PMI(Purchasing Managers’ Index、購買担当者景気指数)は、製造業やサービス業の民間企業の購買担当者を対象にしたアンケート結果から算出される、景気の先行指標です。
「新規受注」「生産」「雇用」「在庫」「価格」などの項目について、「良くなった」「変わらない」「悪くなった」の回答を指数化し、景気の拡大・縮小を早期に把握する目的で使われます。
PMIの仕組みと読み方
✅ 調査と指数の算出
- 回答形式:各項目について、「改善(100点)」「変化なし(50点)」「悪化(0点)」で評価。
- 各回答を集計し、加重平均によって総合PMIが算出されます。
例:新規受注で「改善40%、変化なし50%、悪化10%」の場合
⇒ PMI = (40×100 + 50×50 + 10×0) ÷ 100 = 65.0
✅ 指数の読み方
PMIの値 | 解釈 |
---|---|
50.0 | 景気の分岐点(拡大でも縮小でもない) |
50超 | 景気拡大(数値が大きいほど拡大が強い) |
50未満 | 景気縮小(数値が小さいほど悪化が深刻) |
49.5:ほぼ横ばいだがやや悪化傾向
45.0:明確な景気悪化シグナル
PMIの種類と代表的な指標
指標 | 対象 | 公表機関 | 備考 |
---|---|---|---|
製造業PMI | 製造業 | ISM(米国)、S&P Global、Jibun Bank(日本) | 最も注目されるPMI指標 |
サービス業PMI | サービス業 | S&P Global | 消費・雇用との関連が強い |
コンポジットPMI | 製造業+サービス業 | S&P Global | 経済全体の先行指標 |
建設業PMI | 建設・不動産業 | S&P Global(一部地域) | インフラ関連の先行性あり |
国別の主な調査主体
- 日本:Jibun Bank Japan PMI(S&P Globalと連携)
- 米国:ISM(供給管理協会)およびS&P Global
- 中国:国家統計局(NBS、政府系)/財新(Caixin、民間中心)
- ユーロ圏:S&P Global(ドイツ・フランス等を含む)
サブ指数と注目項目
PMIは総合指数だけでなく、以下のサブ項目も個別に公表されます:
- 新規受注:将来の生産増加の兆候
- 雇用指数:企業の人員増減意向
- 価格指数:原材料価格などの上昇圧力(インフレ期待)
例:価格指数が60以上なら「インフレ圧力が強い」と判断され、CPIや金融政策の注目材料になります。
PMIと経済・市場への影響
PMIは月初に発表される速報性の高い指標であり、金融市場に強い影響を及ぼします。
状況 | 市場の典型的な反応 |
---|---|
PMIが予想より高い | 株価上昇、通貨高(例:米ドル高)、利上げ期待 |
PMIが予想より低い | 株価下落、通貨安、景気減速・緩和期待 |
例:2024年10月、米ISM製造業PMIが「予想50.0→結果52.5」で発表された際、S&P500は+0.6%、ドル円は1円以上上昇(仮定)
なお、日本のPMIは国内市場への影響がやや限定的ですが、輸出関連企業を通じて円相場や日経平均にも間接的に影響する場合があります。
他の景気指標との違い
指標 | 特徴 | 発表タイミング | 備考 |
---|---|---|---|
PMI | アンケートに基づく主観的な先行指標 | 月初(1~3営業日) | 景気の「体感」に近い |
GDP | 実際の経済活動データ | 四半期後(速報→確報) | 実績データで遅行性あり |
景気動向指数 | 先行・一致・遅行の複合指標 | 月次(やや遅い) | 内閣府が公表 |
PMIは速報性が強みですが、主観的データのため実際のGDPや雇用統計と補完的に活用されます。
関連項目
外部リンク・参考資料
備考
- PMIは毎月第1〜3営業日に発表され、経済カレンダーでは最重要指標の一つです。
- 市場では総合指数だけでなく、「新規受注」や「価格指数」といったサブ指数にも注目が集まります。