2026年3月、EUで登録されたバッテリーEV(BEV)は23万4532台と、前年同月比48.9%増となった。英国でも3月のBEV登録は8万6120台で24.2%増え、欧州の電動車市場は春先に強い伸びを示した。
ただし、この数字だけで「欧州がEV一辺倒になった」とみるのは早い。欧州自動車工業会(ACEA)の2026年1〜3月期データでは、EU市場でBEVのシェアは19.4%まで上がった一方、ハイブリッド車は38.6%でなお最大勢力だった。内燃機関車から電動車へのシフトは進んでいるが、その中心はまだEVだけではない。
なぜ3月に伸びたのか
今回の伸びを支えた要因として、まず挙げやすいのは各国のインセンティブ政策だ。ACEAは2026年1〜3月期のEU市場について、主要国で導入・改定された税制優遇や支援策が市場を支えたとしている。車両価格が高くなりがちなEVでは、購入補助や税制優遇の有無が需要を左右しやすい。
一方で、中東情勢に伴う燃料価格の上昇や先高観が、EVへの関心を後押しした可能性もある。もっとも、燃料高が今回の急増を直接引き起こしたと断定するのは難しい。少なくとも英国では、業界団体SMMTが3月実績の多くはイラン危機前に入っていた受注の反映だとみており、燃料高だけで販売増を説明するのは無理がある。
ハイブリッド優位は変わっていない
2026年1〜3月期のEU市場では、BEVのシェアが19.4%、プラグインハイブリッド車が9.5%、ハイブリッド車が38.6%だった。ガソリン車とディーゼル車の合計シェアは30.3%まで低下しており、内燃機関車の縮小は続いている。
それでも、電動化の主役がすぐにEVへ置き換わったわけではない。消費者から見れば、価格、充電環境、航続距離への不安を踏まえ、ハイブリッド車がなお現実的な選択肢になっている。今回の販売増は、EVの勢いを示す数字である一方、欧州市場がまだ複線的な電動化の途中にあることも示している。
中国勢との競争は一段と強まる
市場が拡大するほど、欧州メーカーにとって問題になるのは誰がその伸びを取り込むかだ。低価格帯のEVを前面に出すBYDなど中国勢は欧州市場で存在感を高めており、欧州大手にとっては需要回復がそのまま追い風になるとは限らない。
価格競争力のある中国メーカーがシェアを広げれば、欧州勢はEVの投入ペースだけでなく、価格設定や商品力でも対応を迫られる。欧州のEV市場は、脱炭素政策の成果を見る場であると同時に、域内メーカーと中国勢の競争が表面化する市場にもなっている。
いまの欧州市場をどう見るべきか
今回のデータから読み取れるのは、欧州の新車市場が政策の影響を強く受けながら電動化を進めているということだ。補助金や税制優遇が需要を下支えし、燃料価格の変動がEVへの関心を補強する局面はありうる。ただし、単月の販売増を一つの要因で説明するのではなく、政策、価格、商品競争が重なった結果として見るほうが実態に近い。
今後の見どころは三つある。第1に、各国の補助金や税制優遇が維持されるのか。第2に、ハイブリッド優位の構図がどこまで続くのか。第3に、中国勢の攻勢に欧州メーカーがどう対応するのかだ。3月の急増は、欧州のEV市場が拡大局面にあることを示したが、その中身は想像以上に複雑だ。
(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

