カナダ・雇用統計(Canada Labour Force Survey)は、カナダ統計局(Statistics Canada)が毎月発表する、国内の雇用情勢を把握するための主要な経済指標です。米国の雇用統計(非農業部門雇用者数など)と同様に、労働市場の健全性や景気動向を評価する上で重視され、金融市場でも強い影響力を持ちます。
発表内容には、雇用者数の増減、失業率、労働参加率、フルタイムとパートタイムの構成、州別・産業別の雇用動向などが含まれ、多角的な分析が可能です。
注目される理由と市場への影響 #
カナダの雇用統計は、中央銀行であるカナダ銀行(Bank of Canada)が金融政策を決定する際の基礎データとなるため、利上げや利下げの観測材料として注目されます。たとえば、雇用者数が市場予想を大きく上回れば、景気加熱やインフレ圧力が意識され、政策引き締めへの思惑が高まることがあります。
また、カナダドル(CAD)は資源国通貨であると同時に、経済データへの反応が早い通貨でもあるため、雇用統計の発表直後には為替市場で大きく変動することがあります。特に対米ドル(USD/CAD)や対円(CAD/JPY)などでその傾向が顕著です。
発表スケジュールと構成内容 #
雇用統計は、調査対象月の翌月上旬(通常は第1金曜日)に公表され、米国の雇用統計と同日に発表されることが多く、比較されることも少なくありません。内容には以下のような主要指標が含まれます。
- 雇用者数増減:前月比で何人の雇用が増えたか(または減ったか)
- 失業率:労働力人口に対する失業者の割合
- 労働参加率:働く意思のある人の割合(就業者+求職者)
- 賃金の伸び:時給や週給の前年比変化率(最近ではインフレとの比較が重視)
加えて、男女別・年齢層別・地域別などの詳細な統計も公表されており、政府・企業・アナリストが精緻な雇用分析を行う上で欠かせない情報源となっています。
他国との違いや特徴 #
カナダの雇用統計は「サンプル調査」に基づいており、変動がやや大きくなる傾向があります。これは、人口規模が米国より小さいため、少数の事例が統計全体に与える影響が相対的に大きくなるためです。そのため、単月の数値よりも、3か月移動平均やトレンドの継続性を見る視点が重要になります。
また、フルタイムとパートタイムの比率や、雇用の内訳(たとえば自営業者 vs 雇用者)も重視されており、単なる“数の増減”以上に、雇用の質を評価する傾向が強いのも特徴です。
読み解き方と注意点 #
カナダ・雇用統計を正しく読み解くには、以下のような視点が役立ちます。
- 雇用者数の増減が「フルタイム」か「パートタイム」かを確認する
- 失業率が低下しても、労働参加率が低下していれば要注意
- 賃金上昇がインフレ率を上回っていれば、実質所得の改善と評価可能
また、月によっては季節調整の影響や一時的要因で大きなブレが出ることがあるため、単月での判断ではなく、複数月の推移や他の経済指標との併用が望まれます。