「リスクが高い」は「危ない」という意味ではない
「投資はリスクが高いから怖い」という言葉をよく耳にする。でも、そもそも「リスク」とはどういう意味なのか、正確に説明できる人はどのくらいいるだろうか。
日常会話では「リスク=危険」として使われることが多い。しかし、投資や資産運用の世界では、リスクの意味が少し違う。
投資におけるリスクとは、結果がどれだけ不確かか、つまり「将来の収益がどれくらいぶれるか」という意味で使われる。損をする可能性だけではなく、想定より大きく儲かる可能性も含めた「振れ幅の大きさ」がリスクだ。
このことを理解するだけで、投資に対する見方がずいぶん変わる。「リスクがある=悪い商品」ではなく、「リスクがある=値動きの幅が大きい商品」と読み替えられるからだ。
投資には6種類のリスクがある
では、具体的にどんなリスクがあるのか。資産運用の世界では、代表的なものとして次の6種類が挙げられる。
① 価格変動リスク
株式や債券、投資信託などの価格は、毎日変動している。景気の良し悪し、企業の業績、金利の動向など、さまざまな要因が絡み合って価格は上がったり下がったりする。これが価格変動リスクだ。投資といえばまず思い浮かぶリスクで、最もなじみ深いものといえる。
② 為替変動リスク
外国の株や債券に投資する場合には、もう一つの変動が加わる。円とドル、円とユーロなど、為替レートの変動だ。たとえ外国の株が値上がりしていても、円高が進めば円に換算した資産価値は目減りすることがある。逆に円安なら恩恵を受けることもある。これが為替変動リスクで、海外投資には欠かせない視点だ。
③ 金利変動リスク
金利が変わると、特に債券の価格は大きく動く。
債券とは、国や企業が資金調達のために発行する借用証書のようなものだ。あらかじめ利率が決まっているため、市場の金利が上がると、同じ利率の既存の債券は相対的に魅力が薄れて価格が下落する。逆に金利が下がれば、既存の債券の価格は上がる。「金利上昇=債券価格の下落」という関係は、投資の基本として押さえておきたい。
④ 流動性リスク
「売りたい時に、希望する値段で売れないリスク」のことだ。
取引量が少ない商品や、市場規模が小さい金融商品は、売り手と買い手がうまく噛み合わず、思うように換金できないことがある。平時はあまり意識されないが、市場が混乱した局面では急に顕在化するリスクだ。
⑤ 信用リスク
株式や債券を発行している企業や国(これを「発行体」という)が、財政的に行き詰まった場合のリスクだ。利払いが滞ったり、最悪の場合は元本が返ってこないこともある。これを「デフォルト(債務不履行)」と呼び、信用リスクはデフォルトリスクとも言われる。
⑥ カントリーリスク
海外に投資する際、その国の政治情勢や経済状況が突然変わることで、資産価値や換金性が影響を受けることがある。政変、大規模な規制変更、経済危機などが原因となる。為替リスクとは別の話として、独立したリスクとして認識しておくことが大切だ。
「同じリターンなら、ぶれが小さいほどいい」
6種類のリスクを理解したところで、次は「ポートフォリオ全体のリスク」という考え方を見てみよう。
ポートフォリオとは、保有している複数の資産の組み合わせ全体のことだ。株だけ、債券だけではなく、複数の種類の資産を持ち合わせている状態のことをこう呼ぶ。
このポートフォリオ全体のリスクを測る際によく使われるのが、標準偏差という指標だ。少し数学的な響きがあるが、考え方はシンプルだ。「毎月の収益率が、平均からどのくらいの幅で上下に振れているか」を数値で表したものだ。
たとえば、同じ年5%の収益率を期待できるAとBという2つのポートフォリオがあるとする。Aは月ごとの収益が毎回ほぼ5%前後に収まっており、Bは月によって+15%になったり-10%になったりと大きく揺れているとしよう。この場合、平均的な収益は同じでも、Bの方が値動きの振れ幅、つまり標準偏差が大きい。
「同じリターンを期待できるなら、振れ幅が小さい方がリスクは低い」という考え方が、資産運用の基本だ。振れ幅が小さければ、仮に短期的に下落しても回復しやすく、精神的な負担も少ない。
標準偏差だけでは見えないリスクもある
ここまで読んで、「標準偏差を見れば万全だ」と感じた方もいるかもしれない。しかし、一点だけ注意が必要だ。
標準偏差は、過去のデータをもとに計算された指標だ。通常時の値動きの傾向は反映されているが、リーマンショックや新型コロナショックのような急激な市場崩壊、あるいは信用不安や流動性の枯渇といった「非連続な大きな損失」は、標準偏差だけでは十分に捉えられないことがある。
ポートフォリオを考える際は、標準偏差という便利な物差しを使いつつも、各種リスクの「種類」もあわせて確認することが、堅実な投資判断につながる。
「分散」することでリスクを抑えられる
リスクを管理するうえで有効な手段の一つが、分散投資だ。
一つの商品に全額を集中させるのではなく、値動きの異なる複数の資産に分けて持つことで、ある資産が下落しても他の資産でカバーできる可能性が高まる。国内株、海外株、債券、現金など、それぞれ異なる値動きをする資産を組み合わせることで、ポートフォリオ全体の振れ幅を抑えられることがある。
ただし、分散投資は損失をゼロにする魔法ではない。市場全体が同時に下落するような局面では、分散効果が薄れることもある。あくまで「リスクを管理しやすくする手段の一つ」として理解しておくのが適切だ。
まとめ
- 投資のリスクは「危険」ではなく「値動きの振れ幅・不確実性」を意味する
- 代表的なリスクは6種類(価格変動、為替変動、金利変動、流動性、信用、カントリー)
- ポートフォリオのリスクは「標準偏差」で測ることが多い
- 同じリターンなら、標準偏差が小さいほどリスクは低いと考えられる
- ただし標準偏差は万能ではなく、急落や流動性危機は捉えきれない場合がある
- 分散投資はリスクを抑える有力な手段だが、損失をゼロにするわけではない
投資を始める前に「リスクとは何か」を正しく理解しておくことは、商品選びや資産配分を考えるうえでの出発点になる。怖がりすぎず、かといって楽観しすぎず、リスクの正体を知ることが、長く続けられる資産運用への第一歩だ。

