ラピダス近くで後工程研究拠点整備、千歳で半導体集積は広がるか

日本が北海道・千歳で進めているのは、ラピダスの工場建設だけではない。

ラピダスや大学など計26機関が参加する技術研究組合「最先端半導体技術センター(LSTC)」は2026年4月、千歳市で先端後工程の研究拠点整備を進める計画を打ち出した。4月17日の会見では、2028年度の稼働を目指し、およそ900平方メートルのクリーンルーム整備などを含め、今後5年間で約173億円の事業費を見込むと説明した。

ただ、ここで押さえておきたいのは、この施設がラピダス自身の後工程拠点と同じものではないことだ。千歳ではいま、企業の開発拠点と、大学を含むオープンイノベーション拠点の両方が動き始めている。

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LSTCが整備するのは大学内の先端後工程拠点

LSTCが4月13日に公表したNEDO採択事業の名称は、「光電融合を加速する半導体パッケージング技術開発と先端後工程拠点形成」だ。公立千歳科学技術大学の発表によれば、拠点は同大学キャンパス内に新棟を建設して整備する予定で、300mm角パネルに対応した先端後工程のオープンイノベーション拠点として位置づけられている。

研究テーマも、単なる実装設備の整備にとどまらない。LSTCの説明では、光エンジンと光RDLインターポーザを高精度に接合する技術を開発し、AIや高性能計算向けの次世代パッケージングにつなげる構想だ。人材育成まで含めて、大学を巻き込んだ研究基盤を千歳に置く点に特徴がある。

RapidusのRCSとは別の役割を持つ

一方、Rapidusは4月11日に千歳で解析センターと後工程研究開発拠点「Rapidus Chiplet Solutions(RCS)」の開所式を開いた。こちらはセイコーエプソン千歳事業所内に設けたRapidus独自の拠点で、同社公表によれば、600mm角のRDLインターポーザ試作を含む限定運用を経て、本格運用に入る段階にある。

つまり、LSTCの新施設とRCSは一続きの同一施設ではない。RCSはRapidusの後工程開発を担う企業拠点で、LSTC側は大学や研究機関も交えた先端後工程の共同研究拠点という位置づけになる。両者は別案件だが、千歳で前工程と後工程、研究、人材育成が重なり始めている点では同じ方向を向いている。

なぜ「後工程」が重要になっているのか

半導体製造は大きく前工程と後工程に分かれる。前工程はシリコンウエハー上に微細な回路を形成する工程で、Rapidusが千歳で量産を目指す2ナノ世代のロジック半導体はここに当たる。後工程は、完成したチップを切り出し、基板に実装し、配線し、製品として使える形に仕上げる工程だ。

従来は前工程に注目が集まりやすかったが、AI向け半導体では後工程の重要性が一段と増している。1枚の巨大チップだけで性能を伸ばし続けるのが難しくなる中、複数のチップを組み合わせるチップレットや先端パッケージングの比重が高まっているからだ。競争力は「どこまで微細化できるか」だけでなく、「どうつなぎ、どう実装するか」にも左右される。

千歳に集積する意味

千歳で後工程拠点の整備が相次ぐ意味は、前工程の量産拠点の周辺に、解析、実装、大学研究、人材育成の機能が並び始めたことにある。東哲郎LSTC理事長は4月17日の会見で、ラピダスの近くに研究施設があることの重要性に触れ、素材サプライヤーや研究機関の集結に期待を示した。

もちろん、現時点で千歳に完成した半導体エコシステムがあるとまでは言えない。ただ、工場だけでなく、後工程や研究教育機能まで同じ地域に置こうとする動きが具体化してきたのは確かだ。日本の先端半導体政策が、単独工場の整備から地域集積の形成へ一歩進んだとみることはできる。

競争力を決めるのは量産以降だ

もっとも、拠点が整えばそのまま競争力になるわけではない。Rapidusが挑む先端ロジック分野では、TSMC(NYSE: TSM)やSamsung Electronics(KRX: 005930)といった既存大手が先行している。Rapidusは2027年度後半の量産開始を目標に掲げるが、評価を左右するのは量産後の歩留まりや顧客開拓だ。

それでも、千歳で起きている変化は見逃しにくい。前工程の工場の周辺に、後工程の研究開発、大学拠点、人材育成が重なり始めたことで、日本の半導体再建は「工場を建てる段階」から「周辺機能をそろえる段階」へ入りつつある。今回のLSTC施設計画は、その流れを示す一手といえる。

(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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