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豪・賃金指数(Wage Price Index:WPI)とは

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豪・賃金指数(Wage Price Index:WPI)は、オーストラリア国内の労働者に支払われる賃金の変化を測定する経済指標であり、インフレ圧力や労働市場の逼迫度を読み解く上で重要な役割を果たします。発表はオーストラリア統計局(Australian Bureau of Statistics:ABS)によって四半期ごとに行われます。

この指標は、雇用主が支払う時給ベースの報酬を、職種や労働内容が一定であるという前提で調整し、時系列での賃金水準の純粋な変化を示すことを目的としています。


市場での注目点と政策への影響 #

WPIは、オーストラリア準備銀行(RBA)が金融政策を決定する際の重要なインフレ関連指標の一つです。賃金が加速度的に上昇すれば、消費者物価の持続的な上昇(いわゆるコストプッシュ型インフレ)につながる可能性があり、政策金利の引き上げにつながる材料となります。

特に近年では、インフレ抑制と実質賃金のバランスが世界的に注目されており、WPIの動向が発表されるたびに、オーストラリアドル(AUD)や債券市場が大きく反応することがあります。


発表タイミングとデータの構成 #

WPIは四半期ごとに発表され、通常は対象期間終了後の約6〜7週間後にリリースされます。たとえば、1〜3月期のデータは5月中旬に公表されるのが通例です。

指数は以下の2種類で構成されます:

  • 賃金指数(ベース賃金のみ):ボーナスやインセンティブを除く純粋な基本給の変化
  • 総報酬指数(Total hourly rates of pay including bonuses):一時金などを含んだ総支払い額の変化(補足的)

WPIは産業別・地域別・公的部門と民間部門の区別など、多角的な切り口で分析可能となっており、特定産業における労働需給のひっ迫度を知る手がかりにもなります。


他国との比較と豪州特有の特徴 #

他国の賃金指標と異なり、WPIは労働市場の構造的変化(たとえば高スキル職への移行など)を排除し、「同じ職種・労働条件での賃金変化」を純粋に測定しようとする点でユニークです。

これは、雇用の質や雇用構成の変化に影響されにくいため、物価との連動性やインフレ評価において、よりブレの少ないデータとされています。そのため、消費者物価指数(CPI)と並んで、基調的な物価上昇圧力を測定する基準として重視されます。


読み解き方と注意点 #

WPIを評価する際には、前期比と前年同期比の両方を確認することが重要です。前年同期比での上昇が加速していれば、賃金主導型のインフレ懸念が高まっている可能性があり、金融引き締めの材料と見なされることがあります。

一方で、インフレが高止まりしているにもかかわらずWPIが伸び悩んでいる場合は、実質賃金が低下していることを意味し、家計の消費余力が弱まっていると評価されることになります。

また、WPIが労働供給のひっ迫や団体交渉の影響など、構造的要因によって上昇しているかどうかも併せて確認することで、より深い分析が可能になります。

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