リニア中央新幹線、争点は「着工できるか」から「開業時期を説明できるか」へ

金子国土交通大臣が3月28日、リニア中央新幹線の山梨県内の実験線と、神奈川県相模原市で工事が進む駅建設現場を視察した。そして視察後、JR東海に対して「静岡工区の着工後、速やかに品川−名古屋間の開業の見通しを明らかにするよう求める」と表明した。

この発言を「開業が近い」という前向きなニュースと読むのは早計だ。むしろ注目すべきは、リニアをめぐる論争の焦点が静岡問題から次の段階へ移り始めたという構造変化の方にある。

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静岡問題は次の段階へ——論争の舞台が変わる

リニア中央新幹線は、東京(品川)と名古屋を約40分で結ぶ超電導磁気浮上式の新幹線計画だ。もともと2027年の開業を目指していたが、静岡県内を通るルートの一部(静岡工区)について、大井川の水量への影響などを理由に静岡県が着工を認めず、工事が止まっていた。

これが長年にわたってリニアの最大の論点だった。ところが3月26日、静岡県の専門部会がJR東海の示した対策28項目をすべて了承し、県側は「年内着工の可能性もある」との認識を示した。着工判断に向けた前提条件が、大きく前進した段階に入った。

金子大臣の視察と発言は、このタイミングに合わせたものだ。静岡の着工条件が整ってきた以上、「次は開業時期をJR東海が説明する番だ」という行政としてのメッセージと読み取れる。

JR東海の公式見解は今も「2027年以降」のまま

ただし、重要な事実がある。JR東海の公式スタンスは現時点でも「2027年以降」という表現のままであり、具体的な新しい開業時期はまだ示されていない。

同社は「より明確な見通しが立った段階で開業時期を示す」という姿勢を一貫して維持している。「2027年以降」とは、もともと目指していた2027年の開業が困難となった2020年以降、JR東海が使い続けている表現だ。

つまり今回の国交相発言は、「新しい開業年が決まった」という宣言ではなく、「見通しを出す条件が整ってきたのだから、会社として説明責任を果たせ」——そうした圧力に近い発言と読むのが自然だ。

「着工できる」と「開業時期が示せる」はなぜ別問題なのか

静岡工区が動き出せば、すぐに開業時期が分かるような印象を持つ読者もいるかもしれない。しかし実際はそう単純ではない。

リニアの工程は、静岡の南アルプストンネルだけで決まるものではない。品川・名古屋のターミナル駅工事、都市部のトンネル掘削、神奈川県駅(仮称)のような地下深くに建設される中間駅工事、さらに軌道や電気設備など——これらすべてが相互に絡み合う巨大プロジェクトだ。

今回、金子大臣の視察先に神奈川県駅が含まれていたのは、静岡だけでなく他の工区・駅工事も含めた全体工程の見せ方が問われていることを示している。神奈川県の駅は、品川−名古屋間で唯一地下に建設される予定で、現在地下30メートルにホームを設置する工事が進んでいる。こうした都市部の地下工事も難度が高く、全体のスケジュールに影響する。

静岡工区の着工は「開業できる前提が整う」ための必要条件ではあっても、「即座に開業日が確定する」十分条件ではないのだ。

「開業が近い」ではなく「説明責任が重くなった」

金子大臣の発言を正確に読むなら、それはリニアの開業が迫っているという宣言ではない。むしろ逆に、長く不透明だった工程についてJR東海が説明できる状態になることを行政が求めているという意味合いが強い。

これまで国交省は、静岡問題の解決を優先課題として後押ししてきた。今回の発言は、その焦点が「静岡説得」から「工程の進捗開示」へとシフトし始めたことを示している。沿線自治体、関係する建設・交通業者、さらに利用を見据えている企業や個人にとって、今後の見通しをある程度把握できる状態にすることを、国として求めるという立場だ。

JR東海は民間企業だが、リニアは国家的なインフラ計画でもある。政府が「見通しを出せ」と公に求めることは、それなりの政治的・行政的圧力を持つ。ただし、JR東海が実際に具体的な開業時期を示すためには、静岡工区の着工後に全体工程を再精査するプロセスが必要だ。「大臣が言ったから翌日にスケジュールが出る」ような話ではない。

次に注目すべきこと

静岡工区の年内着工が実現した場合、JR東海がどのタイミングで開業見通しを公表するかが次の焦点になる。それがいつになるかは現時点では不明だが、着工後に全体工程の再計算を経て示されるものとみられる。

また、静岡工区が動き出しても、都市部の地下工事や各駅の設備工事が順調に進むかどうかも、最終的な開業時期に影響する。静岡工区を含む全体工程が前に進む可能性が高まっていることは確かだが、「いつ完成するか」という問いに答えが出るまでには、もうひと段階の手続きと時間が必要だ。

(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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