開戦から3週間が経った。アメリカとイスラエルはイランの軍事拠点への空爆を繰り返し、戦果をアピールし続けている。しかし同じタイミングで、作戦の目標は増え、ホルムズ海峡の航行は深刻に妨げられたままで、核問題の専門家からは「軍事力だけでは解決できない」との声が上がっている。「終わりに近づいている」という感覚は、なかなか生まれない。
戦時下の正月——爆撃の続くテヘランでノウルーズを迎えた
3月21日、イランでは「ノウルーズ」を迎えた。ノウルーズとはペルシャ暦の新年で、春分の日に合わせて祝われるイラン文化圏の最大の祭事だ。花、色とりどりに塗られた卵、金魚——それらが商店街に並び、人々が買い求める光景は例年通りだった。だが今年は違った。首都テヘランの市場では、小学校への攻撃で犠牲になった子どもたちの絵とともに花が供えられていた。
「胸が痛いけれど、それでもお祝いします」「若い同胞が多く亡くなった。早く終わることを願うだけです」——現地の住民はそう語った。
イランが戦時下でノウルーズを迎えるのは、イラン・イラク戦争が続いていた1980年代以来のことだと、中東の衛星テレビ局アルジャジーラは伝えている。平時の祝祭が戦時の影に覆われたという点で、特別な重みを帯びる祭日となった。
トランプが5つ目の目標を追加——作戦の「終わり」がより遠くなった
アメリカのトランプ大統領は3月20日、SNSへの投稿で作戦の目標を列挙した。ミサイル能力の無力化、防衛産業の破壊、海軍と空軍の壊滅、核能力の阻止——そこまでは当初から掲げてきた4つの目標だった。しかしこの日、トランプはそこに「5つ目」を加えた。イスラエル、サウジアラビア、カタール、UAE(アラブ首長国連邦)、バーレーン、クウェートを含む「中東の同盟国の最高レベルの保護」である。
AP通信はこの追加を「注目すべき変化」と指摘した。核施設の破壊であれば、目標を達成したかどうか検証できる。だが「中東同盟国の最高レベルの保護」は、いつ達成されたと言えるのか。終点が見えにくい目標が加わったことで、作戦の終結条件はさらに曖昧になった可能性がある。
イランの報復は「4000キロ先」へ——WSJが伝えた中距離ミサイル発射
一方、イランも黙ってはいなかった。アメリカの有力紙ウォール・ストリート・ジャーナルは20日、イランがインド洋の「ディエゴガルシア島」に向けて中距離弾道ミサイル2発を発射したと報じた。
ディエゴガルシア島は、インド洋のほぼ中央にあるアメリカとイギリスが共同運用する軍事基地だ。イランからはおよそ4000キロ離れており、この距離にミサイルを飛ばすのは今回が初めてとされる。2発とも基地には命中しなかったが、WSJ報道が事実なら「届いた」という示威効果は大きい。ここはアジアと中東をつなぐ軍事的な要衝で、日本を含むインド太平洋地域への展開拠点でもある。少なくとも米側は、イランの報復能力が湾岸地域を超えて広がりつつある可能性を、深刻に受け止め始めている。
ホルムズ海峡——「誰も使っていない」と言うアメリカが、誰かに守らせたい海峡
戦争が世界経済を揺さぶっているのは、ホルムズ海峡をめぐる問題による。
ホルムズ海峡はペルシャ湾から外洋へ出る唯一の海上通路で、世界の原油・LNG(液化天然ガス)輸送の要衝だ。今回の戦争でイランによる航行妨害が続いており、エネルギー価格が高騰している。
トランプ大統領は「アメリカはこの海峡を使っていない。ヨーロッパ、日本、韓国、中国に必要なのだ。だから彼らが関与すべきだ」と述べ、各国に艦船の派遣を求めた。日本はエネルギーの95%がこの海峡を経由していると彼は強調した。
しかし各国は慎重だ。NATOについてトランプは「張り子の虎」とSNSに投稿して不満をぶつけたが、欧州諸国は「作戦の目標が不透明」として参加に消極的だとAPは伝えている。日米首脳会談を受けてFOXニュースがトランプに直撃したところ、「日本は憲法上の制約があるが、必要なら我々のためにNATOより動いてくれるだろう」と述べたという。
