FRBウォラー発言が波紋 ~「インフレは一時的」発言の真意
米FRBのウォラー理事は、トランプ政権の相互関税によるインフレ懸念について、「一時的なものになるだろう」との見解を示しました。ただし同時に、「最悪のシナリオでは今後数カ月でインフレ率が5%近くに達する可能性がある」とも発言。市場はこの“二面性”のある発言に敏感に反応しました。
ウォラー氏はさらに、「景気後退の懸念がある場合には、従来よりも早く、かつ大幅な利下げを支持するだろう」と明言しており、インフレと景気後退という二つのリスクを天秤にかけた柔軟な金融政策への地ならしと捉えられます。

テクニカルが示すドル円の“危険水域” ~117円ターゲットの根拠とは?
現在のドル円は143円台前半で推移していますが、テクニカルチャートでは中長期的な天井形成を示唆する“ヘッドアンドショルダー”パターンが確認されています。
- 高値(頭):161円95銭
- ネックライン:139円57銭
- 下落ターゲット:117円19銭(=161.95円 – 139.57円 = 22.38円)
さらに、フィボナッチ38.2%押しにあたる価格(139円27銭)とも重なっており、この水準を明確に下抜けるかどうかが今後の分水嶺となりそうです。

ドル安の裏側にある“トリプル安”という構造リスク
今回のドル円下落には、単なるテクニカル要因だけではなく、構造的なドル安の流れが背景にあります。
- トランプ大統領の追加関税による物価上昇懸念
- 米国債の格下げリスク(S&P・ムーディーズなど)
- 景気悪化懸念からの株安・債券安・通貨安=“トリプル安”
これらが重なることで、スイスフランやユーロ、そして円への逃避需要が高まり、ドルは複合的に売られる展開になっています。

金利・株価・為替…世界市場は今どう動いているか
ウォラー発言を受けて、米国10年国債利回りは4.377%(-0.115pt)と大きく低下し、金利面からもドル売り圧力が強まりました。
同時に株式市場は軒並み反発し、特に欧州株が大幅高となりました。米利下げ期待が株式のリスクオンを後押しした格好です。
指数 | 終値 | 前日比 | 変動率 |
---|---|---|---|
日経平均 | 33,982.36円 | +396.78円 | +1.18% |
ナスダック | 16,831.48 | +107.02 | +0.64% |
ドイツDAX | 20,954.83 | +580.73 | +2.85% |
英FTSE100 | 8,134.34 | +170.16 | +2.14% |
上海総合 | 3,262.80 | +24.58 | +0.76% |

日本株にも忍び寄る“バリュエーション圧縮”の波
日本株に関しても、足元では業績予想の下方修正が進行しており、TOPIXの予想PERは12倍を割り込む水準まで下落しました。リビジョンインデックスも低迷しており、企業の利益見通しが急速に悪化している状況です。
とくに注目すべきは、BofAが示す「TOPIX EPSの前年比-10%を割るとリセッションの可能性が高まる」という分析。現在のEPSはその水準に接近しており、注意が必要です。

為替相場の現状とテクニカル注目点
現在のドル円相場は以下のように推移しています:
- 現値:143.06–07円
- 高値:144.30円
- 安値:142.23円
アナリストの遠藤寿保氏は「テクニカル的にドル円は天井を打ちつつあり、139円割れが決定打になる」としており、短期のレンジは141〜145円との見通しを示しています。

おわりに:117円という“下値目標”を意識した今後の投資戦略
これまで「日米金利差」を材料に円安が続いてきたドル円相場ですが、利下げ観測、テクニカル的天井形成、米国リスク(関税・格下げ)といった新たな変数が急速に浮上しています。
139円という“重し”を下回るかどうかは、今後の中長期トレンドの大きな転機になるかもしれません。
投資家にとっては、「押し目買い」から「戻り売り」への視点転換も含めて、慎重な戦略設計が求められそうです。
本記事はテレビ東京「モーサテ(2025年4月15日放送)」の内容を参考に作成しています。(出典:テレ東BIZ)