茂木外相がサウジ・UAEと電話会談——ホルムズ危機で日本が前面に出した「外交連携」

「原油の安定供給とホルムズ海峡の安全な航行に向けた連携を呼びかけた」——茂木外務大臣は3月16日夜、サウジアラビアとUAE(アラブ首長国連邦)の外相と相次いで電話会談し、中東情勢の悪化に対する日本政府の立場を伝えた。

艦船派遣か否かが問われる中、現時点で日本が示しているのは外交面での対応だ。その意味を読み解く。


目次

日本はなぜ今、サウジとUAEに電話したのか

ホルムズ海峡が事実上の通航障害に直面している中、日本はこれを「他人事」として見ていられない立場にある。

資源エネルギー庁のデータによれば、日本の原油輸入に占める中東依存度は2023年度で94.7%に上る。さらに、日本が輸入する原油の73.7%がホルムズ海峡を経由している。つまり、ホルムズ海峡の安定は日本のエネルギー供給にとって文字通り死活的だ。

サウジアラビアとUAEは、この中東からの原油供給において日本の最重要パートナーだ。そのうえ両国は、単に原油を売るだけの関係ではない。実は、日本が「産油国共同備蓄」と呼ぶ仕組みで、UAE・サウジ・クウェートに石油の一部を預けており、エネルギー安全保障の実務面でも深く結びついている。こうした関係の深さを踏まえれば、今回この2国との連携確認が重視されたのは自然だ。


会談で何が話されたか

茂木大臣は、サウジのファイサル外相、UAEのアブドラ外相とそれぞれ約15分間の電話会談を行った。

日本側が伝えたのは3点だ。

第一に、中東情勢の悪化への「深刻な懸念」。第二に、イランに対し、サウジやUAEへの攻撃を含む地域を不安定化させる行動をやめるよう強く求めているという説明。第三に、原油の安定供給・ホルムズ海峡の安全な航行・エネルギー安全保障を含む中東の平和と安定に向けた連携の呼びかけだ。

また、現地に滞在する日本人の安全確保と出国支援についての謝意も伝えた。イラン情勢の緊張が高まる中、現地に残る邦人の保護も日本外交の重要な課題になっている。

サウジ・UAE側の反応は前向きだった。いずれの外相も「事態の早期沈静化に向けて日本と連携する」と述べ、「原油の安定供給や日本人の安全確保についても協力していきたい」と応じたという。


日本が前面に出したのは外交連携

トランプ大統領は日本を含む各国にホルムズ海峡への艦船派遣を求め、イランの元革命防衛隊司令官は「日本の艦船は危険にさらされる」と名指しで警告した。この板挟みの中で、日本政府が現時点で前面に出しているのは軍事的対応ではなく、産油国との外交連携だ。

サウジとUAEはいずれもイランとは一定の距離を置きつつ、外交的な関係も保っている。日本がこの両国と連携を深めることには、エネルギー確保だけでなく、「対話による早期沈静化」を促すメッセージを中東に発するという外交的な意味もあると考えられる。

また自衛隊の海外派遣には、憲法上の制約に加え、法的根拠や国会関与を含めた国内手続きのハードルもある。外交連携を先行させる選択には、そうした国内事情も背景にある。


ホルムズ海峡の「今」——全面封鎖ではないが不安定

ここで、ホルムズ海峡の現状についても整理しておきたい。

ホルムズ海峡は、ペルシャ湾とオマーン湾を結ぶ幅約50kmの狭い海峡だ。サウジ、UAE、クウェート、イラクなど湾岸産油国の原油輸出にとって不可欠な通路で、米EIAによると世界の海上石油取引の4分の1超、世界の石油・石油製品消費の約5分の1がここを通過する。

現在の通航状況は「全面封鎖」と断言できる状態ではないものの、著しく制約された不安定な局面にある。Reutersはインド向けLPG船の例外通航を報じており、米ベッセント財務長官も「一部の船舶はすでに通航している」と述べた。ただし通航量自体は大幅に減少しており、リスクが高止まりしている状況に変わりはない。

産油国の側でも対応が始まっている。FTは、サウジアラムコがホルムズ海峡を使わない紅海側のヤンブー港など代替輸出ルートの活用を強めていると報じており、長期化に備えた動きも出始めている。


「原油は届き続けるのか」——会談の実務的な意味

実務的には、今回の電話会談には日本向け供給継続の確認という意味合いもあったとみられる。

サウジ・UAE両外相が「原油の安定供給への協力を続けたい」と応じたことは、直ちに供給が止まる状況ではないことを示すメッセージとして受け取れる。もちろん、現場の状況次第で事態が急変する可能性は残るが、主要産油国が「日本との連携維持」を表明したことは一定の安心材料だ。

一方、ホルムズ海峡経由の輸送が滞る状況が長期化すれば、代替ルートの確保や価格上昇というコストが日本にのしかかる。エネルギー安全保障の観点からは、今回の外相会談はその先を見据えた関係維持の布石でもある。


今後の注目点

今後の焦点は2点だ。

①産油国との連携がどこまで具体的な形になるか。 「連携していく」という表明が、実際の供給確保や外交調整にどう結びつくかが問われる。

②ホルムズ海峡情勢が改善するかどうか。 産油国との協力でエネルギー安全保障をつなぎとめても、根本的な解決は海峡の安定化にかかっている。そのためには、現在進行中の紛争がどう収束するかが鍵を握る。

外交の積み重ねが、エネルギー安全保障の下支えになる——今回の電話会談はその地道な実践の一コマだ。


(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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