米国株最高値と円相場、米中・イラン協議に注目
米国市場では、4月の雇用統計が労働市場の底堅さを示したことを受け、主要株価指数がそろって反発した。ナスダック総合指数とS&P500は最高値を更新し、AI関連需要を背景に半導体関連株への買いも目立った。一方、為替市場ではドル円が156円台で推移し、米財務長官の訪日や日銀の利上げ観測、為替介入への警戒が円売り材料を一時的に後退させる可能性がある。今週は米中首脳会談、イラン協議、米CPI、日本企業の決算発表が焦点となる。
米国株は雇用統計を受けて反発し、ナスダック総合指数とS&P500が最高値を更新した。ドル円は156円台で推移し、米中首脳会談、イラン協議、米CPI、日本企業の決算発表が今週の焦点となる。
ナスダック総合指数とS&P500が最高値を更新し、AI関連需要を背景に半導体関連株への買いが目立った。
日銀の6月利上げ観測や米財務長官の訪日もあり、円売り材料は一時的に後退している。
米中首脳会談、イラン協議、米CPI、日本企業の決算発表が市場の焦点となる。
米国市場・経済指標
ナスダックとS&P500が最高値更新、半導体株に買い
先週金曜日のニューヨーク株式市場では、ダウ工業株30種平均が12ドル高の4万9,609ドル、ナスダック総合指数が440ポイント高の2万6,247、S&P500が61ポイント高の7,398となった。ナスダックとS&P500はいずれも最高値を更新した。
買いを支えたのは、4月の雇用統計を受けた労働市場への安心感である。AIの普及によるメモリ需要の拡大を見越し、マイクロン・テクノロジーが15%、サンディスクが16%上昇し、半導体関連銘柄にも買いが波及した。ただ、米国とイランの協議進展を見極めたいとの慎重姿勢も残り、午後にかけて上げ幅は縮小した。
米4月雇用統計は11万5,000人増、失業率は4.3%
米国の4月雇用統計では、非農業部門の雇用者数が前月から11万5,000人増加し、市場予想を大きく上回った。失業率は4.3%で前月から横ばいとなり、労働市場の底堅さを示す結果となった。
平均時給は前年同月比3.6%上昇し、伸びは前月から0.2ポイント拡大した。一方、前月比では0.2%上昇と、市場予想の0.3%を下回った。雇用環境は堅調との見方がある一方、今後は雇用よりもインフレ動向に市場の関心が移る可能性がある。
ミシガン大学消費者信頼感指数は48.2に低下
5月のミシガン大学消費者信頼感指数の速報値は、前月から1.6ポイント低下し48.2となった。市場予想を下回り、過去最低を記録した。一方で、景況感の先行きを示す期待指数は小幅に上昇した。
ガソリン価格の高騰がコスト圧力となっているとの指摘があり、エネルギー価格が下落するまでは消費者心理の改善は限定的になる可能性がある。今週発表される米CPIについては、4月の前月比が0.6%に低下するとの見方があるが、財・サービス価格への波及度合いが注目点となる。
為替・金利
ドル円は156円台、当面は上値の重い展開との見方
ドル円は156円30銭台から50銭台で推移している。ユーロ円は184円60銭台、オーストラリアドルは113円近辺、英ポンドは213円30銭台から80銭台、ブラジルレアルは31円90銭台、トルコリラは3円44銭台近辺となっている。
ドル円の予想レンジは1ドル156円ちょうどから157円50銭とされる。イラン情勢の緊張緩和をめぐる観測から原油価格と金利が低下しており、米ドルは頭の重い展開になりやすいとの見方がある。為替介入への警戒感もあり、ドル円の戻りは限定的とみられている。
中期的には円安予想が残る一方、日銀の6月利上げ観測や米財務長官の訪日もあり、円売り材料は一時的に後退している。年内のドル円は153円から158円の範囲を想定する見方もある。
日本の10年債利回りは2.470%に低下
日本の10年債利回りは先週金曜日に2.470%へ低下した。直近では長期金利が一時2.5%に達しており、インフレ期待で一定程度説明できるとの見方がある。ただ、防衛費拡大が財政に与える影響を考えると、今後の金利上昇には警戒が必要との指摘もある。
