大王製紙がエリエール全品15%以上値上げへ 中東情勢が日用品価格に波及

大王製紙(3880)は、2026年8月1日納品分から、家庭用・業務用製品の全品を現行価格より15%以上値上げすると発表した。

対象には「エリエール」ブランドで展開するティッシュペーパー、トイレットペーパー、キッチンペーパー、紙おむつ、生理用品などが含まれる。いずれも家庭や医療・介護、飲食、宿泊、オフィスなどで使われる身近な製品であり、今回の価格改定は家計だけでなく、事業者の運営コストにも影響しやすい。

背景にあるのは、中東情勢の緊迫化を受けた原材料・資材・燃料・物流費などのコスト上昇だ。大王製紙は、生産性向上や経費削減、調達方法の見直しなどを進めてきたものの、現在の価格体系を維持することは難しいと判断したとしている。

一方で、供給そのものが直ちに不足しているという話ではない。同社は、現時点で原材料や資材について適正な在庫があり、安定的な供給は可能だとしている。今回の焦点は、商品が届かなくなることではなく、安定供給を続けるために価格を維持しにくくなっている点にある。

目次

値上げ対象が「全品」に及ぶ意味

今回の発表で目を引くのは、値上げ対象が一部の商品ではなく、家庭用・業務用製品の全品に及ぶ点である。

ティッシュペーパーやトイレットペーパーは、家庭で日常的に使われる。紙おむつや生理用品は、乳幼児や高齢者のいる家庭、介護施設、医療機関にとって欠かせない。キッチンペーパーや業務用紙製品は、飲食店や宿泊施設、オフィスでも使われる。

つまり、今回の値上げは「あるメーカーの一部商品が高くなる」という範囲にとどまりにくい。生活の中で繰り返し購入される消耗品の価格改定であり、負担感が家計や現場に積み重なりやすい。

大王製紙は東証プライム上場企業で、業種はパルプ・紙に分類される。エリエールをはじめとする家庭紙・衛生用品の存在感が大きい企業だけに、今回の価格改定は日用品市場のコスト環境を見るうえでも一つの手がかりになる。

中東情勢がなぜ紙製品や衛生用品に関係するのか

中東情勢と紙製品の値上げは、一見すると距離があるように見える。だが、紙製品や衛生用品の価格は、紙の原料だけで決まるわけではない。

ティッシュペーパーやトイレットペーパーには主にパルプが使われる。一方、紙おむつや生理用品には吸収材、不織布、フィルム、ポリエチレンなど、石油化学由来の素材も使われる。さらに、商品を包む包装材、パッケージ印刷に使うインク、製造工程で使うエネルギー、全国へ届ける物流費も価格に影響する。

中東地域の不安定化は、原油や天然ガス、石油化学原料、海上輸送のコストに影響しやすい。原油価格や燃料費が上がれば、製造や輸送のコストに波及する。ナフサなどの石油化学原料が上がれば、包装材や樹脂素材にも影響が出る。

そのため、今回の値上げは「紙の原料が上がった」という単純な話ではない。エネルギー、物流、包装材、石油化学素材といった複数のコストが重なり、生活必需品の価格に表れていると読める。

過去の価格改定に続く動き

大王製紙は、2026年4月にも家庭用・業務用紙製品の価格改定を実施していた。今回の8月値上げは、それに続く追加的な価格改定となる。

これまでの価格改定では、原燃料価格の高止まり、円安、物流コスト、人件費の上昇などが理由として挙げられてきた。そこに中東情勢の緊迫化が加わり、原材料や資材の調達価格、燃料費、物流費の上昇圧力がさらに意識されている。

短い間隔で価格改定が続くことは、企業側のコスト上昇が一時的なものとして吸収しきれなくなっている可能性を示す。生産性向上や経費削減だけでは補いきれず、最終的な販売価格に反映せざるを得ない局面が続いているとみられる。

家計だけでなく現場の負担要因にもなる

消費者にとって、ティッシュペーパーやトイレットペーパー、紙おむつ、生理用品は買い控えしにくい商品である。価格が上がっても、使用量を大きく減らすことは簡単ではない。

特に影響を受けやすいのは、乳幼児や高齢者のいる家庭だ。紙おむつや衛生用品は継続的に必要になり、値上げが積み重なると家計への負担感が強まりやすい。

また、影響は家庭に限られない。介護施設や医療機関、保育施設、飲食店、宿泊施設、清掃業、オフィスなどでは、紙製品や衛生用品の使用量が多い。業務用製品の値上げは、こうした現場の運営コストにもつながる。

事業者側がそのコストをどこまで吸収できるかによっては、サービス運営上の負担要因になる可能性がある。生活必需品の値上げは、家庭の買い物だけでなく、社会のさまざまな現場にも関わる。

「遠い地域の緊張」が日用品に表れる

今回の大王製紙の値上げは、中東情勢のような国際的な不安定要因が、日本の生活用品価格にどうつながるかを示す事例でもある。

中東情勢の影響というと、ガソリン価格や電気・ガス料金を思い浮かべやすい。しかし実際には、原油や石油化学原料、包装資材、物流費を通じて、食品パッケージや日用品、衛生用品にも影響が及ぶことがある。

身近な商品ほど、価格が少し上がっただけでも生活実感に残りやすい。ティッシュやトイレットペーパーの値上げは、ニュースとしては小さく見えても、家庭や現場では繰り返し購入するたびに負担として表れる。

今回の発表で見るべきなのは、単なる一社の価格改定だけではない。国際情勢の変化が、エネルギーや物流、素材のコストを通じて、日々使う生活必需品にまで届きうるという構図である。

安定供給は可能でも、価格体系の維持は難しくなっている。大王製紙の値上げは、その現実を生活に近い場所から示している。

(本稿は各種公開情報をもとに作成した。一部数値は記事掲載時点の情報である)

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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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