PER(Price Earnings Ratio)/株価収益率とは、「企業の利益に対して、株価がどれだけ割高・割安か」を示す代表的な株式バリュエーション指標です。
投資家が企業の「1年分の利益の何倍を払って株を買っているか」を表すもので、株式の割安・割高の判断材料として広く活用されています。
目次
PERの計算方法
PER = 株価 ÷ EPS(1株当たり利益)
例:
株価が2,000円、EPSが100円 → PERは20倍
つまり、現在の株価は「年間利益の20年分」という評価になります。
PERの目安と水準(日本株)
PERの水準は、国・業種・市場環境によって異なります。以下は日本株における一般的な目安です。
PERの範囲 | 解釈 |
---|---|
~10倍 | 割安感が強い。業績不振や市場からの低評価も |
10〜20倍 | 妥当~やや割高。日本株の平均的な範囲 |
20倍以上 | 成長期待が高い企業に多く見られる。割高との見方も |
2025年時点の目安: 日経平均のPERはおよそ13〜15倍(出典:日本取引所グループ)
業種別PERの傾向(実例)
業種 | 一般的なPER | コメント |
---|---|---|
自動車(例:トヨタ) | 約9〜12倍 | 安定収益型、低PER傾向 |
通信(例:NTT) | 約10〜15倍 | 規制業種のため中間的 |
テクノロジー(例:キーエンス) | 30倍以上 | 成長期待が高く高PER |
銀行・保険 | 5〜10倍 | 景気敏感・低評価が続く傾向 |
医薬・ヘルスケア | 15〜25倍 | 安定成長分野としてやや高め |
グローバル比較:PERの国際水準
地域/指数 | 平均PER(目安) | 特徴 |
---|---|---|
日本(TOPIX) | 約13〜16倍 | 安定収益型企業が多く、低PER傾向 |
米国(S&P500) | 約20〜25倍 | 高成長株が多く、高PERが常態化 |
新興国(MSCI EM) | 約10〜15倍 | 政治・通貨リスクを織り込む低PER |
🔍 参考: 米国ではGAFAM(グーグル、アップル等)など高成長企業が全体のPERを押し上げています。
予想PERと実績PERの違い
種類 | 内容 | 投資判断での使い方 |
---|---|---|
実績PER | 過去1年間のEPSで計算 | 安定企業、成熟産業向け |
予想PER | 今後1年のEPS予測で計算 | 成長株・ハイテク株向け、将来性を反映 |
成長株では予想PERが重視され、割高に見えても期待で買われることがあります。
PERの注意点・限界
- 赤字企業には使えない:EPSがマイナスだとPERは計算不能
- 業種間比較は困難:業界ごとに収益モデルが異なる
- 一時的な利益変動に弱い:特別利益や損失により、実態を反映しないケースも
PERと他の指標との関係
PERだけで判断するのではなく、PBR(株価純資産倍率)やROE(自己資本利益率)などとの組み合わせが有効です。
例:PERが低くPBRも低ければ割安株の可能性。
ただしROEが低ければ成長力に欠ける可能性も。
マクロ経済との関係性
PERは市場全体の雰囲気(センチメント)や金利環境に強く影響されます。
経済状況 | PERの傾向 |
---|---|
金利上昇局面 | PERは圧縮されやすい(株価が下がりやすい) |
景気回復局面 | PERは上昇傾向(先行して株価が上がる) |
景気後退局面 | 一部の低PER株に資金が流入する傾向 |
PERを活用した投資戦略
- バリュー投資:PERが10倍以下の割安株を中心に投資
- 成長株投資:PERが高くても、将来の成長を重視
- 逆張り戦略:一時的に低PERとなった企業を拾う
重要なのは「なぜ低いのか/高いのか」を見極める視点です。
歴史的なPERの事例
- 1989年 バブル崩壊直前の日経平均PER:70倍超
- 2008年 リーマン・ショック時のS&P500 PER:10倍台前半
- 2020年 コロナ後の米国株:40倍超も散見(一部グロース株)