アメリカ・コンファレンスボード発表指数の読み方と発表スケジュール

はじめに

アメリカ・コンファレンスボードが公表する各種経済指数は、「予測→現状→検証」というマクロ経済サイクルを一貫して追ううえで欠かせない指標群です。本記事では、主要5指数の読みどころを実例も交えて詳解するとともに、発表タイミングを一覧にしたスケジュール表を掲載。これを押さえれば、投資家も企業経営者も米国経済の最先端動向を逃さずキャッチできます。


1.発表スケジュール一覧

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指数名公表頻度発表時期(米東部時間)日本時間の目安
消費者信頼感指数(CCI)月次毎月最終火曜 午前10時翌日早朝(翌水曜 0~1時頃)
景気先行指数(LEI)月次翌月第3火曜 午前10時翌日早朝(第3水曜 0~1時頃)
景気一致指数(CEI)月次LEIと同時同上
雇用動向指数(ETI)月次LEIと同時同上
景気遅行指数(LAG)月次LEIと同時同上
Measure of CEO Confidence四半期各四半期末月中翌日未明~早朝
CHRO Confidence四半期各四半期末月中同上

2.主要5指数の“ここを見る”ポイント

2-1. 景気先行指数(Leading Economic Index, LEI)

  • 概要と意義
    著名な10前後の先行性の高い経済指標を合成し、短期的な景気転換を予測。投資家や政策当局が「好況入り」「後退入り」の初期シグナルを検知する最前線。
  • 構成要素の深掘り
    1. 株価(S&P500):株式市場の期待値を反映。上昇/下降が持続すれば景気の先行きを強く示唆。
    2. 製造業新規受注(耐久財):企業の生産拡大意欲を反映。受注減少は工場稼働の先行低下を示す。
    3. 建設許可件数(住宅):住宅着工の先行指標。ローン金利や消費者マインドと連動し、住宅投資の動向を先取り。
    4. 平均労働週数(非農業部門):労働需要の変化をキャッチ。増加は生産増・人手不足感の強まりを意味。
    5. 初回失業保険申請件数(逆数化):失業増加の逆数で算出。申請増が鈍るほど労働市場の底堅さが示される。
    6. 資金供給量(M2)などマネーサプライ:金融環境の先行的な緩和・引き締めを映す。
    7. 金利差(10年国債-短期金利):イールドカーブのフラット化や逆イールドは景気後退の警鐘。
  • 読みどころと活用法
    • 連続減少の見逃し厳禁:LEIが数ヵ月連続で低下している場合、景気後退局面入りの確度が高まる。
    • 各項目のバランス確認:例えば株価だけが上がっていて他が軟調なら、バブル的過熱か、一過性の買い戻しかを見極める。
    • 反転シグナルの先取り:住宅許可件数や初回申請件数の動きが改善に転じたタイミングが、投資セクター(建設資材、住宅関連株)の切り替えサインに。

2-2. 消費者信頼感指数(Consumer Confidence Index, CCI)

  • 概要と意義
    消費者数千人を対象に「現在の景況感」と「6ヵ月先の見通し」をヒアリング。個人消費がGDPの約7割を占める米国では、CCIの増減が経済全体に大きく影響。
  • 構成要素の深掘り
    1. 現状判断(Present Situation Index):現在の雇用状況や収入水準への評価。
    2. 期待指数(Expectations Index):今後の景気、雇用、収入見通し。大きなギャップは“先行き不安”を示す。
  • 読みどころと活用法
    • 乖離幅を見る:現状判断は高水準でも期待指数が急落すると、先行き消費の急ブレーキを警戒。
    • 小売売上高との併読:CCIが高まっていても実際の小売データに反映されない場合、消費行動の“裏切り”が発生している可能性。
    • セクター別視点:期待指数悪化時には、耐久消費財(自動車、家電)よりも必需品セクター(食品、医薬品)へのシフトを想定。

2-3. 雇用動向指数(Employment Trends Index, ETI)

