外国人が日本の土地を買えなくなる日は来るのか──政府の有識者会議が動き出した

2026年3月4日、東京都内のある会議室で、法律・安全保障・政策の専門家たちが顔を揃えた。議題は「外国人による不動産取得のルール」をどう設けるか、だ。

この有識者会議は政府(内閣官房)が設置した検討の場で、この日が第1回目の会合だった。専門家たちは今年の夏までに政府への提言をまとめることを確認し、議論を始めた。


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なぜ今、このテーマなのか

日本では長らく、外国人であっても原則として自由に不動産を取得できる。土地も建物も、国籍に関係なく買えるのが現状だ。ところが近年、この「開かれた市場」をめぐって、二つの懸念が噴き出してきた。

一つ目は安全保障上の問題だ。

自衛隊の基地や原子力発電所など、国の安全に直結する施設の周辺に、外国人や外国資本の法人が土地を取得するケースが報告されている。内閣府が公表した調査によれば、重要施設周辺の対象区域での取得のうち、国外に住所がある者が約2割を占め、中国(香港を含む)が最多とされている。「もし有事の際に土地が戦略的に利用されたら」という問いは、絵空事ではなくなりつつある。

二つ目は、マンション価格の高騰だ。

特に東京都心では、新築マンションの価格がこの数年で急騰した。「海外居住者(国外に住所がある者)が大量に買い占めているのではないか」という声は以前から根強い。実際、国土交通省が公表したデータでは、東京都心6区の新築マンション取引における「国外からの取得割合」が、2024年の3.2%から2025年上半期には7.5%へと倍以上に増えている。もっとも、この「国外からの取得割合」は国籍ではなく住所(国外)ベースの区分で、日本人の海外居住者も含み得る。

ただし、ここで冷静に押さえておく必要がある。現在の不動産登記情報には国籍の記載がないため、「投資目的の短期の転売がどれほどあるか」を正確に把握することは、現状では難しい。政府の検討会自身も、国外からの取得が価格高騰の「原因」だとは断定しきれていない、と認めている。


有識者会議で飛び交った意見

NHKなどの報道では、第1回の会合で「何らかの規制を設けるべきだ」という意見が相次いだという。

だが話はそう単純ではない。日本は外国との間で、日本人と外国人の取引を同等に扱うことを定めた国際約束(協定)もある。外国人だけを対象に制限を設けようとすれば、そうした約束の「例外」として認めてもらう必要があり、「正当な目的」と「合理的な手段」が求められる。安全保障を理由にするにしても、「なぜこの規制が必要なのか」という根拠(立法事実)を丁寧に積み上げなければならない。

検討の俎上に載っているのは、次のようなメニューだ。

  • 購入前に審査を受ける許可制
  • 事前に届け出る審査付き事前届出制
  • 対象となる土地への立入検査

「誰を対象にするか(外国人限定か、外国籍企業なども含めるか)」「どの土地・地域を対象にするか」も、これから詰められる論点だ。


まず「見える化」から始まる

規制の議論と並行して、すでに動き始めているのが「実態把握の強化」だ。

国外居住者(非居住者)による不動産取得については、すでに外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づく報告制度がある。政府内では、この報告を通じて実態をより広く把握できるよう、制度・運用の見直しを検討している。また、国土利用計画法など複数の制度を通じて、法人が関与する場合の属性情報の把握を強める方向も議論されている。

さらに将来的には、不動産に関する国籍情報を一元的に管理するデータベース(「不動産ベース・レジストリ」)の構築も政府資料に盛り込まれている。

まず「誰が何をどこで持っているか」を把握する──。それが、規制の設計に向けた最初のステップになる。


世界はどうしているか

外国人による不動産購入に一定の制限を設けること自体は、国際的に珍しくない。

カナダは非カナダ人による住宅購入を禁じる制度を2027年まで延長した。オーストラリアも外国人による既存住宅の購入に一定期間の制限を設けている。ニュージーランドは2018年に海外居住者の住宅購入を制限する方向へ舵を切ったが、その後、条件付きで投資家への門戸を見直す動きもあり、政策は揺れ続けている。アメリカでは連邦レベルでは農地の「報告・把握」を強化しつつ、州法での制限が広がりつつある。

いずれの国も「全面禁止」か「全面自由」という二択ではなく、対象の範囲や条件を細かく設計している点が共通している。


夏までに答えが出る

日本の有識者会議は、今年夏までに政府への提言をまとめる方針だ。その内容次第で、日本の不動産市場のルールが大きく変わる可能性がある。

安全保障と経済のバランスをどう取るか。国際協定との整合性をどう確保するか。そして、国外からの取得が本当にマンション価格高騰の主因なのか──。

問いはいくつも残ったまま、議論は始まったばかりだ。

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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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