イラン情勢が日用品価格に波及か ナフサ調達難と定修集中で石化製品が大幅減

石油化学工業協会が2026年4月23日に公表した3月実績によると、プラスチックの基礎原料となるエチレンの国内生産量は27万2600トンと、前年同月比38.8%減った。包装材や食品用ラップに使う低密度ポリエチレンは41%減、ポリプロピレンは28%減、トルエンは15%減と、幅広い石油化学製品で落ち込みが目立った。

今回の減産は、イラン情勢の緊迫化に伴うナフサ調達不安だけでなく、ナフサ分解炉などの定期修繕の集中も重なった影響とみるのが正確だ。石化製品がすぐ店頭から消える局面ではないが、原料高と供給不安が長引けば、日用品や住宅設備の価格にじわじわ波及する可能性がある。

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3月の減産で何が起きたのか

石油化学工業協会の実績概要メモでは、3月のエチレン生産設備の実質稼働率は68.6%と、前月の75.7%から低下した。定修プラントは前月の2社2プラントから4社4プラントへ増えており、原料面の制約に加えて設備側の要因も生産を押し下げた。

石化製品の減産は、素材産業の中だけの話ではない。エチレンやプロピレンは、包装材、洗剤容器、塗料、接着剤、自動車部品、住宅設備など幅広い製品の起点になる。上流で生産が落ちると、川下のメーカーは原料確保や納期調整を迫られやすい。

なぜナフサが焦点になるのか

ナフサは原油を精製する過程で得られる軽質油で、石油化学工場で分解するとエチレンやプロピレンなどの基礎化学品になる。消費者が直接使う製品ではないが、プラスチックや合成樹脂の出発点にあたるため、供給が不安定になると影響範囲は広い。

今回は中東情勢の悪化で、ホルムズ海峡を通る輸送の不透明感が強まった。石油化学コンサルタントの柳本浩希氏は、3月には中東からのナフサ調達が難しくなり、各社が生産を絞ったとみている。ただ、石油化学工業協会の説明では、要因はあくまで中東情勢と定修集中の複合要因であり、単純に一つの原因へ絞るのは避けたい。

すぐに品不足になる状況ではない

石油化学工業協会は4月23日付のコメントで、原料のナフサや川中製品を含めれば、少なくとも化学品全体で国内需要4か月分を確保しているとしている。ポリエチレンやポリプロピレンなど主要石油化学製品の在庫も、国内需要の3か月以上の水準を維持しており、直ちに供給困難となる状況ではないとの認識を示した。

政府も全体量は確保できているとの立場だ。赤澤亮正経済産業相は2026年4月14日の会見で、日本全体として必要な量は確保できている一方、一部で供給の偏りや流通の目詰まりが起きていると説明した。量の不足というより、現場で必要な形に原料や中間材が届きにくいことが混乱を広げている。

それでも価格転嫁リスクは残る

懸念が大きいのは、目に見える欠品よりもコスト上昇の連鎖だ。帝国データバンクが2026年4月17日に公表した調査では、主要石油化学製品メーカー52社から直接・間接に仕入れる製造業は全国で4万6741社に上り、集計対象の製造業の30.4%を占めた。ナフサ由来の原料高が長引けば、中小製造業の採算悪化や価格転嫁圧力が広がりやすい。

足元では個別企業にも影響が出ている。Reutersは4月15日、関西ペイント(4613)でシンナー関連製品の配送調整や値上げが進み、住設分野ではTOTO(5332)、LIXIL(5938)、パナソニック ホールディングス(6752)、クリナップ(7955)などで納期への影響が出ていると報じた。素材の不足が、住宅設備や補修関連、包装材のコストに波及し始めている構図だ。

価格はすぐには戻りにくい

4月以降は、会員各社がペルシャ湾以外からの代替調達を進めている。ただ、柳本氏は、ナフサを輸出していた一部製油所が打撃を受けている可能性もあり、価格がすぐ以前の水準まで下がるとは想定しづらいとみる。

つまり、供給の全面停止を心配する段階ではない一方、原料コストの高止まりが長引けば、食品包装、日用品、住宅設備など生活に近い分野で値上げや納期遅延が広がる余地は残る。今回の論点は「明日から買えなくなるか」ではなく、「時間差でどこに負担が出るか」を見極めることにある。

まとめ

3月の石化製品減産は、イラン情勢を背景とするナフサ調達不安と、国内設備の定修集中が重なった結果と整理するのが妥当だ。現時点では在庫と代替調達で全体供給は維持されているが、調達コストの上昇と流通の目詰まりは解消しきれていない。日用品や住宅設備の価格動向を見るうえでは、原油だけでなくナフサ由来の素材価格にも目を向ける必要がある。

(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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