地政学・エネルギー
米財務長官が訪日へ、米中首脳会談前に調整
米財務長官は10日、今月14日から中国・北京で予定されている米中首脳会談を前に、日本と韓国を訪問すると明らかにした。12日に日本で首相や財務相と会談した後、韓国を訪問し、中国側と貿易協議を行うとしている。
中国側も、12日から2日間にわたり韓国で米国側と貿易協議を行うと発表している。米中双方が首脳会談を前に、貿易をめぐる調整を進める狙いがあるとみられる。
イランが米提案に回答、ホルムズ海峡も焦点
イランは10日、戦闘終結に向けた米国の提案に対する回答を仲介国パキスタンに送付した。回答はレバノンを含む包括的な戦闘終結と航行の安全に焦点を当てているとされるが、詳細は不明である。
米国の提案は14項目で、イランのウラン濃縮停止やホルムズ海峡の解放に関する内容が含まれているとされる。米大統領はイランの回答について、完全には受け入れられないとの認識を示しており、協議の行方は引き続き市場のリスク要因となる。
サウジアラムコは純利益25%増
サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコは、1月から3月期までの純利益が前年同期比25%増の325億ドル、およそ5兆円だったと発表した。原油高が寄与した。ホルムズ海峡の事実上の封鎖に対しては、パイプライン経由の代替輸送で影響を軽減したとしている。
日本株・国内市場
日経平均先物は6万3,000円台、決算発表が相場の焦点
シカゴ日経平均先物の先週末終値は6万3,665円、大阪取引所の夜間取引は6万3,760円だった。取引開始後には6万3,530円の水準も示された。東京市場については、先週金曜日の米国株高を受けて上昇して始まる展開が想定される一方、決算シーズン中のため個別銘柄では値動きが荒くなる可能性がある。
日経平均株価の今週金曜日の終値予想は、調査中央値で6万3,000円だった。急ピッチな上昇の反動が出やすいとの見方がある一方、米大手ハイテク株の堅調さを追い風に、日経平均の最高値更新が続く可能性を指摘する見方もある。
日本企業は今週決算ピーク、AI関連の見通しに注目
今週は日本企業の決算発表がピークを迎える。12日には三菱重工業、13日にはソフトバンクグループや日産自動車、15日にはキオクシアホールディングスなどの決算発表が予定されている。3月31日までの決算は5月15日までに発表する必要があり、今週は2,000社近い決算が出る見通しである。
AI関連では、半導体パッケージを手がけるイビデンの決算が注目されている。1年前からNVIDIA向けの仕事が増え、NVIDIA向け売上高がインテル向け売上高を上回る見通しが立ってきたとされる。2027年度以降の次世代先端パッケージ基板の展開について、決算説明で中長期的な事業見通しに自信が示されるかが焦点となる。
東証改革でPBR改善、なお道半ば
日本株市場では、この10年の株価変化の半分以上が一株当たり純資産であるBPSの上昇で説明できる一方、直近3年はPBRの切り上がりも注目されている。2023年3月末に東証がPBR1倍割れ企業に対し、株価水準を引き上げる具体策の開示・実行を要請したことが背景にある。
企業はPERではなく、自社で改善しやすいROEの引き上げを通じてPBR改善と資本効率向上を狙ってきた。個別企業でもPBR1倍以下の企業が減少し、PBR1倍以上の企業が増加している。ただ、2026年3月末時点で日本では35.3%の企業がなおPBR1倍以下とされ、米国の2.6%、欧州の14.2%、中国の17.8%と比べて高い水準にある。改革は一定の効果を生んだものの、なお道半ばとの見方がある。
日本経済・不動産
マンション価格は踊り場、買い手心理に変化の兆し
全国のマンション価格は上昇が続いているものの、足元では株価の勢いに追いつかず、伸びが鈍化しているとの見方がある。要因としては、住宅ローン金利の上昇、金融機関の貸し出し姿勢、海外買い手の動向、買い手心理の変化が挙げられている。
