政府は2026年4月23日に公表した月例経済報告で、景気の総括判断を「緩やかに回復しているが、中東情勢の影響を注視する必要がある」と据え置いた。全体判断は3月と同じだが、内訳をみると、企業や公共部門の動きと家計部門の慎重さが併存する構図がより鮮明になっている。
4月分では、設備投資が「緩やかに持ち直している」から「持ち直している」に上方修正された。公共投資も「底堅く推移している」から「堅調に推移している」に引き上げられた。一方、個人消費は「持ち直しの動きがみられる」を維持しつつ、「消費者マインドがこのところ弱い動きとなっていることに注意が必要」との文言が新たに加わった。
総括判断は据え置き、内需の見え方は分かれた
4月の月例経済報告で変わらなかったのは、景気全体に対する政府の総括判断だ。雇用・所得環境の改善や各種政策の効果が緩やかな回復を支えるとの見方を維持しつつ、中東情勢の影響、金融資本市場の変動、米国の通商政策をめぐる動向に注意が必要だとしている。
ただし、需要項目ごとの評価は一様ではない。設備投資と公共投資は上方修正された一方で、個人消費には慎重な注記が付いた。景気全体は回復基調とされながらも、その中身には温度差があることが今回の特徴だ。
設備投資と公共投資は上方修正された
設備投資について月例経済報告は、2025年10〜12月期の法人企業統計季報で設備投資が前期比3.5%増となったことや、資本財総供給に持ち直しの動きがみられることを挙げている。日銀が4月の支店長会議でまとめた地域景況感でも、人手不足対応や生産性向上を目的とした省力化・デジタル化投資を中心に、企業の積極的な投資姿勢が維持されているとの報告が多かった。
公共投資も堅調さが確認された。月例経済報告では、2月の公共工事出来高が前月比1.9%増、3月の公共工事請負金額が同0.9%増、2月の公共工事受注額が同18.4%増となったとしている。補正予算や2026年度予算の執行もあり、先行きについても堅調に推移していくことが見込まれるとした。
個人消費は持ち直しを維持しつつ、心理面に弱さが出た
個人消費について政府は、基調判断そのものは維持した。もっとも本文では、消費動向指数や小売関連統計を踏まえたうえで、消費者マインドがこのところ弱い動きとなっていることに注意が必要だとしている。月例経済報告では、2月の世帯消費動向指数が前月比0.1%減、小売業販売額が前月比2.0%減となったことも示された。
日銀の4月支店長会議でも、個人消費はまだら模様だ。イベント関連の支出や高額品販売、外食には底堅さがある一方、日常消費ではスーパーなどを中心に節約志向の影響が続いているとの報告があった。今回の月例経済報告で加わった「消費者マインド」への言及は、こうした慎重さを政策文書の中に明示したものといえる。
中東情勢への警戒はエネルギーと家計の両方に関わる
政府が総括判断の中で中東情勢を繰り返し挙げる背景には、日本のエネルギー調達構造がある。資源エネルギー庁によれば、日本は化石燃料のほとんどを海外から輸入しており、原油の中東依存度は9割を超える。一方でLNGは調達先の多角化が進み、中東依存度は約1割だという。
資源エネルギー庁は、中東情勢の緊迫化を受けて代替調達や国家備蓄原油の放出を進めている。こうした対応で足元の供給確保を図っているものの、原油価格や物流コストの上昇が長引けば、企業収益や家計負担の双方に影響しうる。日銀の地域報告でも、エネルギー価格を中心とした物価上昇や仕入れコスト上昇を懸念する声が出ている。
景気全体は回復基調でも、家計の実感にはなお慎重さが残る
今回の月例経済報告は、景気全体の基調判断を維持しながら、内需の中身に差があることをより明確に示した。企業の設備投資と公共投資は上向きだが、個人消費は持ち直しを維持しつつも、心理面の弱さへの注意が加わった。
景気の総括判断だけを見ると回復が続いているように映るが、家計部門まで同じ強さで改善しているとは言いにくい。4月の月例経済報告は、企業・公共部門の底堅さと、物価や中東情勢を背景にした家計側の慎重さが併存する日本経済の現在地を示した。
(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

