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米FOMC、政策金利は据え置き見通し──インフレと関税の不確実性が影響

米連邦公開市場委員会(FOMC)は、2025年5月7日(米東部時間)に2日間の会合を終え、同日14時(日本時間8日午前3時)に政策金利の判断を発表する予定だ。今回もFF金利誘導目標は4.25%~4.50%で据え置かれるとの見方が市場では大勢を占めている(出典:Forbes, CNBC)。

政策金利の水準は2024年12月の利下げ以降、3会合連続で据え置かれており、FRBは「インフレが持続的に鈍化する確信が持てるまで」利下げに踏み切らない方針を継続している。

利下げ時期は後ろ倒しか?──最新のドット・プロットに注目

市場参加者は、FOMC後の声明文とあわせて、今後の金融政策見通しのヒントをパウエル議長の会見(日本時間8日3:30~)から読み取ろうとしている。特に焦点となるのが、2024年12月に公表された経済見通し(SEP)とドット・プロットだ。

この中では2025年中に「2回の利下げ」が想定されており、当初見込まれていた「3回以上」から回数が引き下げられた。直近の強い雇用統計やインフレ指標によって、年央以降の利下げ実施が難しくなるとの見方が増している(出典:CME FedWatch)。

インフレ圧力は関税で再燃の懸念

2025年4月にはトランプ大統領が就任後に導入した**「10%の普遍関税」が発効しており、これがインフレに与える影響が懸念されている。実際に3月のコアPCEインフレ率(個人消費支出の中核指数)は前年同月比で2.6%前後**とされ、FRBの物価安定目標である2%を依然として上回っている。

パウエル議長は4月の講演で、「関税は短期的にインフレを押し上げる要因となる可能性がある」と認めながらも、「金融政策は構造的要因よりもマクロ経済全体への影響に重点を置く」と述べ、慎重な姿勢を示している。

パウエル会見に注目すべきポイント

今回の記者会見で注目される点は以下の通り:

  • インフレ見通し:関税の影響をどの程度短期的と見ているか
  • 労働市場の評価:堅調な雇用に対する見解
  • 経済成長率と消費の評価:鈍化傾向への認識
  • 次回6月FOMCへの布石:利下げの可能性に含みがあるか

ReutersCNBCなどの海外メディアでは、「パウエル議長がハト派的なトーンに転じれば、株式市場は上昇、ドルは下落する可能性がある」と分析しており、発言一つで市場のセンチメントが大きく動くリスクがある。

金融市場は分岐点──“長期高金利”か“慎重な緩和”か

今回のFOMCは、米金融政策の大きな転換点になり得る。強い経済と根強いインフレ、そして新たな貿易政策という3つの要因が重なり、FRBは簡単に利下げへと舵を切ることができない状況にある。

市場が期待する“年内の利下げ”が現実味を帯びるのか、それとも“長期高金利”という新たな常態が続くのか。今夜のFOMC結果とパウエル議長の会見は、その分岐点として歴史的な意味を持つ可能性がある。

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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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