特殊詐欺・SNS詐欺、被害が深刻化──最新動向と警戒ポイント

社会問題化している特殊詐欺の被害が、近年さらに深刻さを増しています。特に高齢者を狙った手口や、SNSを介した新種の詐欺が急増。警察庁の最新資料から、被害の現状や傾向、リスク要因を詳しく解説します。


1. 特殊詐欺全体の現状

高齢者を中心に被害が急増し、手口も多様化。被害額は毎月100億円を超える月も。

特殊詐欺とは、電話や手紙、ネットを使って他人をだまし金銭をだまし取る犯罪の総称です。2024年から2025年にかけて、その認知件数・被害額はともに急増しており、依然として深刻な社会問題となっています。

  • 2024年1月~2025年4月まで、特殊詐欺の認知件数・被害額ともに大幅増加傾向にあります。
    • 認知件数は2024年1月1,039件→2025年4月2,421件
    • 被害額は2024年1月22.69億円→2025年4月115.81億円(ピークは2025年3月138.02億円)
  • 一部の月では被害額が100億円を大きく上回るなど、被害の拡大が続いています。

2. 類型別の傾向

中でも“オレオレ詐欺”の増加が顕著。架空料金請求詐欺も増えています。

特殊詐欺にはさまざまなタイプがありますが、近年特に増えているのが「オレオレ詐欺」です。親や孫になりすました電話で金銭をだまし取る手口で、前年同期比で認知件数・被害額ともに突出して増加しています。

  • オレオレ詐欺が特に急増。前年同期比で認知件数+223.2%、被害額+382.9%
  • 架空料金請求詐欺も+18.8%と増加
  • 一方、還付金詐欺預貯金詐欺キャッシュカード詐欺盗は減少傾向

3. 被害者層

特殊詐欺のターゲットは圧倒的に高齢者。特に金融系詐欺は9割以上が65歳以上。

被害者の約半数は高齢者で、詐欺の種類によってはその割合がさらに高まります。家族を装った手口や公的機関を語る詐欺で、高齢者が狙われやすい構図が鮮明です。

  • 全体の被害者の半数以上が高齢者(65歳以上)
    • 特に「預貯金詐欺」「還付金詐欺」は被害者の9割以上が高齢者
    • 男女別では、オレオレ詐欺の女性被害が目立つ

4. 手口・交付形態の多様化

現金振込から、現金手交・キャッシュカードの受け渡し、さらには電子マネー・暗号資産まで。

被害金の受け渡し方法も年々多様化。従来の振込や現金手渡しに加え、電子マネーや暗号資産を悪用するケースが増えています。デジタル化の進展が詐欺手口にも波及しています。

  • 被害金の交付は**「振込型」が最も多く、次いで「現金手交型」「キャッシュカード手交・窃取型」**
  • 最近は「電子マネー型」や「暗号資産送信型」も一定数存在

5. SNS型投資・ロマンス詐欺の現状

SNSやマッチングアプリを悪用した新たな詐欺が横行。被害額は1件あたりも高額に。

SNSやマッチングアプリの普及を背景に、「SNS型投資詐欺」「SNS型ロマンス詐欺」が急増。巧妙なやりとりで信頼を得てから投資や送金を持ちかける手口が横行し、被害額が急拡大しています。

  • 認知件数3,243件/被害総額342.1億円(前年同期比でやや減少)
  • うちSNS型投資詐欺が1,672件、ロマンス詐欺が1,571件
  • 1件あたりの被害額も高額化

6. SNS型投資詐欺の特徴

InstagramやLINE、Facebookなど、日常的なSNSが“危険な出入口”に。

SNS型投資詐欺は、日常的に使われるSNSを通じて巧みにターゲットへ近づきます。特にInstagramやLINEなどが被害の“出入口”となるケースが多くなっています。

  • 主な接触媒体:Instagram(20.6%)、LINE(15.0%)、Facebook(13.2%)、X(10.9%)、TikTok(7.8%)
  • 被害時の連絡手段:LINEが約9割
  • 被害金の交付:振込型71.7%、暗号資産型25.9%
  • 当初の接触方法:ダイレクトメッセージが半数(50.2%)、バナー広告等が28.2%

7. SNS型ロマンス詐欺の特徴

恋愛感情を利用した詐欺が、マッチングアプリやSNSで広がっています。

マッチングアプリやSNSをきっかけに恋愛関係を装い、金銭をだまし取る「ロマンス詐欺」も後を絶ちません。被害者の心理的な弱みに付け込む点が特徴です。

  • 主な接触媒体:マッチングアプリ(32.1%)、Instagram(23.9%)、Facebook(19.1%)、TikTok(8.2%)
  • 被害時の連絡手段:LINEが92.2%
  • 被害金の交付:振込型60.9%、暗号資産型32.5%、電子マネー型5.3%
  • 当初の接触方法:ダイレクトメッセージが91.0%

8. インターネットバンキング利用の拡大

詐欺の約6割はネットバンキング経由で送金、デジタル社会の新たな落とし穴に。

SNS型詐欺で特に目立つのがネットバンキング経由の被害。スマートフォンやPCで手軽に送金できる反面、詐欺グループにとっても資金移動がしやすくなっています。

  • SNS型詐欺被害のうち、約6割がネットバンキング経由で振込
    • 被害額でもネットバンキングが7割を占める

9. 今後の警戒ポイント

高齢者に限らず、あらゆる世代がリスクに直面。家族や金融機関の“声かけ”が被害防止の鍵。

詐欺の手口は日々進化し、誰もが被害に遭うリスクがあります。SNSやネットサービスを利用するすべての人が、疑わしい連絡や投資話、恋愛話に注意し、家族や周囲との情報共有を心がけることが重要です。

  • 特殊詐欺全体が大幅増加中、特にオレオレ詐欺と高齢者被害が深刻
  • SNS型投資・ロマンス詐欺も依然高水準で、被害額が非常に大きい
  • 被害防止には、家族・知人間の声かけや、金融機関・警察による注意喚起の強化が必要

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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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