この発言が「実際に艦船を出せ」という要求なのか、それとも政治的なリップサービスなのかは、現時点では不明だ。
原油高を抑えるため、敵国イランの石油を一時的に「売っていい」にした
ホルムズ海峡をめぐる航行妨害による原油高騰を受けて、アメリカ財務省は20日、異例の措置を発表した。制裁対象であるはずのイラン産原油や石油製品について、すでに海上輸送中のものに限り、来月19日まで一時的に各国が取引することを認めるというものだ。
「イランを圧迫しながら、その石油は売っていい」という矛盾したように見えるこの決定について、ニューヨーク・タイムズは「中間選挙を控えたトランプ政権が、ガソリン価格の上昇という国内政治問題を意識したもの」と分析している。戦争の論理と経済の論理が交差する場面だ。
「指導者は全員消えた」——しかしIAEAは警告する
トランプ大統領は20日、「イランの海軍はなくなった。空軍もなくなった。対空兵器もすべてなくなった」と戦果を誇示した。さらに「指導者たちも全員消えた。次の指導者たちも消えた。そのまた次もほとんど消えた。話す相手がいない」と述べ、イランの指導部の大部分が殺害されたという見方を示した。
一方、停戦については「停戦したくない。文字どおり相手を壊滅させているときにそんなことはしない」と語り、作戦継続の意向を明確にした。
こうした強気の発信とは対照的に、冷静な警告を発しているのがIAEA(国際原子力機関)だ。グロッシ事務局長はCBSテレビのインタビューで、「最大の問題は、濃縮度60%の濃縮ウランが残っていることだ」と指摘した。60%濃縮ウランとは、核兵器に使われる90%超には及ばないものの、原発用の低濃縮よりはるかに高い水準の核燃料だ。
さらにグロッシ氏は「イランは現存する最も高度で効率的な遠心分離機(ウラン濃縮装置)を持ち、その製造技術も知っている。いちど得た能力を、いかなる戦争でも止めるのは難しい」と述べ、軍事作戦だけでは核問題を根本解決できないという見方を示した。「持続的な解決のためには外交交渉に戻る必要がある」と彼は訴えた。
広がる戦線——イスラエル、レバノン、クウェート、サウジ、ロシアまで
今回の戦争は、イランとアメリカ・イスラエルの二者対立にとどまらない広がりを見せている。
イスラエルはレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラとも今月2日から戦闘を続け、2000以上の標的を攻撃したとしている。レバノンの死者はすでに1021人に上った(3月20日時点、保健省発表)。
クウェート軍とサウジアラビア国防省は、ミサイルや無人機の迎撃を発表した。両国の発表では攻撃の発信源は明らかにされていないが、文脈上はイラン側の攻撃と受け止められている。イスラエル軍がカスピ海に面するアンザリ港を攻撃したことについては、ロシアが「重要な物流拠点への攻撃は容認できない」と声明で批判した。ロシアはイランと弾薬供与をめぐる取引があったとも以前から報じられており、戦争が大国間関係にも影を落としている。
戦後をどう設計するか——20か国が声明、しかし落としどころは見えない
日本、イギリス、フランス、ドイツなど20か国は19〜20日にかけて共同声明を発表し、ホルムズ海峡の事実上の封鎖を「最も強い言葉で非難する」とした。エネルギー安全保障の観点から、海峡の安全な航行確保に貢献する意志も示した。
しかし声明は、具体的な兵力提供や強制措置には踏み込んでいない。IAEAが求める外交交渉への復帰と核査察の再開は、誰が誰にどう働きかけるのかも見えていない。
アメリカは戦果を主張し、イランは抵抗を続け、世界は「止め方」を模索している。3週間が経っても、この戦争がどこへ向かうのかを知る人は、まだいないように見える。
(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