  • 概要と意義
    労働市場の“温度計”とも呼ばれる合成指数。初回失業保険申請件数や求人広告、JOLTSデータなど8要素を合成し、雇用市場の強弱を高頻度で捉える。
  • 構成要素の深掘り
    1. 初回失業保険申請件数(逆数化):急増は失業増加の初期信号、逆数化で「改善度」を測定。
    2. 求人広告件数(オンライン求人サイト等):企業の採用意欲をリアルタイムで反映。
    3. 平均週労働時間(非農業):残業増減を通じた需給バランスの先行指標。
    4. JOLTS採用率・離職率:企業が実際にどれだけ採用・解雇を行っているかを詳細に把握。
  • 読みどころと活用法
    • 短期変動のトレンド化:週次・月次で変動が大きいため、3ヵ月移動平均を参照してトレンド判断。
    • 賃金圧力の先読み:求人広告が高水準で推移すると、賃金上昇圧力が強まりインフレ牽引要因に。
    • 地域/産業別比較:全国値だけでなく、地域別や製造/サービス業別の動きをクロス分析し、局所的な労働需給ひずみを検知。

2-4. 景気一致指数(Coincident Economic Index, CEI)

  • 概要と意義
    実質生産や雇用者数、個人所得、販売額など、景気の「現在値」を表す4~6要素を合成。LEIの予測に対し、実際の景気動向をリアルに把握する。
  • 構成要素の深掘り
    1. 実質製造業生産:工場稼働率の実態を示し、景気の基礎力を測定。
    2. 雇用者数(非農業):雇用増減は景気拡大・縮小の最終的な帰結。
    3. 実質個人所得(農業・移転支払い除く):可処分所得の増減が消費行動を左右。
    4. 製造・小売販売額:実際の売上高データで消費・投資の両面を捉える。
  • 読みどころと活用法
    • LEIとの乖離分析:LEIが示す先行予測とのズレを算出し、予測モデルの精度劣化や想定外ショックの有無を検証。
    • 景気ピーク判定:CEIが最高値を更新した後で低下に転じると、景気ピーク判定に利用可能。
    • 政策効果の検証:FRBの金融緩和や財政刺激策発動後のCEI動向を追い、実際の景気押し上げ度合いを把握。

2-5. 景気遅行指数(Lagging Economic Index, LAG)

  • 概要と意義
    失業率の逆数や雇用コスト指数、在庫売上高比率など、「景気変動後」に追随する指標を合成。景気サイクルのピーク/ボトム確定や、先行指標シグナルの“検証”に最適。
  • 構成要素の深掘り
    1. 失業率(逆数化):失業率上昇局面では逆数化指数が低下し、後追いで景気悪化を反映。
    2. 雇用コスト指数:労働コストの増減は、企業収益への影響を遅行して示す。
    3. 在庫売上高比率:在庫積み上がり/品薄の状況を数値化。後退期には在庫調整の遅れを映す。
    4. 銀行貸出条件:貸出基準の引き締め・緩和が企業投資を後追いで動かす。
  • 読みどころと活用法
    • ピーク・ボトムの確定:LEIやCCIのシグナルが出た後、本当に景気転換が起きたかをLAGで確定的に判断。
    • リスクマネジメント:過去の景気後退期におけるLAGの動きを参照し、今回のシグナルの強弱を比較。
    • 企業業績分析:雇用コスト指数と在庫売上高比率の組み合わせで、コスト増加期における利益率圧迫のタイミングを把握。

3.まとめ

  • 発表タイミングを押さえよう
    • CCIは月末火曜、LEI/CEI/ETI/LAGは翌月中旬の火・水曜。四半期指数は期末月中。
  • 「予測→現状→検証」の流れを徹底
    • LEI→CCI→ETI→CEI→LAG の順でチェックすれば、マクロサイクルを網羅的に追える。
  • 実務への応用ポイント
    1. 投資セクターの切り替え:先行シグナルが反転すれば、景気循環セクターへのシフトを検討。
    2. 消費トレンドの先読み:CCIと小売売上高の乖離から、消費行動の変化を先取り。
    3. リスク評価と検証:LAGで過去のトレンドと比較し、今回の指数変動の信頼度を高める。

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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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