中国税関総署が4月14日に公表した3月の貿易統計で、中国の輸出は前年同月比2.5%増にとどまった。1〜2月の21.8%増から伸びが大きく鈍った一方、輸入は27.8%増と強く、貿易黒字は511億ドルまで縮小した。数字だけを見ると失速感が強いが、3月統計は「中国輸出が急崩れした」と断定する段階ではない。むしろ、年初を押し上げた特殊要因がはがれ始め、外需の実力が試される局面に入ったと読むほうが実態に近い。
3月統計で見えたのは対米減の鮮明化だ
今回の数字で最も目を引くのは、米国向け輸出の落ち込みだ。3月の対米輸出は前年同月比26.5%減となり、関税の重みがはっきり表れた。一方で、欧州向けとASEAN向けは伸び、3月は対米減の一部を補った。ここから言えるのは、中国の輸出先がすでに大きく組み替わったということではなく、少なくとも3月は米国の落ち込みを他地域が下支えしたという事実だ。
輸出の伸び鈍化は5か月ぶりの低さだったが、3月単月だけでトレンドを決めつけるのは危うい。中国では春節の影響で1月と2月の工場稼働や物流が大きくぶれるため、年初の統計は合算で見るのが通例だ。しかも今年は、米国の追加関税を見越した前倒し出荷が年初の数字を押し上げた面がある。年初の高い伸びの反動が3月に出た可能性は無視できない。
急失速ではなく、年初の反動が表面化した
INGは、3月の輸出は弱かったものの、1〜3月全体ではなお高い伸びを保っているとみる。実際、四半期でみれば輸出は依然として強めで、3月単月の鈍化だけをもって「中国輸出の転換点」と言い切るのは早い。今回の統計は、年初の勢いがそのまま続かなかったことを示したのであって、ただちに総崩れを意味するわけではない。
一方で、安心もできない。貿易黒字が511億ドルまで縮小したことは、輸出の勢いが落ちるなかで輸入が膨らみ、外需の稼ぎが細っていることを示すからだ。輸入急増の背景については、国内需要の全面回復と断定するより、高付加価値品の価格上昇や調達コストの上振れが数字を押し上げた可能性をまず見るべきだろう。
原油高のリスクは中国国内より「相手国需要」に効く
今回の統計が注目される背景には、イラン情勢の緊迫化に伴う原油高がある。ここで重要なのは、原油高が中国企業のコストだけを押し上げるという単純な話ではない点だ。より大きなリスクは、中国製品を買う側の景気と需要を冷やすことにある。欧州やアジアの企業と家計は、燃料費や物流費が上がれば支出を絞る。その結果、中国からの輸入需要も弱くなる。
国際エネルギー機関(IEA)は3月月報で、2026年の世界の石油需要の伸び見通しを前月から日量21万バレル引き下げ、日量64万バレルに下方修正した。あわせて、3月の世界供給は日量800万バレル減る見通しを示し、湾岸諸国では少なくとも日量1000万バレル規模の生産削減が起きていると説明している。原油高と供給混乱が長引けば、中国国内より先に、輸出先の景気と購買力を痛める公算が大きい。
ただし、この影響が3月統計に全面的に織り込まれたとみるのも早い。高エネルギー価格の影響は、輸送コスト、企業収益、消費者心理を通じてじわじわ効いてくる。むしろ3月は、リスクが数字に現れ始めた最初の月とみるのが自然だ。
それでも輸出を支える分野は残っている
悲観一色で見る必要がないのは、輸出の中身にまだ強い分野が残っているからだ。APやINGは、半導体、EV、グリーン関連設備など高付加価値分野が年初の輸出を支えたとみている。中国輸出は、安価な日用品の量で押すだけの構造ではなく、技術系や資本財の比重が高まっている。そのため、対米減速が直ちに全輸出の崩れにつながるとは限らない。
とはいえ、欧州やASEAN向けの伸びだけで対米減を補い続けられるかは別問題だ。今回の3月統計は、輸出先の分散が効いた月ではあっても、構造転換の完了を示したわけではない。4月以降も米国向けの落ち込みが続き、同時に原油高が世界需要を冷やすなら、中国の外需は一段と厳しい局面に入る。
焦点は4月以降の持久力に移る
3月の数字が示したのは、中国輸出の失速そのものより、年初の特殊要因がはがれたあとの地力だ。前倒し出荷と春節要因が薄れた状態で、対米減と高エネルギー価格にどこまで耐えられるのか。ここからの焦点は、欧州・ASEAN向けの下支えが続くか、高付加価値分野の強さがどこまで全体を支えられるか、そして原油高が主要輸出先の需要をどの程度冷やすかに移る。
3月統計は、危機の確定ではない。だが、楽観を続けるには材料が減り始めた。その意味で、中国の外需が本当の持久力を問われる入り口に差しかかったことは間違いない。
(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