住宅ローンについては、金融機関の多くが新規ローンに積極的で、変動金利型や40年以上のローン提供も広がっている。一方、日銀の考査で不動産融資や住宅ローンが集中点検の対象となっており、金融機関が慎重姿勢を強める可能性もある。
買い手側では、首都圏で夫婦合算のペアローンが住宅ローン利用者の3割程度に上るとのデータがある。平均的なマンション価格は、2001年には平均年収の約7倍で購入できたとされるが、現在は平均年収の20倍前後に達している。価格上昇の鈍化が明確になれば、購入を急がず将来プランや返済リスクを見直す動きが広がる可能性がある。
国内政治・AI政策
AI国家戦略は国産化偏重から転換へ
自民党は、100項目以上に及ぶ新たなAI国家戦略の提言を取りまとめた。提言では、AIのすべてを日本が自前で作る国産化至上主義から脱却し、世界のAIサプライチェーンの中で日本が強みを持つ領域を伸ばす方向性が示されている。
具体的には、半導体製造装置、シリコンウエハー、洗浄技術など、日本が世界市場で高いシェアを持つ分野を強化することが重視されている。また、AIを用いた大学の研究力強化も打ち出され、今後5年間で政府が1兆円を投じ、AI駆動型の研究を全国の大学や研究機関で広げる方針が示された。
提言を踏まえ、政府は来月にも策定する成長戦略や骨太の方針に反映する見通しである。政策実行には、省庁の縦割りを越えた司令塔機能の強化が課題となる。
国際秩序・資源市場
UAEのOPEC離脱で原油価格の変動リスク
OPECで第3位の産油国だったUAEは、今月1日にOPECを脱退した。UAEはここ数年、原油の生産能力を高めてきたが、OPECの枠組みでは能力いっぱいに生産できないことへの不満があったとみられる。イラン情勢により原油価格が高騰し、ホルムズ海峡を通さない輸出ルートもある中で、自国の利益を優先する動きが強まった可能性がある。
OPECの生産が世界に占めるシェアは低下し、足元では4割を下回っている。非OPEC諸国の生産拡大もあり、原油価格はより読みにくくなる可能性がある。資源の少ない日本にとっては、調達先の多様化が一段と重要になりそうだ。
IMF・世界銀行の役割変化とドル離れの動き
IMFや世界銀行の役割にも変化がみられる。IMFは従来の赤字国への政策提言に加え、中国を念頭に黒字国の内需拡大を促す方向を強めている。世界銀行も、サプライチェーンの強靭化や希少金属を含む資源開発を支援する動きを広げている。
一方、新興国の間では、BRICSを中心とした新開発銀行やアジアインフラ投資銀行、一帯一路構想など、従来の国際機関とは異なる支援の枠組みが広がっている。ドル以外の通貨を使う決済システムや中央銀行デジタル通貨の実験も進んでおり、国際金融の仕組みは多極化しつつある。日本にとっては、為替や資源価格の変動が大きくなるリスクに備える必要がある。
国内社会
ハンターウイルス疑いのクルーズ船、乗客が下船開始
ハンターウイルスの集団感染の疑いが出たクルーズ船は10日、受け入れ先のスペイン領カナリア諸島テネリフェ島に到着し、健康状態に問題がないとされた乗客の下船を開始した。船には日本人乗客1人を含むおよそ150人が残っていた。
クルーズ船では、これまでに少なくとも6人の感染が確認され、そのうち3人が死亡した。船内に残っている人の中に体調不良を訴える人はいないとされ、WHOは一般市民の感染リスクは低いとの見方を示している。
今日の主な予定
今週は米中首脳会談、米CPI、日本企業決算が焦点
11日月曜日は、中国で4月の消費者物価指数などが公表される。12日火曜日には、米財務長官が日本で首相や財務相と会談し、日米の経済協力や為替市場の動向などについて議論する見通しである。
13日水曜日には、日本で3月の国際収支が発表される。14日木曜日には、米大統領が中国・北京で中国国家主席と首脳会談を行う予定で、訪中は15日までとされる。貿易や台湾などをめぐる議論が注目される。今週は日本企業の決算発表もピークを迎える。

