CPI(Consumer Price Index、消費者物価指数)は、一般消費者が購入する商品やサービスの価格変動を示す指標です。
物価の動向を把握し、インフレやデフレの状況を評価するために各国で幅広く用いられています。中央銀行の金融政策や市場分析にも影響を与える重要な統計です。
CPIの概要と構成
CPIは「バスケット」と呼ばれる消費財・サービスの集合(食料、住居、交通、医療など)について、価格の平均的な変化を測定します。
たとえば、米国のCPIは約80,000品目、日本では約600品目を対象とし、各国の消費習慣に応じて設計されています。
- 発表頻度:原則として毎月(月次)
- 米国:労働統計局(BLS)が中旬頃に発表
- 日本:総務省統計局が下旬に発表(全国CPI、東京都区部CPIなど)
- データ形式:
- 総合CPI(全項目)
- コアCPI(食品を除く)
- コアコアCPI(食品とエネルギーを除く、日本特有)
- 変化率の見方:
- 前年同月比(YoY)→ 長期的な物価傾向を見る
- 前月比(MoM)→ 短期的な変化を把握
- 季節調整:
- 米国では主に季節調整済みデータが使われ、日本では非調整データが重視される傾向があります。
CPIと金融政策の関係
CPIは、中央銀行の金融政策判断に影響を与える重要な経済指標です。
米国(FRB)の場合:
- インフレ目標:2%(長期平均)
- 金融政策の判断材料としては PCEデフレーターが主要指標とされていますが、CPIも市場での注目度が高く、金融政策に間接的な影響を与えます。
日本(日銀)の場合:
- 物価安定目標:前年比+2%
- 判断材料として コアCPI や コアコアCPI が注視されます。
例:CPIが予想を上回る → インフレ懸念 → 利上げ観測
CPIが予想を下回る → 景気懸念・利下げ期待
CPIとPCEデフレーターの違い
比較項目 | CPI | PCEデフレーター |
---|---|---|
公表機関 | 労働統計局(BLS) | 経済分析局(BEA) |
対象 | 都市部の家計消費 | 個人消費全体(家計+企業・政府の代理購入) |
ウェイト方式 | 固定(ラズパイア方式、数年ごと更新) | 変動(パーシェ方式、毎月調整) |
特徴 | 医療・住居のウェイトが大きい | 消費構造の変化に柔軟に対応 |
金融政策との関係 | 市場の注目度が高い | FRBがインフレ目標の主要指標として使用 |
PCEはCPIよりインフレ率が低く出る傾向があります。
市場への影響と注目ポイント
CPIは発表直後に為替・株式・金利市場へ大きな影響を与えることがあります。
特に米国のCPIが予想から乖離した場合、以下のような反応が観察されやすくなります。
状況 | 市場の典型的な反応 |
---|---|
CPIが予想より高い | 米ドル高、株価下落、債券利回り上昇 |
CPIが予想より低い | 米ドル安、株価上昇、債券利回り低下 |
※ただし、実際の反応は他の経済指標やFRBの見通し次第で変動します。
外部リンク・公式データ
関連項目
備考
日本のCPIには、速報性の高い「東京都区部CPI」もあり、全国データの先行指標として注目されます。
また、CPIは賃金改定や年金支給額の調整基準にも用いられるなど、私たちの生活にも直接関わる重要な統計です。