アメリカ・耐久財受注(Durable Goods Orders, Advance Report)は、製造業の中でも寿命が3年以上とされる「耐久財」に対して、企業などが発注した金額の変化を示す経済指標である。米商務省の国勢調査局(Census Bureau)によって毎月公表され、その速報値は翌月の下旬に発表される。
耐久財とは、自動車、機械、電化製品、航空機などの長期使用に耐える製品を指し、景気に対する感応度が高い。特に企業の設備投資の意欲や家計の購買行動を反映するため、景気の先行指標として注目される。
指標の意義と活用される場面 #
この統計の最大の意義は、「企業の将来への期待」が数字に表れる点にある。設備や大型機械への注文が増えている場合、それは企業が将来の需要拡大を見込んで投資に踏み切っていると解釈できる。反対に、受注が減っている場合は、景気後退の兆しや不確実性を背景に設備投資を抑えている可能性がある。
連邦準備制度(FRB)や経済アナリスト、株式・為替市場の参加者もこの指標を注視しており、発表直後に相場が大きく動くこともある。特にコア耐久財(国防および航空機を除く)受注は、企業の基礎的な投資意欲を表す指標として重要視されている。
内容と特徴 #
耐久財受注の速報値には、大きく分けて「全体の受注」と「輸送機器を除いた受注」、「コア資本財(非国防資本財・航空機除く)」など、複数の区分が含まれる。航空機などの一部耐久財は金額が大きく、受注の増減も激しいため、ブレの少ないコア指標が注目されやすい。
速報値はあくまで初期段階の集計であり、翌月に確報値が公表される。このため、速報値の精度や改定幅にも注意を払う必要がある。
他の指標との比較と関係性 #
耐久財受注は、GDPの「民間設備投資」に先行する傾向があるため、景気循環の分析において重要な補助線となる。たとえば、PMI(購買担当者景気指数)や鉱工業生産と組み合わせて分析することで、米製造業の温度感をより立体的に把握することができる。
また、個人消費とは異なり、法人・政府などの意思決定による発注が中心となるため、家計の景気マインドとは異なる角度からの分析が可能である。
読み解き方と注意点 #
速報値はスピード重視のデータであるため、情報のブレや後日の修正が比較的多い。単月の結果だけに注目するのではなく、3か月移動平均や前年同期比といった視点でトレンドを捉えることが望ましい。
また、航空機などの特殊な大型受注が全体の数字を大きく押し上げることもあるため、コア指標(輸送機器除く)とセットで読むことで、より本質的な投資動向を掴むことができる。