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英国・BRC既存店売上高とは

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英国・BRC既存店売上高(BRC Like-for-Like Retail Sales)は、イギリス国内の小売業界における前年同月比での売上動向を示す指標で、英国小売協会(British Retail Consortium: BRC)が毎月公表しています。これは、同一店舗ベースでの売上高の変化を捉えることから、実質的な小売業の体力や消費者需要の変化をより的確に測定できる“現場密着型”の経済指標です。

同指標は、既存店(前年同月も営業していた店舗)の売上のみを対象とするため、新規出店や閉店といった構造変化の影響を排除し、純粋な需要動向の変化を観察することができます。

市場での意義と注目される理由 #

イギリスの消費者支出はGDPの6割超を占めるため、小売売上の変動はそのまま景気全体の先行指標として機能します。BRC既存店売上高は、月次の速報性が高く、政府統計(公式の小売売上高統計)よりも数日早く発表されることから、市場参加者の注目度が高い指標です。

とりわけ、クリスマスシーズンやブラックフライデーといった消費の山場では、前年比プラスかマイナスかによって景気の「肌感覚」が伝わりやすく、ポンド相場や小売関連株の値動きにも反映されることがあります。

発表タイミングと構成内容 #

BRC既存店売上高は、調査対象月の翌月初旬(通常は第1火曜日)に発表されます。公表内容は、前年同月比の増減率を中心に構成されており、インフレ調整を伴わない「名目値」での変化が示されます。

また、同時に発表される「全体小売売上高(Total Retail Sales)」との比較によって、新規出店などの影響を除外した既存店の実力が浮き彫りになります。業種別やカテゴリ別の内訳は公表されませんが、食品・衣料・オンライン販売の動向が背景として注目されることも多く、BRC側からコメントが添えられる場合もあります。

他の小売統計との違い #

英国の政府統計局(ONS)が発表する公式の「小売売上高統計」は、より網羅的で細分類されたデータを提供していますが、その分、発表までにタイムラグがあります。対して、BRC統計は、調査対象企業が自発的に参加していることから速報性に優れ、マーケットの“初動”を占う指標として使われる傾向があります。

また、ONS統計は季節調整済みやインフレ調整済みの実質値である一方、BRC統計は名目値であるため、インフレ率が高い環境では数値の読み解きに注意が必要です。

読み解き方と注意点 #

BRC既存店売上高を見る際は、単月の増減だけでなく、前年のベース効果(前年が特に高かったか低かったか)や、気候変動、祝日、ストライキといった一時的要因も考慮する必要があります。

また、実質的な消費の強弱を捉えるためには、同時期のインフレ率(特に食品・エネルギー価格)や実質賃金の動きと照らし合わせることが重要です。名目ベースの売上が伸びていても、インフレによる価格上昇に過ぎない場合は、実質的な購買力の改善とは言えません。

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