インド株式市場、海外資金流入で活況:金融緩和と米印貿易交渉が追い風

2025年4月、インド株式市場が海外投資家の注目を再び集めている。代表的な株価指数であるSENSEXは、4月29日に8万ポイントを突破し、2024年12月以来の高値を記録。外国人投資家のインド株買い越しは4カ月ぶりで、株式・債券・通貨のいわゆる「トリプル高」が進行する中、インド経済の強さと政策効果への信頼感が背景にある。


政策金利の引き下げが株高を後押し

インド準備銀行(RBI)は2025年に入ってから2回の利下げを実施し、政策金利であるレポ金利を6.5%から6.0%へと引き下げた(下図参照)。これは金融緩和の流れを示すもので、特に国内の銀行株やインフラ関連銘柄にポジティブに働いている。実際、ICICI銀行やHDFC銀行など主要株がSENSEX上昇の牽引役となっている。


インドルピーの堅調さも投資家を引きつける

インドルピーも対ドルで上昇傾向にある。2月には1ドル=88ルピー前後だった為替レートが、4月末には84ルピー台までルピー高が進行した。通貨の安定は外資にとって魅力的な投資環境を意味する。

以下の2つのチャートは異なる視点でその動きを示している。

  • INR/USD(インドルピーが上昇するとチャートも上昇):
  • USD/INR(インドルピーが上昇するとチャートは下落):

2025年に入ってからのルピー高は、インド準備銀行の利下げとともに進行し、金融政策と為替の好循環が形成されていることがうかがえる。


SENSEX指数の力強い推移

インド株式市場の代表指数SENSEXは、2023年から上昇トレンドを続け、2025年4月末には8万242ポイントを記録。国内の旺盛な内需、若年層中心の人口構成、そして堅調な企業業績がこの成長を支えている。


米印貿易交渉と「関税耐性」も安心材料

注目すべきは、インドが米国との貿易交渉で比較的優位な立場にある点だ。2025年4月21日にはバンス米副大統領が訪印し、貿易協議のロードマップで合意。加えて、インドはGDPに占める対米輸出の割合が低く、米関税の影響を受けにくいとされる。フィッチ系のBMIによると、米関税がインドGDPに与えるマイナス影響は0.4%に留まり、タイ(3.6%)やベトナム(3.0%)を大きく下回る。


地政学的リスクへの慎重姿勢も必要

ただし、インド市場に対して全面的な楽観視は禁物だ。パキスタンとの関係や国境問題など、地政学的リスクは依然として市場の不安要因として残っている。UTIインターナショナルのジャグワニCEOは、「経済指標や企業業績が良好でも、地政学的な揺らぎが市場の変動性を高める」と指摘している。


結論:インドは“攻め”と“守り”のバランスを保った市場

インド株式市場は現在、金融緩和・政策期待・通貨安定・内需の強さという複数のポジティブ材料が揃っており、海外マネーの受け皿としての魅力を増している。一方で、地政学リスクや世界経済の変動性への備えも不可欠だ。

投資家にとっては「成長余地があるが、慎重な目線で」というスタンスが求められる局面と言えるだろう。

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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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