GDP(国内総生産)とは?

GDP(Gross Domestic Product、国内総生産)は、一定期間(通常は四半期または1年間)に、国内の居住者によって生産された財やサービスの付加価値の合計を示す経済指標です。
その国の経済規模や成長力を測るための代表的な統計であり、金融政策・財政政策・国際比較などに幅広く使われます。


名目GDPと実質GDPの違い

区分名目GDP実質GDP
定義現在の市場価格で算出物価変動を除外(基準年価格)
影響インフレやデフレを含む経済活動そのものを比較可能
主な用途経済規模や国際比較成長率や生産性の分析

実質GDPは、名目GDPをGDPデフレーター(物価指数)で調整して算出されます。

例:名目GDP = 600兆円、GDPデフレーター = 109なら
実質GDP = 600 ÷ 1.09 ≒ 550兆円(2020年基準)


GDPの3つの計算方法(支出=生産=所得)

GDPは以下の3つの観点から理論上同じ値が導かれます(=三面等価の原則)。ただし、現実には統計誤差(乖離)が生じます。

  1. 支出アプローチ(最も一般的)
    GDP = 消費(C)+投資(I)+政府支出(G)+純輸出(NX)
  2. 生産アプローチ
    各産業の付加価値の合計
    → 日本ではサービス業が約70%を占めます(2024年推計)
  3. 所得アプローチ
    雇用者報酬+営業余剰+固定資本減耗+(間接税−補助金)

日本では、内閣府が四半期ごとに「国民経済計算(SNA)」として支出面を中心に公表しています。


経済成長率と景気判断

  • 経済成長率=(当期実質GDP−前期実質GDP)÷前期実質GDP × 100(%)
  • 実質GDPの増減で景気の拡大・後退を判断します。
状況意味
成長率プラス経済拡大・景気回復
成長率マイナス(1期)成長鈍化・停滞懸念
成長率マイナス(2期連続)テクニカル・リセッション(景気後退の目安)

※ただし、正式な景気判断は日本では内閣府の景気動向指数、米国ではNBERの判定に基づきます。


各国のGDP比較と一人あたりGDP(2025年推計)

国名総GDP(兆ドル)一人あたりGDP(ドル、名目)PPPベース(参考)
米国27.0(1位)約80,000約85,000
中国19.0(2位)約14,000約25,000
ドイツ4.5(3位)約55,000約60,000
日本4.2(4位約34,000約42,000

※出典:IMF「World Economic Outlook」(2025年4月時点)

一人あたりGDPの国際比較では、PPP(購買力平価)ベースの値がより生活水準の実態を反映します。


GDPの限界と補完指標

GDPは経済活動の量的把握には優れていますが、以下のような限界があります:

  • 家事労働・ボランティアなど非市場活動を含まない
  • 所得格差や福祉水準を反映しない
  • 環境破壊など負の側面を無視する

代表的な補完指標:

指標名概要
GNI(国民総所得)海外からの所得を加味
HDI(人間開発指数)教育・健康・所得を総合評価
グリーンGDP環境負荷を調整したGDP
幸福度指数生活満足度を主観的に評価(国連報告)

GDPと市場・政策への影響

GDPは金融市場や政策判断に大きく影響します。
特に、速報値が予想と乖離した場合には以下のような市場反応がよく見られます。

状況市場の典型的な反応
予想より高い成長株価上昇、円高、金利上昇期待
予想より低い成長株価下落、円安、緩和期待(利下げ)

日本の四半期GDPは、速報値 → 1次速報 → 確報と順に改定され、改定値も注目されます。


関連項目


外部リンク・参考情報


備考

GDPは、経済報道・中央銀行・投資判断など幅広い文脈で登場する最重要指標のひとつです。
その意味や限界、国際的な比較方法まで理解しておくことで、ニュースの読み解きや政策動向の把握に大きく役立ちます。

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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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