ロシア産原油に再び例外措置──米政権が市場安定を優先した背景

米財務省は2026年4月17日、ロシア産の原油・石油製品について、一定条件のもとで取引を認める一般許可 GL134B を出した。スコット・ベッセント財務長官が4月15日に「延長しない」と述べてから間を置かない判断であり、市場の安定を優先した措置とみられる。

今回の措置は「制裁の全面解除」ではない。米財務省の外国資産管理室(OFAC)が、条件付きで取引を認める期間限定の例外措置を再発行した形だ。

目次

何が認められたのか

GL134B が認めたのは、2026年4月17日午前0時1分(米東部夏時間)までに船積みされたロシア産原油・石油製品の売却、輸送、荷下ろしなどだ。期限は2026年5月16日午前0時1分までで、イラン、北朝鮮、キューバ、ウクライナの被占領地域に関わる取引などは対象外とされている。

3月に出されていた GL134A は4月11日に失効しており、今回はその後継として GL134B が出された。制度上は無制限な取引再開ではなく、あくまで特定条件を満たす貨物に限った時限的な例外措置と理解するのが正確だ。

解説コラム:GL134A と GL134B とは何か

GL134A/GL134B は、米財務省外国資産管理室(OFAC)が発行する「一般許可(General License)」の番号だ。対ロ制裁の枠組みの中で、本来は禁止されている取引について、条件と期限を限定して例外的に認めるための措置を指す。

2026年3月に出された GL134A は、すでに船に積み込まれていたロシア産原油・石油製品について、一定期間の売却や輸送を認める内容だった。これは制裁を緩めるというより、洋上在庫が宙に浮き、物流や市場が混乱する事態を避けるための「安全弁」と位置づけられていた。

その GL134A が4月11日に失効した後、事実上の後継として発行されたのが GL134B だ。対象や条件はほぼ同じで、新たなロシア産石油取引を解禁するものではない。あくまで「特定日時までに船積みされた貨物」に限った、時限的な例外措置である。

番号が更新されたからといって、制裁政策が大きく転換したわけではない。GL134B は、制裁維持と市場安定の間で、米政権が選択した極めて限定的な調整策と見るのが実態に近い。

なぜ方針が変わったのか

背景にあるのは、中東情勢の緊迫によるエネルギー供給不安だ。ホルムズ海峡をめぐる緊張が高まるなか、原油市場では供給不足と価格上昇への警戒が強まっていた。

米政権は3月にも同様の一般許可を出しており、その際ベッセント財務長官は「市場の安定を促し、価格を低く抑えるため」の措置だと説明していた。今回も同じ文脈で、市場に流せる供給を確保し、価格急騰を抑える狙いがあったとみられる。

Reuters によると、フィリピンは米国に対し、この例外措置の延長を求めていた。中東からの代替調達が不安定になるなか、ロシア産原油を完全に止めることが難しい国があることも、政策判断に影響した可能性がある。

制裁維持と市場安定の綱引き

対ロ制裁の狙いは、ロシアの戦費調達を抑えながら、世界の石油供給は極端に細らせないことにある。価格上限制度や一般許可は、その両立を図るための仕組みとして運用されてきた。

もっとも、今回のような例外措置はロシアの石油収入を下支えしかねない。ウクライナのゼレンスキー大統領は3月の前回措置について「正しい判断ではない」と批判し、AP によるとドイツのメルツ首相も米国の判断は「誤ったシグナルだ」と述べている。市場安定を重視する必要がある一方で、制裁の実効性が揺らぐとの反発は根強い。

5月16日以降はどうなるのか

次の焦点は、今回の一般許可が期限を迎える2026年5月16日以降の扱いだ。中東情勢の緊張が続けば、同様の例外措置が再び検討される可能性はある。

今回確認できた事実は、4月15日に延長しないとされた一般許可が、4月17日に GL134B として置き換えられたことだ。米政権が対ロ制裁を維持しつつも、エネルギー市場の混乱を前に例外措置を再び選んだことは、足元の原油市場が政策判断に重くのしかかっていることを示している。

(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

目次