「扶養に入っている」は1種類じゃない:新年度前に確認したい税と社会保険のルール

「扶養に入っている」はどっちの話?

春になると、家族の就職や退職が重なり、「扶養から外れる」「扶養に入れたい」という話が職場でも家庭でも出てくる。

しかし「扶養」という言葉には、実は2種類の意味がある。税金の話と、社会保険の話だ。この2つはまったく別の制度で、判定の基準も、手続きの窓口も、タイミングも異なる。「扶養を外れた」と職場に申告したら「どっちの扶養ですか?」と聞き返された、という経験をした人もいるかもしれない。

新年度前のいまこそ、この2つを整理しておきたい。


目次

税の扶養:納税者の負担を減らす仕組み

一つ目は税制上の扶養だ。

これは、一定の親族を扶養している納税者が、所得控除(税金の計算のもとになる所得を減らす仕組み)を受けられる制度だ。扶養控除や配偶者控除がこれにあたる。平たく言えば、家族を養っている人の税負担を軽くしますよ、という話だ。

対象になるのは、6親等内の血族と3親等内の姻族で、「生計を一にしている」こと、つまり家計を共にしている関係であることが条件だ。必ずしも同居は必要ない。たとえば、仕送りをしている別居の親も要件を満たす可能性がある。

所得の要件は、扶養される側の合計所得金額が58万円以下であること。これは2025年度の税制改正で、以前の48万円から引き上げられた。給与収入だけの人なら、収入から給与所得控除を差し引いて計算する。よく「103万円の壁」と言われるのは、この所得要件と控除の組み合わせによるものだ。

配偶者については、配偶者控除と配偶者特別控除という別の仕組みがある。配偶者の合計所得金額が58万円以下なら配偶者控除の対象になり得るが、58万円を超えても133万円以下の範囲であれば配偶者特別控除として段階的な控除が受けられる。ただし、納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超えると対象外になる。


社会保険の扶養:保険料なしで医療や年金の保障を受ける仕組み

もう一つは社会保険上の扶養だ。

健康保険の被扶養者になると、自分自身で保険料を払わなくても、会社員など保険に加入している家族(被保険者)の保障の枠内で医療を受けられる。年金については、会社員や公務員(第2号被保険者)に扶養される配偶者が「第3号被保険者」となり、国民年金保険料を自分で納めなくてよくなる。


「130万円の壁」は万能ではない

社会保険の扶養で有名な基準が「130万円の壁」だ。健康保険の被扶養者になれるのは、原則として年収が130万円未満(60歳以上または障害者の場合は180万円未満)の場合、という目安だ。

ただしここに、見落としやすいアップデートがある。19歳以上23歳未満の被扶養者については、2025年10月以降、年間収入の要件が150万円未満に見直されている。大学生や専門学校生が多い年齢層に当てはまるため、子どもがいる家庭では特に確認が必要だ。「うちの子は130万円を超えても大丈夫」と安易に判断せず、加入している健康保険の窓口に確認することをすすめる。

確認:日本年金機構「19歳以上23歳未満の方の被扶養者認定における年間収入要件が変わります」

また、社会保険の扶養の収入判定は、税金のように1年間の確定した金額だけで決まるわけではない。「今後1年間の収入見込み」で判断されることが多い。そのため、アルバイトの勤務時間が増えた、昇給した、雇用契約が変わったといった変化があると、年の途中でも扶養から外れることがある。


年金の「第3号」は配偶者だけ

健康保険の被扶養者と混同されやすいのが、年金の第3号被保険者だ。

第3号被保険者になれるのは、第2号被保険者(会社員・公務員など)に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者に限られる。親や子どもは対象ではない。「社会保険の扶養に入れた=年金の負担もなくなった」と思い込むと、配偶者以外の家族については話が変わってくる。

健康保険で親を被扶養者にすることはあり得るが、その親が第3号になることはない。両制度は対象範囲がずれていることを頭に入れておくと整理しやすい。


異動があったら、5日以内に動く

扶養の状況が変わった場合、手続きにはそれぞれ期限がある。

税制上の扶養については、勤務先に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出する。提出期限は、異動後に最初の給与を受け取る日の前日まで、とされている。

社会保険上の扶養については、被扶養者の追加や削除が生じた場合、事実の発生から5日以内に勤務先を通じて健康保険組合または年金事務所へ「被扶養者(異動)届」を提出するのが原則だ。配偶者が第3号被保険者に該当する場合は、「国民年金第3号被保険者関係届」も同時に出す必要がある。

手続きが遅れると、保険の給付に影響が出ることもある。変化が生じたら、早めに勤務先に相談するのが安全だ。

なお、扶養から外れる際にはこれまで「健康保険証の返却」が必要とされてきたが、現在はマイナ保険証への移行が進んでいる。有効期限内の資格確認書がある場合はその返却が必要になるほか、マイナ保険証の利用者については勤務先や加入している保険者の案内に従うことになる。制度の移行過程にあるため、不明点は直接確認するのが確実だ。


新年度前に確認したいこと

扶養の手続きは、変化が生じてから動くものだが、新年度は特に動きが集中しやすい。

以下に当てはまることがあれば、今から確認しておくと後手に回らずに済む。

  • 家族が就職・退職・転職する予定がある
  • 配偶者やパートの家族の収入が変わりそう
  • 子どもが卒業して就職する
  • 別居している親への仕送りの状況が変わった
  • 自分が転職し、加入する健康保険が変わる

まとめ

「扶養」という言葉は一つでも、実態は税制上の扶養社会保険上の扶養という2つの制度だ。片方で外れても、もう片方がそのまま続くことも、同時に手続きが必要なこともある。

とりわけ見落としやすいのは、健康保険の収入基準が年齢によって異なること、年金の第3号は配偶者しか対象にならないこと、そして届出には期限があることだ。

制度の細部は健康保険組合によって異なる場合もある。「自分はどちらに当てはまるか」を確認するためにも、変化があったときはまず勤務先の担当窓口に相談してみることをすすめる。扶養は「入っているはず」ではなく、「手続きして初めて有効になる」ものだ。

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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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