増の11兆33億円、輸入額は10.9%増の10兆3363億円となり、貿易収支は6670億円の黒字だった。数字だけを見ると、日本の貿易はなお持ちこたえているようにも見える。
ただ、今回の統計は単純な「安心材料」としては読みにくい。原油輸入量は前年同月を上回った一方で、中東向け輸出は大きく落ち込んだためだ。同じ3月の統計の中に、まだ表面化していない影響と、すでに表れ始めた影響の両方が混ざっている。
黒字でも中身は一様ではない
3月の貿易統計では、輸出から輸入を差し引いた貿易収支が2か月連続の黒字となった。全体の輸出入額も2桁増で、見出しだけ追えば底堅さを感じやすい内容だ。
しかし、内訳に目を移すと温度差が大きい。原油の輸入量は1104万キロリットルと前年同月比2.4%増だった一方、日本から中東向けの輸出額は45.9%減った。国別ではイラン向けが99.9%減、UAE=アラブ首長国連邦とサウジアラビア向けはそれぞれ47.2%減だった。
同じ月の統計でも、原油の受け入れ側と、日本企業が中東へ物を売る側では動きが異なっていたことになる。
原油輸入が減らなかったのは「到着時点」で計上されるからだ
今回もっとも誤解されやすいのは、原油輸入が増えたという一点だけで供給不安が小さいと受け止めてしまうことだろう。
財務省は、原油輸入量が減らなかった理由について、ホルムズ海峡が事実上封鎖される前に現地を出発していたタンカーが日本に順次到着したためだと説明している。貿易統計は港に到着した時点で計上されるため、現地情勢の変化がそのまま同じ月の数字に表れるわけではない。
言い換えれば、3月の原油輸入量は「3月時点の中東情勢が安定していた」ことを示す数字ではなく、封鎖前に動いていた貨物がまだ到着していたことを映した数字とみるのが自然だ。統計には、海上輸送ぶんの時間差がある。
先に悪化が見えたのは中東向け輸出だった
一方で、中東向け輸出の急減はより直接的だ。自動車輸出の落ち込みが大きく響き、日本が中東へ物を売る側では、すでに影響が数字として表れた。
ここで重要なのは、今回の統計が「原油はまだ届いていたが、輸出のほうでは先に減少が表れた」という非対称な構図を示していることだ。エネルギー輸入への影響を判断するにはなお時間差を考える必要があるが、対中東ビジネスの一部では変化が先行していたと読める。
この意味で、3月統計は一つの方向だけを見ると実態を取り違えやすい。原油輸入の数字だけなら持ちこたえて見えるが、中東向け輸出まで合わせて見ると、日本企業の取引環境がすでに揺れ始めていたことが分かる。
4月以降は輸入量そのものより「変化の出方」が焦点になる
3月統計が封鎖前出発分を含んでいたとすれば、4月以降はその反動がどのような形で現れるかを見ていく必要がある。原油輸入量そのものが減るのか、到着の遅れやコスト上昇として表れるのか、あるいは対中東輸出の落ち込みがさらに広がるのか。注目点は一つではない。
現時点で言えるのは、3月の原油輸入が減らなかったからといって、リスクが後退したとは言い切れないということだ。むしろ今回の統計は、貿易数字を月次で読むときに、何が「いま起きていること」で、何が「少し前に起きたこと」を映しているのかを区別する必要があると示した。
まとめ
3月の貿易統計は、黒字という見た目ほど単純ではない。原油輸入量は前年同月を上回ったが、それは財務省の説明では封鎖前に出発したタンカーが到着したためだった。一方で、中東向け輸出は45.9%減と大きく落ち込み、自動車輸出の減少も表れた。
今回の数字は、日本の貿易が全面的に崩れていないことを示す一方で、中東情勢の影響が出る順番には時間差があることも示している。原油輸入が減らなかった事実だけで安心するのではなく、対中東輸出の落ち込みとあわせて読むことが、3月統計の実像に近い。
(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

